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第26話 カレーせんべいってメジャー?
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「嫌々ながらも中身は確認して捨ててますから、大丈夫ですよ。中身に関しては付箋を付けてメモしてあります」
「ご苦労なことだな。というか、カエルの死体だって」
「ええ。一度だけあったんですよ。最初から死んでいたのか、配達されている途中で死んだのはか解りませんが、ぐちゃっと潰れたやつが。何が目的なんでしょうね。たまたま近くにいたのかな」
「さあ」
近くにカエルがいたとして、それを封筒に詰め込もうとするだろうか。その発想がまず信じられない。生き物を入れようという発想は、一体どうやったら出てくるのだろうか。
「ひょっとして、事件の暗示ですかね」
「たまたまだろ」
潰れていたという点で、翔馬は安西の死体が捻じ曲がっていたことを思い出した。しかし、あっさりと英士に却下される。
「手紙の内容は、ほぼなし、か」
「ええ。最初の頃は抗議文とか反論とか嫌味やら悪口など、気合の入った文章が入っていたものもありますけどね。最近では嫌がらせのためだからか、同封物に力を入れるだけみたいです。手紙すら入っていないこともありますよ」
ほらっと、カレーせんべいのせいでドロドロになった封筒を摘まみ上げる。翔馬はまだカレーの匂いがするなと、思わず鼻を近づけて確認してしまった。
「カレーせんべいっていうのが、一部地域でしか売られていない気がするが」
「そうでしょうか。まあ、手紙に封入するには最悪の代物であることは間違いないですね。他の手紙も油が付いたりカレー臭くなったりしますから」
翔馬はどうでもいいと、封筒をゴミ袋の中に投げ落とす。その間に英士はカレーせんべいについて調べていたが、山のようなバリエーションと出会うことになるだけだった。意外なことに、カレーせんべいは有名な商品だったのだ。
「くそっ。意外とメジャーな食い物だった」
「でしょうね。カレー味ですもん。確実に売れるでしょうよ。それに今やネットで何でも手に入る時代ですよ。地域限定だったとしても、犯人の特定には繋がらないですよ」
「だな。まったく」
手掛かりになるかと思ったんだがと、英士は難しい顔をする。どうにか事件のヒントがないかと考えてしまうが、現場から遠い場所にいては、何も解らない。
「まあ、言えることは、こういう嫌がらせを覚えている大人がやっているってことだけですよ」
「そうだな。大体、小学生の時に流行るタイプの嫌がらせだからな」
何のヒントもないんだなと、英士も摘まんでいた封筒をゴミ袋に戻していた。
ダイニングは重苦しい空気に包まれていたが、誰もが疲れているせいか落ち着いていた。いや、思考することを放棄していたのかもしれない。
そんな中、千春はコーヒーを飲みながらドアのことを考えていた。すっかり忘れ去られているが、あれを解かないことには他の謎も解けないのではないか。そう直感していた。
「雨は止みそうにないですね」
沈黙に耐えられなかったように、ぽつりと大地が呟いた。それに忠文が頷く。
「そうだな。警察はヘリを手配してくるというが、この中では危なくて飛行できない。いや、どのみちもう夜明けを待たないことには、ヘリは無理だろう。自衛隊でもない限り夜間に整備されていない場所に飛ばすのは危険だ」
忠文の意見に、そうですよねと大地は頷く。しかしそれが会話のきっかけになった。
「ただ、ここでぼんやりしていても仕方がない。それに寝るのは危険だからな。事件に関して考えよう」
「そうですね。とはいえ、小説家ですけど実際に起こった事件を考えるのは難しいですが」
大地がそう言って笑いを誘う。それはそうだろう。事実は小説より奇なりという言葉があるほどだ。思考することと実行することの差は大きい。
「ただ、この事件はトリックがなければどちらも実行不可能だって点は、小説と一緒ですね。よく解らないドアの仕掛けもあるし」
「そう。あれはどういう原理で動いているんだろうか。あの後、閉まるタイミングでドアを調べたが、びくともしなくなるんだもんな」
昼間、丁度開かない時間だというので、仕組みがわかるのではないかとドアを調べた。だが、開かないことは確認できたものの、どういう仕組みで開かなくなるのかは解らなかった。そのまま一時間ほど放置すると、ドアはすんなり開くようになっていた。
「圧力が掛かっているって感じでしたね」
千春の疑問に、友也がそう感想を漏らした。実際にドアを開けようと押した際、閉じて動かないというのは、外部から圧力が掛かって動かない。そういう印象を受けたという。
「そうなんです。それは俺も感じました」
「先生って、普段の一人称は俺なんですね。どうでもいいことですけど」
急に大地がそう指摘するので、千春はちょっと悩み、そして恥ずかしくなった。外に出た時には僕と言い換えるようにしていたのを殺人事件のせいで忘れていたと気づいたのだ。
「まあ、いいんじゃないですか。先生の顔からして、僕とか私って感じじゃないです」
「そうかな。まあいいか。ドアの謎。これを解きましょう」
千春の提案に、反対意見は出なかった。殺人事件そのものを考えるより気が楽だからだ。しかし、ドアの仕掛けはそう簡単に解けそうにない。
「圧力って言っても、ドアは普通に木製。先は渡り廊下ですよ」
大地が問題点をすぐに上げた。圧力が掛かるというのは、そもそも無理があると指摘する。
「確かにそのとおり。ドアそのものに圧力は掛けられない。しかし、ドアの蝶番や上の部分には掛けられるはずだ」
「なるほど。それは考えていなかった」
千春の反論に、そういう考え方も出来るのかと大地は唸る。
「確かにそうだな。ドアそのものに圧が掛けられないとなると、そういうドアの周囲に問題があると考えるべきだ」
友也もその意見には賛成だと頷く。ドアの隙間を埋める方法があれば、圧力が掛かって動かなくなるだろう。もしくは蝶番に仕掛けを施してしまう。
「ご苦労なことだな。というか、カエルの死体だって」
「ええ。一度だけあったんですよ。最初から死んでいたのか、配達されている途中で死んだのはか解りませんが、ぐちゃっと潰れたやつが。何が目的なんでしょうね。たまたま近くにいたのかな」
「さあ」
近くにカエルがいたとして、それを封筒に詰め込もうとするだろうか。その発想がまず信じられない。生き物を入れようという発想は、一体どうやったら出てくるのだろうか。
「ひょっとして、事件の暗示ですかね」
「たまたまだろ」
潰れていたという点で、翔馬は安西の死体が捻じ曲がっていたことを思い出した。しかし、あっさりと英士に却下される。
「手紙の内容は、ほぼなし、か」
「ええ。最初の頃は抗議文とか反論とか嫌味やら悪口など、気合の入った文章が入っていたものもありますけどね。最近では嫌がらせのためだからか、同封物に力を入れるだけみたいです。手紙すら入っていないこともありますよ」
ほらっと、カレーせんべいのせいでドロドロになった封筒を摘まみ上げる。翔馬はまだカレーの匂いがするなと、思わず鼻を近づけて確認してしまった。
「カレーせんべいっていうのが、一部地域でしか売られていない気がするが」
「そうでしょうか。まあ、手紙に封入するには最悪の代物であることは間違いないですね。他の手紙も油が付いたりカレー臭くなったりしますから」
翔馬はどうでもいいと、封筒をゴミ袋の中に投げ落とす。その間に英士はカレーせんべいについて調べていたが、山のようなバリエーションと出会うことになるだけだった。意外なことに、カレーせんべいは有名な商品だったのだ。
「くそっ。意外とメジャーな食い物だった」
「でしょうね。カレー味ですもん。確実に売れるでしょうよ。それに今やネットで何でも手に入る時代ですよ。地域限定だったとしても、犯人の特定には繋がらないですよ」
「だな。まったく」
手掛かりになるかと思ったんだがと、英士は難しい顔をする。どうにか事件のヒントがないかと考えてしまうが、現場から遠い場所にいては、何も解らない。
「まあ、言えることは、こういう嫌がらせを覚えている大人がやっているってことだけですよ」
「そうだな。大体、小学生の時に流行るタイプの嫌がらせだからな」
何のヒントもないんだなと、英士も摘まんでいた封筒をゴミ袋に戻していた。
ダイニングは重苦しい空気に包まれていたが、誰もが疲れているせいか落ち着いていた。いや、思考することを放棄していたのかもしれない。
そんな中、千春はコーヒーを飲みながらドアのことを考えていた。すっかり忘れ去られているが、あれを解かないことには他の謎も解けないのではないか。そう直感していた。
「雨は止みそうにないですね」
沈黙に耐えられなかったように、ぽつりと大地が呟いた。それに忠文が頷く。
「そうだな。警察はヘリを手配してくるというが、この中では危なくて飛行できない。いや、どのみちもう夜明けを待たないことには、ヘリは無理だろう。自衛隊でもない限り夜間に整備されていない場所に飛ばすのは危険だ」
忠文の意見に、そうですよねと大地は頷く。しかしそれが会話のきっかけになった。
「ただ、ここでぼんやりしていても仕方がない。それに寝るのは危険だからな。事件に関して考えよう」
「そうですね。とはいえ、小説家ですけど実際に起こった事件を考えるのは難しいですが」
大地がそう言って笑いを誘う。それはそうだろう。事実は小説より奇なりという言葉があるほどだ。思考することと実行することの差は大きい。
「ただ、この事件はトリックがなければどちらも実行不可能だって点は、小説と一緒ですね。よく解らないドアの仕掛けもあるし」
「そう。あれはどういう原理で動いているんだろうか。あの後、閉まるタイミングでドアを調べたが、びくともしなくなるんだもんな」
昼間、丁度開かない時間だというので、仕組みがわかるのではないかとドアを調べた。だが、開かないことは確認できたものの、どういう仕組みで開かなくなるのかは解らなかった。そのまま一時間ほど放置すると、ドアはすんなり開くようになっていた。
「圧力が掛かっているって感じでしたね」
千春の疑問に、友也がそう感想を漏らした。実際にドアを開けようと押した際、閉じて動かないというのは、外部から圧力が掛かって動かない。そういう印象を受けたという。
「そうなんです。それは俺も感じました」
「先生って、普段の一人称は俺なんですね。どうでもいいことですけど」
急に大地がそう指摘するので、千春はちょっと悩み、そして恥ずかしくなった。外に出た時には僕と言い換えるようにしていたのを殺人事件のせいで忘れていたと気づいたのだ。
「まあ、いいんじゃないですか。先生の顔からして、僕とか私って感じじゃないです」
「そうかな。まあいいか。ドアの謎。これを解きましょう」
千春の提案に、反対意見は出なかった。殺人事件そのものを考えるより気が楽だからだ。しかし、ドアの仕掛けはそう簡単に解けそうにない。
「圧力って言っても、ドアは普通に木製。先は渡り廊下ですよ」
大地が問題点をすぐに上げた。圧力が掛かるというのは、そもそも無理があると指摘する。
「確かにそのとおり。ドアそのものに圧力は掛けられない。しかし、ドアの蝶番や上の部分には掛けられるはずだ」
「なるほど。それは考えていなかった」
千春の反論に、そういう考え方も出来るのかと大地は唸る。
「確かにそうだな。ドアそのものに圧が掛けられないとなると、そういうドアの周囲に問題があると考えるべきだ」
友也もその意見には賛成だと頷く。ドアの隙間を埋める方法があれば、圧力が掛かって動かなくなるだろう。もしくは蝶番に仕掛けを施してしまう。
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