半妖姫は冥界の玉座に招かれる

渋川宙

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第53話 次は学校を調べるぞ

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「これで現世での小さな事件は減るな。後は職員室の方か」
 さて、三太がお土産としてきゅうりを山盛り持たされて帰った後、健星はそっちも調査しないとなと顎を撫でる。
「そうか。あれは河童の仕業じゃなくてかまいたちだっけ」
「まだ暫定だよ。しかし、そういう類いのもので間違いないと思う」
「へえ」
 そう言ってすぐに捜査しようとする健星に、鈴音はタフだなあと感心していた。こっちは今の河童でもうぐったりだというのに。
「何を言っている。王は激務だぞ」
 やる気のない鈴音に、この選挙期間はお前の適性を見ているようなもんだからなと、健星は容赦してくれない。
「激務って、ああ、あの月読命からは想像できない」
 鈴音は交代する相手を思い浮かべるが、どう考えてもにこにこと笑顔でお菓子を食べている姿しか思い浮かべられなかった。
「あれは例外だ。おかげで周囲が激務だからな」
「ああ。健星も。で、健星の処理能力の限界が来たから交代だもんね。もう健星が王になれば」
「無理だってのは散々あれこれあって解ってんだろ。まあ、お前が出て来なければ仕方ないと王になる気だったけどな。その場合は各長官を酷使してやるつもりだった」
「うわあ。菅原さんや平将門さんを利用する気満々」
「当たり前だろ」
 ふんと鼻を鳴らし
「だからお前を王に仕立てようとしてるんだろ。使える駒だからな。紅葉の名前とお前のその見た目だけで、多くの奴らは納得だ。可愛い女子に弱いのは男の性だからな。長官どもを掌握するのも簡単になって助かった」
 とあっさりそんなことまで言う。
「くう。私も利用されているのか」
 鈴音は薄々気づいていたけど、はっきり言われると傷つくなあと顔を顰める。
「ふん。利用価値がないんだったら、お前みたいな小娘で半妖なんて、こっちからお断りだ」
 健星は当初のまんまだった。それにユキがカチンとなり
「まだそんなことを言うか。この暴力変人男!」
 と糾弾する。ユキ、一体どこでそんな悪口を覚えてきたんだろう。と、鈴音は違う心配をしてしまう。
「何とでも言え、狐。無駄な議論をしている時間はない。行くぞ。学校に人のいない時間しか調査できないんだからな」
 そして健星はユキの悪口を取り合うこともなく、とっとと行くぞと鈴音を引っ立てるのだった。



「夜の学校って不気味よねえ」
「まあ、学校は妖怪に事欠かないからな。それを考えると、職員室を荒らしたのも学校関係の妖怪かもしれん」
「げっ」
 あっさり学校にも妖怪がいると言われ、鈴音はびっくりしてしまう。ついでに帰りたい。
 現在、二人は高校の職員室がある一階にいた。この廊下だけでも十分に怖いというのに、妖怪も出るのか。
「一昔前にあった学校の怪談ブームのせいだ。あそこで余計な妖怪が大量に作り出された。しかもそいつらは新種だから、冥界になかなか来ようとせず、あの数年間、マジで各地の学校を爆破したかったよ」
 健星、どこにいても不穏なことを言ってくれる。
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