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第77話 あれ? あれれ?
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なんだかんだあったものの、概ね楽しい旅行はあっという間に終わった。
「はぁ、二泊三日だったのに、屋敷に戻ると安心するなぁ」
奏汰は我が家に帰ってきたと思うとしみじみ。
「奏汰、そんなふうに言ってくれるなんて、俺様は大感激だぞ!」
「はいはい」
いちいち喜ぶルシファーを適当にあしらい、疲れたなあとソファにどっかり座った。
それにしても、旅行での一番の収穫が人間界に未練がないと判明したことだったなんて。
まあ、ルシファーとしっかり繋がっちゃったってのもあるんだろうけど。
奏汰、その時のことを思い出して顔が赤くなる。
「奏汰様、お疲れですか?」
一人赤くなっている奏汰に、すぐさまコーヒーを淹れてくれたベヘモスが気遣う。
「だ、大丈夫」
ふんわりと香るコーヒーの匂いに落ち着きを取り戻し、奏汰はいそいそと横に座るルシファーを見た。そのルシファーはもうお仕事モードのようで、何やら書類を手にしていた。
「忙しいのか?」
「あっ、ううん。二泊三日の間の報告書が来てるから、一応目を通しておかないとね。何かトラブルがあっても困るし」
「へえ。そういうところ、真面目だよな」
「ふふん。いい暮らしをするためには努力は惜しまないぞ」
「ほう」
その割にはお前、魔界を作る時にベルゼビュートに迷惑を掛けたみたいだけどな。
そう思ったが、仕事を邪魔するほど野暮じゃない。奏汰は大人しくコーヒーを啜る。
珍しく穏やかな昼下がりだ。
横で大人しくルシファーが仕事をしていて、庭から鳥の鳴き声とたまにドラゴンの鳴き声がするものの、とても静かだ。リビングにある柱時計のコチコチと動く音も、何だか心地よい。
「ここ、凄い落ち着く」
「そうか。奏汰がここに馴染んだ証拠だな」
「そうだねえ」
今度はオーバーに言われなかったから、奏汰は素直に頷く。でも、同時に不安が過ぎった。
「なあ。馴染んだってことは、俺、悪魔になるの?」
「えっ?」
「魔界に住んでるのって、悪魔だけだろ。お前の伴侶になったら俺って悪魔になるんじゃなかったっけ?」
きょとんとするルシファーに、お前、最初の頃そう言ってなかったけと奏汰は訊き返す。
「ああ、たぶんなるんじゃないかと思ってたんだけど」
ルシファーはそこで書類から奏汰に目を移し
「なりそうにないよね。あれだけセックスしたのに」
と首を傾げる。
「いやいや」
適当だなと、奏汰もコーヒーカップをテーブルの上に置いて向き合った。
今、二人は気持ちも通じ合っているし、身体も通じ合っている。
でも、悪魔と人間のままなのか。
種族は違うままなのか。
人間から悪魔になったという、ルキアという存在がいるにも関わらず。
「あれ?」
「あれ、じゃねえよ!」
首を傾げるルシファーに、おいおいと奏汰はツッコミ。
かあかあと、外で間抜けにカラスが鳴いているのが、余計にこの空間をどうしようもなくしている。
「その疑問に答えて進ぜよう」
が、その静寂を破り、どご~んという爆発音とともに闖入者が現れたのだった。
「はぁ、二泊三日だったのに、屋敷に戻ると安心するなぁ」
奏汰は我が家に帰ってきたと思うとしみじみ。
「奏汰、そんなふうに言ってくれるなんて、俺様は大感激だぞ!」
「はいはい」
いちいち喜ぶルシファーを適当にあしらい、疲れたなあとソファにどっかり座った。
それにしても、旅行での一番の収穫が人間界に未練がないと判明したことだったなんて。
まあ、ルシファーとしっかり繋がっちゃったってのもあるんだろうけど。
奏汰、その時のことを思い出して顔が赤くなる。
「奏汰様、お疲れですか?」
一人赤くなっている奏汰に、すぐさまコーヒーを淹れてくれたベヘモスが気遣う。
「だ、大丈夫」
ふんわりと香るコーヒーの匂いに落ち着きを取り戻し、奏汰はいそいそと横に座るルシファーを見た。そのルシファーはもうお仕事モードのようで、何やら書類を手にしていた。
「忙しいのか?」
「あっ、ううん。二泊三日の間の報告書が来てるから、一応目を通しておかないとね。何かトラブルがあっても困るし」
「へえ。そういうところ、真面目だよな」
「ふふん。いい暮らしをするためには努力は惜しまないぞ」
「ほう」
その割にはお前、魔界を作る時にベルゼビュートに迷惑を掛けたみたいだけどな。
そう思ったが、仕事を邪魔するほど野暮じゃない。奏汰は大人しくコーヒーを啜る。
珍しく穏やかな昼下がりだ。
横で大人しくルシファーが仕事をしていて、庭から鳥の鳴き声とたまにドラゴンの鳴き声がするものの、とても静かだ。リビングにある柱時計のコチコチと動く音も、何だか心地よい。
「ここ、凄い落ち着く」
「そうか。奏汰がここに馴染んだ証拠だな」
「そうだねえ」
今度はオーバーに言われなかったから、奏汰は素直に頷く。でも、同時に不安が過ぎった。
「なあ。馴染んだってことは、俺、悪魔になるの?」
「えっ?」
「魔界に住んでるのって、悪魔だけだろ。お前の伴侶になったら俺って悪魔になるんじゃなかったっけ?」
きょとんとするルシファーに、お前、最初の頃そう言ってなかったけと奏汰は訊き返す。
「ああ、たぶんなるんじゃないかと思ってたんだけど」
ルシファーはそこで書類から奏汰に目を移し
「なりそうにないよね。あれだけセックスしたのに」
と首を傾げる。
「いやいや」
適当だなと、奏汰もコーヒーカップをテーブルの上に置いて向き合った。
今、二人は気持ちも通じ合っているし、身体も通じ合っている。
でも、悪魔と人間のままなのか。
種族は違うままなのか。
人間から悪魔になったという、ルキアという存在がいるにも関わらず。
「あれ?」
「あれ、じゃねえよ!」
首を傾げるルシファーに、おいおいと奏汰はツッコミ。
かあかあと、外で間抜けにカラスが鳴いているのが、余計にこの空間をどうしようもなくしている。
「その疑問に答えて進ぜよう」
が、その静寂を破り、どご~んという爆発音とともに闖入者が現れたのだった。
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