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第84話 平和な魔界

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 結局、ガブリエルはこんがり焼き上がった七面鳥を手土産に帰っていった。
「あれ、ヤバいんじゃないの?」
 手土産に渡してよかったのかと気になった奏汰だが
「神の魔法だから大丈夫だよ。天使に影響が出たとしても、すぐに対処してくれるし」
 と、テキトーなルシファーである。
「それにしても、あのバカのおかげで奏汰のことがよく解って良かったじゃないか。今まで俺たちも何となくこうだろうと思っていたのが、悪魔に影響を受けにくい人間だということが解ったわけだし」
 そこにサタンがガブリエルのおかげで解ったこともあっただろと取りなす。
「まあ、そうですね。って俺、悪魔に影響されないだけなんですね」
「いや、それだけだったら強靱な精神の持ち主で終わりだろう」
 がっくりする奏汰に、それだけじゃないよとサタンは笑う。
「そうですよ。我々が傍に置きたいと思う。それこそ、あのバカの発言を認めるようで嫌ですが、私たちが無くした何かを奏汰は持っているんでしょう」
 ベルゼビュートもそう付け足し、まあ肯定的に捉えましょうよと促してくる。
「ああ、まあ、そうですね。もう、なんだかんだで魔界に馴染んじゃって、しかもルシファーと・・・・・・」
 今や肉体関係まである恋人同士だもんなあ。
 奏汰は思わず遠い目。
「なんでそこで嫌そうに言葉を句切るんだ」
 一方、ルシファーは全身で喜びを表現してくれてもいいじゃんと膨れる。
「まあまあ。ともかく、昼食でも食べましょう」
 ベルゼビュートがぱちりと懐中時計を開き、もうなんだかんだで十一時半ですと教えてくれる。
「マジかあ。朝食食いっぱぐれたじゃん」
 奏汰は先ほどの七面鳥の匂いもあり、今、無性にチキンが食いたかった。
「ふむ。チキンくらい冷蔵庫に入っているだろ。ベヘモス」
「はい」
 呼ばれるとすぐに現われる執事は、すぐに庭にやって来ると
「皆さま。食事が出来るまでの間、ティータイムはいかがでしょうか」
 と訊ねてくる。
「おっ、いいね」
「そうしましょう」
 サタンが喜び、ベルゼビュートも気分を変えたいと同意。
「じゃあ、クッキーでも用意して」
 でもってルシファー、奏汰の空腹がヤバそうだと注文。
「承知しました。そちらのテラスへどうぞ」
「は~い」
 こうして四人仲良くテラスに移動。
 天界から天使がやって来て一騒動起ころうが、何事もなかったかのように平和な魔界はある意味凄い。
「そりゃあ、神様も張り合いがなくて困っちゃうよなあ」
 ガブリエルが乗り込んできたというのに、散々バカにして、さらに七面鳥を持たせて返しちゃう悪魔たち。
 一体どちらが平和主義なのやら。奏汰は紅茶を飲みつつ、不思議な奴らだよなあと、改めて呑気に同じようにお茶する悪魔たちを見つめてしまった。
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