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第63話 バトル開始!?
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「ここにいるの?」
さて、狐たちが担ぐ輿に乗せられて運ばれて来たのは、東山の山中だ。そこは未だに夜の闇が残る場所で、何となく不気味だ。時折、何か動物が鳴く声がして、それもまた不気味だった。
こんなところに、あのキメラのような妖怪がいるのか。不気味さマックスだ。
「この辺にいるはずだけどもな。基本は山の妖怪だし」
健星は拳銃を胸ポケットから引き出し、警戒しながら答える。襲ってこないとも限らないと思っているのだ。
「そうだな。どこからかこちらの様子を窺っているはず。ユキ、狐たちに狐火をもっと点すように言ってくれ」
「た、ただいま」
晴明に指示されて、ユキはびしっと畏まって頷く。そして伏見稲荷の狐たちに、もっと狐火をと命令を出す。
「ユキって晴明さんのことが怖いのかしら」
その様子に、なんか他の人と接し方が違うよねと健星に確認。
「まっ、相手は神であると同時に陰陽師だからな。しかも狐にまつわる伝承を持つ。ついでにお前のご先祖様だ。そりゃあ、態度も最敬礼になるだろう」
「ああ、そうか」
一応ご先祖様なんだったっけ。鈴音は弓を構える晴明を見ても、まったく実感出来ずにいる。
「いる」
その晴明が、弓を夜の闇に向けてびたっと構える。途端に空気がぴんっと張り詰める。
狐火で辺りが明るくなる中、晴明が弓を向ける方向だけ、闇が一段と濃くなっているのが解った。
「動くなよ」
健星も気づき、鈴音を背中に隠すように立ち、銃を構える。
しばらく、無音の時間が続いた。
「っつ」
そこにバサッと大きく何かが羽ばたく音がする。それを合図とするように、晴明と健星が同時に動いた。
びよおおんと不思議な音が鳴る。晴明が放った弓矢が音を立てているのだ。と、健星が鈴音を抱えてごろっと転がる。
「いっ」
「ちっ」
どさっと倒れて背中が痛む。しかし、その間に健星が跳ね起き、拳銃を二発撃った。パンパンっと乾いた音が山にこだまする。が、ひゅんっと何かが横を飛びすぎていくのが解った。
「ぬ、鵺」
「ああ。敵と認定されたようだ」
「ええっ、話し合いに来ただけなのに!?」
こんなにすぐに戦闘になるのと鈴音が驚いていると
「今までが例外だ。普通は最初の鬼のように、無差別に襲ってくる。だから困ってるんだよ。あいつらにすれば人間だろうと冥界の者だろうと、自分のテリトリーに入ってくる邪魔者だ」
と健星に怒鳴られた。なるほど、単に健星が短気だからという理由だけではないのか。
「ど、どうするの? 人間を襲うなって言うだけだったのに」
そもそもこの全国行脚は、テリトリーを決めて動くなというものじゃなかったのか。
「ふん。もとよりそう単純に終わるとは思ってない。話が通じる妖怪なんて一部だ。晴明!」
「あっちだ!」
晴明が再び弓矢を構える。その矢は普通の矢と違い、先端が何だか丸かった。どうやら攻撃を目的としていないらしい。
「鏑矢だ。本来は合図を送るためだったり敵を驚かすために使うものだよ。こちらの言い分を聞かせるのが目的だからな、あれで十分だ」
健星がそう簡単に説明してくれたが、あんたは思い切り拳銃をぶっ放してるじゃん。矛盾!
鈴音はどういうことなのかとおろおろしてしまうが
「来るぞ!」
「動きを封じろ! こちらが上だと解らせるぞ!!」
晴明と健星はやるべきことが決まっていたようで、さっさと矢と拳銃を放つ。
さて、狐たちが担ぐ輿に乗せられて運ばれて来たのは、東山の山中だ。そこは未だに夜の闇が残る場所で、何となく不気味だ。時折、何か動物が鳴く声がして、それもまた不気味だった。
こんなところに、あのキメラのような妖怪がいるのか。不気味さマックスだ。
「この辺にいるはずだけどもな。基本は山の妖怪だし」
健星は拳銃を胸ポケットから引き出し、警戒しながら答える。襲ってこないとも限らないと思っているのだ。
「そうだな。どこからかこちらの様子を窺っているはず。ユキ、狐たちに狐火をもっと点すように言ってくれ」
「た、ただいま」
晴明に指示されて、ユキはびしっと畏まって頷く。そして伏見稲荷の狐たちに、もっと狐火をと命令を出す。
「ユキって晴明さんのことが怖いのかしら」
その様子に、なんか他の人と接し方が違うよねと健星に確認。
「まっ、相手は神であると同時に陰陽師だからな。しかも狐にまつわる伝承を持つ。ついでにお前のご先祖様だ。そりゃあ、態度も最敬礼になるだろう」
「ああ、そうか」
一応ご先祖様なんだったっけ。鈴音は弓を構える晴明を見ても、まったく実感出来ずにいる。
「いる」
その晴明が、弓を夜の闇に向けてびたっと構える。途端に空気がぴんっと張り詰める。
狐火で辺りが明るくなる中、晴明が弓を向ける方向だけ、闇が一段と濃くなっているのが解った。
「動くなよ」
健星も気づき、鈴音を背中に隠すように立ち、銃を構える。
しばらく、無音の時間が続いた。
「っつ」
そこにバサッと大きく何かが羽ばたく音がする。それを合図とするように、晴明と健星が同時に動いた。
びよおおんと不思議な音が鳴る。晴明が放った弓矢が音を立てているのだ。と、健星が鈴音を抱えてごろっと転がる。
「いっ」
「ちっ」
どさっと倒れて背中が痛む。しかし、その間に健星が跳ね起き、拳銃を二発撃った。パンパンっと乾いた音が山にこだまする。が、ひゅんっと何かが横を飛びすぎていくのが解った。
「ぬ、鵺」
「ああ。敵と認定されたようだ」
「ええっ、話し合いに来ただけなのに!?」
こんなにすぐに戦闘になるのと鈴音が驚いていると
「今までが例外だ。普通は最初の鬼のように、無差別に襲ってくる。だから困ってるんだよ。あいつらにすれば人間だろうと冥界の者だろうと、自分のテリトリーに入ってくる邪魔者だ」
と健星に怒鳴られた。なるほど、単に健星が短気だからという理由だけではないのか。
「ど、どうするの? 人間を襲うなって言うだけだったのに」
そもそもこの全国行脚は、テリトリーを決めて動くなというものじゃなかったのか。
「ふん。もとよりそう単純に終わるとは思ってない。話が通じる妖怪なんて一部だ。晴明!」
「あっちだ!」
晴明が再び弓矢を構える。その矢は普通の矢と違い、先端が何だか丸かった。どうやら攻撃を目的としていないらしい。
「鏑矢だ。本来は合図を送るためだったり敵を驚かすために使うものだよ。こちらの言い分を聞かせるのが目的だからな、あれで十分だ」
健星がそう簡単に説明してくれたが、あんたは思い切り拳銃をぶっ放してるじゃん。矛盾!
鈴音はどういうことなのかとおろおろしてしまうが
「来るぞ!」
「動きを封じろ! こちらが上だと解らせるぞ!!」
晴明と健星はやるべきことが決まっていたようで、さっさと矢と拳銃を放つ。
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