上 下
57 / 72

第57話 これぞ王の仕事じゃないか

しおりを挟む
 結局、職員室荒しは不良たちの犯行でしかなかった。たまたま陰摩羅鬼が傍を通りかかったことにより、発作的に不良たちは職員室荒らしを決行してしまったらしい。
 いや、それってどうなんだよと鈴音は思ったが、妖怪と出会って波長が合ってしまうと起こる現象だという。
「この間も話題になった通り魔がその典型例だな。あれは魔とすれ違ったために日頃心の奥底に隠している破壊衝動が噴出する現象だからな」
「ううむ。そういうのもトラブルになるってことか。今回のことで勉強になったなあ」
 冥界に戻り、ともかく休憩となったところで、鈴音はしみじみと呟いていた。右近の用意してくれたおにぎりを食べつつ、考えることが多いなあと実感してしまう。それに、健星はふっと笑った。
 また馬鹿にしてと思った鈴音だったが、健星が予想以上に優しい顔をしていたのでドキッとしてしまう。しかし、次に意地悪く口角を上げると
「自ら学ぼうとする姿勢は素晴らしい。今後もしっかりやれよ」
 と言ってきた。おかげでドキッとした気分は吹っ飛んだ。ちぇっ、これだから、この男は。
「それで、その不良というのはどうするんですか」
 ユキが解決したと見なしていいんですかと質問。
「そうだな。少年課に情報提供しておくから、すぐに犯人は解るだろう。後は学校側と保護者に任せるしかないね」
 健星はここから先は人間界での仕切りになるからなと真面目な顔になる。妖怪のトラブルは解決するが、人間のことは人間でやれというのが基本なのだ。
「まあ、そうですよね。妖怪のことだけでも手一杯です」
「それだわ。ちょっと通りがかっただけで影響しちゃうことがあるんだったら、そりゃあトラブルも続発するわよね。健星も言っていたけど、現世に住むんだったらちゃんと住処を決めてあげて、そこから出ないようにって指導しないと」
 ユキの言葉を受けて鈴音がそう言うと、それだと健星がパチンと指を鳴らした。
「えっ、それって」
「つまり、冥界に来るか、現世に留まりたいのならばルールを守るか。これをちゃんと伝えて行こう。俺だと話を聞かない妖怪が多くてバトルになるが、お前ならば出来る」
 健星、そう言って鈴音を指差した。これぞ王の仕事じゃないかと笑っている。
「いやいや。っていうか、すぐにバトルになる健星が問題でしょ」
「ふん。ルールを破ったのは妖怪たちだ。俺が引く必要はどこにもない」
「こ、これだから」
 本当に王様にならなくて正解だよ。鈴音は心の中で絶叫してしまう。
「ついでに挨拶回りにもなるだろ。選挙の時は自分に投票しろってついでに言え」
「いや、なんでやることに」
「効率的に回らないとなあ。おい、お前は一週間学校を休め。鬼退治もあるんだ。ちんたらやってられん」
「ちょっ」
「俺は虫垂炎ちゅうすいえんということにしよう。診断書はいくらでも偽造できる」
「いやいや。ええっ」
「何か希望の病気はあるか? なければ急性胃腸炎にしておくが」
 しれっと健星がそう言うので、鈴音はそうじゃなくてぇと頭を抱えてしまうのだった。
 ちなみに現在時刻はすでに朝の九時。学校はサボり決定なのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

処理中です...