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第101話 涙の国の王

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「ってか、今まで聞かなかったけど、一番上がサタンで、次がベルゼビュート、その次がお前で合っているんだよな」
 公爵という身分が明らかになったところで、どういう身分構成で、どういう人々が上にいるのかを確認しちゃう奏汰だ。
「うん、そう。でも、俺様と同じ公爵は他にもいるし、貴族もかなりの数がいる。例えば、あそこでアップルパイを食っている青い髪の男はモロクといって公爵だ」
「ほう」
 奏汰は指差された方を見て、いかにも貴族ですというオーラを放っている男がモロクかと確認。
 ってか、なんで貴族様までこのパーティーに参加しているんだ。しかも、ちゃっかりアップルパイを食うなよ。
「貴族なのに」
「まあ、俺様の伴侶がどういう奴で、どのくらい出来るのかの偵察だろう」
 思わず声に出して呟くと、ルシファーはふんっと鼻を鳴らす。あまり仲は良くなさそうだ。
 と、そんな視線に気づいたのか、モロクがこちらを見た。彼もまた当然のように美形。青い髪に青い瞳と、青色がメインの彼はどこか冷たい印象を受けた。しかし、その冷たさはルシファーに向けられたものだったらしく、奏汰を見た瞬間ににこっと微笑んだ。
「この度はルシファーの伴侶になられたとのことで、心よりお祝い申し上げます。私はモロク、東側の領土を治める者です」
 そして流暢な日本語でそう挨拶してきた。
 奏汰はその挨拶で、ああ、そうか。貴族だから土地を支配しているというのは人間界と同じかと気づく。
「ど、どうも」
 挨拶を返しつつ、奏汰は思わずルシファーを見てしまう。当然、ルシファーは面白くなさそうな顔をしていた。ささっと奏汰を自分の方に引き寄せ、モロクから距離を取らせることまでする。
「貢ぎ物をこうやって民に還元されるとは素晴らしい。強欲なルシファーと釣り合いが取れるというわけですね」
 そんな行動を受けて、モロクはしっかり嫌味をルシファーに向けて言う。
「ふん。人間の負の感情が何よりの好物の変態に言われたくないんだよ」
 ルシファーはさらに奏汰を抱き寄せ、しっしと追い払うように手を振った。
 いやはや、犬猿の仲かよ。ってか、人間の負の感情が好物?
「負の感情ではありません。喜怒哀楽のうちの哀を私が司っているだけのこと。ああ、奏汰は知らないのですか。私の治める地域は涙の国と呼ばれているんですよ」
「へ、へえ」
 そうさらっと教えられてもよく解らんが、ともかく、悲しみが生きる原動力っていう悪魔なわけか。
「ですので、奏汰がもしルシファーに泣かされることがあれば、飛んで参りましょう」
 が、感心していた気持ちはその台詞でぶっ飛んだ。変態だ!
「しっし。まったく、奏汰はやはりどの悪魔にとっても心地よい波動なんだな。こいつまでしっかり口説いてくるとは」
「いや、今のは口説き文句なのか!?」
「そうですよ。いやはや、わざわざガブリエルが来たというからどれほどかと気になってましたが、素晴らしい」
 近づくなと牙を剥くルシファーと、興味津々の青い悪魔に挟まれ、奏汰は俺ってどうなってるのと頭を抱えたくなるのだった。
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