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第3話 魔法使い

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「いや、王宮に戻れるわけないし、王子なんて肩書き、今や無用の長物でしかないよ」
 俺は何を言ってるんだよと呆れてしまう。
 しかし、二人はお前こそ何を言っているんだという顔をしていた。
 あれ、微妙に認識のズレがある。
「なんだよ」
「まあ、それもそうだよね。今はそれでいいよね」
「そうそう。逞しく生きていてくれればそれでいいわ」
 睨む俺に、二人は訳の解らないことを言って納得し合っている。
 俺は何を考えているんだよと詰め寄ろうとしたが
「まだ穴は塞がっていないだろ! 駄弁ってないで、さっさとやれ!!」
 シモンの大声が飛んできて、俺は慌ててお茶を飲むとはしごを登る羽目になるのだった。



「おおっ、本当に雨が降ってきたな」
「穴を塞いだ甲斐があったね」
 ざああっと降り出した雨に、俺はほっとし、アンドレはバケツを持って走らずに済んだと嬉しそうだ。
 やっぱりよく解らない騎士だ。
「ここに避難できるのはいいわよねえ」
「うちの家って何度修理しても雨漏りするもの」
 しかし、それに続く二人の声がして、俺はがっくりとしてしまう。
 声はこの村の住人、つまり曲者なわけだが、どちらも女子だ。
 名前はシュリとキキ。二人は出身もここにやって来た時期もバラバラだそうだが、今では仲良く同じ屋根の下に暮らし、姉妹のように生きている。年齢は不明だが、どちらも俺と同い年くらいだ。
 ちなみに二人とも美女である。シュリはセクシー系、キキは可愛い系という感じで、いても困らないのだが、男二人しかいない家に堂々と上がり込むのはどうなんだと思う。
「今までどうしてたんだよ?」
 俺は辺境の村に似つかわしくない美人姉妹に向けて、今まではどう乗り切っていたんだと確認する。
 アンドレが変な気を起こす前に出て行った方がいいんじゃないの。そう思ってのことだ。
 ちなみに俺は様々なダメージからまだ立ち直っていないので、美人がいようと変な気は起こさない。というより、早く寝たい。
「今まではマリナのいる教会にお世話になっていたわ。でも、あそこって素っ気ないし」
「そうそう。それにピーターがいて煩いのよねえ。その点、レオは完璧よ」
 俺の気遣いは、そんな言葉で返されてあえなく撃沈となる。
 ピーターというのは教会に住む少年で、魔法使いであるらしい。マリナも魔法が使えるようで、二人は一緒に生活をしているのだ。
「ピーターか。あれは悪戯盛りでエロいこと大好きな年頃だからなあ。仕方ないね」
 すでに村に馴染みまくりの騎士は、そんなことを言って頷いている。
 おい、俺はお前のエロを気にしているんだよ。
 なんてことは言えない。
「確か魔法使いなんだよな。王宮にいた時にもそういう奴っていたけど、実際に見たことはねえなあ」
 ということで、俺も話題をピーターにシフトした。すると、二人の美女はくすくすと笑う。
「どうした?」
「レオが一週間も掛からずに回復出来たのは魔法のおかげよ」
「そうそう。マリナさんのおかげなんだから」
 きょとんとする俺に、二人はそう説明してくれる。
 ぬああっ、そうか。
 そうだよな。俺もあのふらっふらな状態から三日で治るって、不思議だなとは思っていたよ。
「ま、魔法ってそういうことか」
「基本、王宮にいるのも回復魔法の人だもんねえ。それに、戦時中じゃなきゃ、異能力者も普通の人と一緒、活躍の場がないもの」
 頭を抱えてそういうことかと納得しかけた俺に、シュリが意味深なことを言ってくれる。
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