3 / 66
第3話 魔法使い
しおりを挟む
「いや、王宮に戻れるわけないし、王子なんて肩書き、今や無用の長物でしかないよ」
俺は何を言ってるんだよと呆れてしまう。
しかし、二人はお前こそ何を言っているんだという顔をしていた。
あれ、微妙に認識のズレがある。
「なんだよ」
「まあ、それもそうだよね。今はそれでいいよね」
「そうそう。逞しく生きていてくれればそれでいいわ」
睨む俺に、二人は訳の解らないことを言って納得し合っている。
俺は何を考えているんだよと詰め寄ろうとしたが
「まだ穴は塞がっていないだろ! 駄弁ってないで、さっさとやれ!!」
シモンの大声が飛んできて、俺は慌ててお茶を飲むとはしごを登る羽目になるのだった。
「おおっ、本当に雨が降ってきたな」
「穴を塞いだ甲斐があったね」
ざああっと降り出した雨に、俺はほっとし、アンドレはバケツを持って走らずに済んだと嬉しそうだ。
やっぱりよく解らない騎士だ。
「ここに避難できるのはいいわよねえ」
「うちの家って何度修理しても雨漏りするもの」
しかし、それに続く二人の声がして、俺はがっくりとしてしまう。
声はこの村の住人、つまり曲者なわけだが、どちらも女子だ。
名前はシュリとキキ。二人は出身もここにやって来た時期もバラバラだそうだが、今では仲良く同じ屋根の下に暮らし、姉妹のように生きている。年齢は不明だが、どちらも俺と同い年くらいだ。
ちなみに二人とも美女である。シュリはセクシー系、キキは可愛い系という感じで、いても困らないのだが、男二人しかいない家に堂々と上がり込むのはどうなんだと思う。
「今までどうしてたんだよ?」
俺は辺境の村に似つかわしくない美人姉妹に向けて、今まではどう乗り切っていたんだと確認する。
アンドレが変な気を起こす前に出て行った方がいいんじゃないの。そう思ってのことだ。
ちなみに俺は様々なダメージからまだ立ち直っていないので、美人がいようと変な気は起こさない。というより、早く寝たい。
「今まではマリナのいる教会にお世話になっていたわ。でも、あそこって素っ気ないし」
「そうそう。それにピーターがいて煩いのよねえ。その点、レオは完璧よ」
俺の気遣いは、そんな言葉で返されてあえなく撃沈となる。
ピーターというのは教会に住む少年で、魔法使いであるらしい。マリナも魔法が使えるようで、二人は一緒に生活をしているのだ。
「ピーターか。あれは悪戯盛りでエロいこと大好きな年頃だからなあ。仕方ないね」
すでに村に馴染みまくりの騎士は、そんなことを言って頷いている。
おい、俺はお前のエロを気にしているんだよ。
なんてことは言えない。
「確か魔法使いなんだよな。王宮にいた時にもそういう奴っていたけど、実際に見たことはねえなあ」
ということで、俺も話題をピーターにシフトした。すると、二人の美女はくすくすと笑う。
「どうした?」
「レオが一週間も掛からずに回復出来たのは魔法のおかげよ」
「そうそう。マリナさんのおかげなんだから」
きょとんとする俺に、二人はそう説明してくれる。
ぬああっ、そうか。
そうだよな。俺もあのふらっふらな状態から三日で治るって、不思議だなとは思っていたよ。
「ま、魔法ってそういうことか」
「基本、王宮にいるのも回復魔法の人だもんねえ。それに、戦時中じゃなきゃ、異能力者も普通の人と一緒、活躍の場がないもの」
頭を抱えてそういうことかと納得しかけた俺に、シュリが意味深なことを言ってくれる。
俺は何を言ってるんだよと呆れてしまう。
しかし、二人はお前こそ何を言っているんだという顔をしていた。
あれ、微妙に認識のズレがある。
「なんだよ」
「まあ、それもそうだよね。今はそれでいいよね」
「そうそう。逞しく生きていてくれればそれでいいわ」
睨む俺に、二人は訳の解らないことを言って納得し合っている。
俺は何を考えているんだよと詰め寄ろうとしたが
「まだ穴は塞がっていないだろ! 駄弁ってないで、さっさとやれ!!」
シモンの大声が飛んできて、俺は慌ててお茶を飲むとはしごを登る羽目になるのだった。
「おおっ、本当に雨が降ってきたな」
「穴を塞いだ甲斐があったね」
ざああっと降り出した雨に、俺はほっとし、アンドレはバケツを持って走らずに済んだと嬉しそうだ。
やっぱりよく解らない騎士だ。
「ここに避難できるのはいいわよねえ」
「うちの家って何度修理しても雨漏りするもの」
しかし、それに続く二人の声がして、俺はがっくりとしてしまう。
声はこの村の住人、つまり曲者なわけだが、どちらも女子だ。
名前はシュリとキキ。二人は出身もここにやって来た時期もバラバラだそうだが、今では仲良く同じ屋根の下に暮らし、姉妹のように生きている。年齢は不明だが、どちらも俺と同い年くらいだ。
ちなみに二人とも美女である。シュリはセクシー系、キキは可愛い系という感じで、いても困らないのだが、男二人しかいない家に堂々と上がり込むのはどうなんだと思う。
「今までどうしてたんだよ?」
俺は辺境の村に似つかわしくない美人姉妹に向けて、今まではどう乗り切っていたんだと確認する。
アンドレが変な気を起こす前に出て行った方がいいんじゃないの。そう思ってのことだ。
ちなみに俺は様々なダメージからまだ立ち直っていないので、美人がいようと変な気は起こさない。というより、早く寝たい。
「今まではマリナのいる教会にお世話になっていたわ。でも、あそこって素っ気ないし」
「そうそう。それにピーターがいて煩いのよねえ。その点、レオは完璧よ」
俺の気遣いは、そんな言葉で返されてあえなく撃沈となる。
ピーターというのは教会に住む少年で、魔法使いであるらしい。マリナも魔法が使えるようで、二人は一緒に生活をしているのだ。
「ピーターか。あれは悪戯盛りでエロいこと大好きな年頃だからなあ。仕方ないね」
すでに村に馴染みまくりの騎士は、そんなことを言って頷いている。
おい、俺はお前のエロを気にしているんだよ。
なんてことは言えない。
「確か魔法使いなんだよな。王宮にいた時にもそういう奴っていたけど、実際に見たことはねえなあ」
ということで、俺も話題をピーターにシフトした。すると、二人の美女はくすくすと笑う。
「どうした?」
「レオが一週間も掛からずに回復出来たのは魔法のおかげよ」
「そうそう。マリナさんのおかげなんだから」
きょとんとする俺に、二人はそう説明してくれる。
ぬああっ、そうか。
そうだよな。俺もあのふらっふらな状態から三日で治るって、不思議だなとは思っていたよ。
「ま、魔法ってそういうことか」
「基本、王宮にいるのも回復魔法の人だもんねえ。それに、戦時中じゃなきゃ、異能力者も普通の人と一緒、活躍の場がないもの」
頭を抱えてそういうことかと納得しかけた俺に、シュリが意味深なことを言ってくれる。
10
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る
はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。
そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。
幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。
だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。
はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。
彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。
いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる