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第49話 マカロンでも癒やせない
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「お前のところもか」
「ということは、健星のところも?」
夜。冥界の屋敷にて、今日あった職員室荒らしについて報告すると、やれやれと健星は溜め息を吐いた。その様子から、他にも問題が発生しているんだと鈴音はビックリしてしまう。
「ああ。こちらははっきりと妖怪だと解っている。河童だ」
「河童。って、あの川にいる」
「そう」
「きゅうりが好きで、頭のお皿が乾くと死んじゃう」
「それだ」
鈴音の確認に、どう足掻いても河童なんだよと健星は溜め息だ。職員室荒しの犯人が妖怪らしいというより、はっきりくっきり目撃されているから、こちらの方が始末が悪いと考えてるのは明らかだった。
「河童もいるんだ」
「化け狐がいるのに何を今更」
「まあ、そうだけど」
鈴音からすると、今まで妖怪とは無縁な生活をしていたわけで、川に当たり前のように河童がいることにビックリだ。
「多くの河童は河川が護岸工事をされたタイミングで冥界に移り住んでいる。しかし、未練がましく現世の川に留まっている奴もいるんだよ。今回目撃されたのも、そういう連中だろう。そいつらはもとより冥界のシステムを嫌がっているから、今回の選挙でさらに締め付けが強くなると思って、必死なんだろうな」
健星は出されたマカロンを摘まみながらやれやれという。ちなみにこのマカロンは、現世のお菓子に興味津々の月読命からの差し入れ第二弾である。この間のロールケーキとタピオカミルクティーもちゃっかり自分の分も買ってきてもらい、あの清涼殿で幸せそうに食べていたのだとか。
「そんなに冥界って嫌なの。でも、大体の妖怪はここに棲んでいるのよね」
鈴音もマカロンを食べつつ、よく解らないなあと首を捻った。この冥界はそもそも人以外のモノの住処ではないのか。
「まあ、脅かす系の妖怪からすれば、妖怪や怨霊や神しかいないこの世界は退屈で仕方ないだろうな。化け狐も脅かす系だが、知性が発達しているからな。ここでも上手くやっていっているが、そう適応できる奴ばかりじゃない」
「ああ、そうか。妖怪相手じゃビックリしてくれないもんね。脅かす系って、振り向いたら顔がないっていうアレとか」
「それは狐や狸が正体の場合が多いが、まあ、そうやって脅かしたい奴らだな。今でも頑張っているやつだと、袖引き小僧やべとべとさんかな。とはいえ、奴らがもともと姿が見えないから実害はない」
「姿が見えない?」
また解らない事を言うなあと鈴音は唇を尖らせる。妖怪と知られているんだから、実体があるんじゃないのか。
「袖引き小僧は袖を引っ張るだけ、べとべとさんはずっと付いてくる足音の怪異だ。見えなくても十分に驚く」
「ああ、まあ、そうか」
確かに袖を引っ張られたのに誰もいなければ驚くか。足音も同じだ。
「こういう実害のないのは放っておいても大丈夫だし、現代人は勘違いで終わらせてくれる。問題はこの間も言ったように人の命を欲しがる妖怪の方だ。とはいえ、今回のように職員室を荒らしたりSNSに登場してしまうのは困る。事件を起こされるのも問題だが、姿を現して騒ぎになると、今の世の中ネットの力で大騒ぎだからな。妖怪が人間に捕まえられる前に対処しなければならなくなる」
なぜこうすんなりと物事が進まないんだ。さすがの健星も嫌になる状況だった。
「ということは、健星のところも?」
夜。冥界の屋敷にて、今日あった職員室荒らしについて報告すると、やれやれと健星は溜め息を吐いた。その様子から、他にも問題が発生しているんだと鈴音はビックリしてしまう。
「ああ。こちらははっきりと妖怪だと解っている。河童だ」
「河童。って、あの川にいる」
「そう」
「きゅうりが好きで、頭のお皿が乾くと死んじゃう」
「それだ」
鈴音の確認に、どう足掻いても河童なんだよと健星は溜め息だ。職員室荒しの犯人が妖怪らしいというより、はっきりくっきり目撃されているから、こちらの方が始末が悪いと考えてるのは明らかだった。
「河童もいるんだ」
「化け狐がいるのに何を今更」
「まあ、そうだけど」
鈴音からすると、今まで妖怪とは無縁な生活をしていたわけで、川に当たり前のように河童がいることにビックリだ。
「多くの河童は河川が護岸工事をされたタイミングで冥界に移り住んでいる。しかし、未練がましく現世の川に留まっている奴もいるんだよ。今回目撃されたのも、そういう連中だろう。そいつらはもとより冥界のシステムを嫌がっているから、今回の選挙でさらに締め付けが強くなると思って、必死なんだろうな」
健星は出されたマカロンを摘まみながらやれやれという。ちなみにこのマカロンは、現世のお菓子に興味津々の月読命からの差し入れ第二弾である。この間のロールケーキとタピオカミルクティーもちゃっかり自分の分も買ってきてもらい、あの清涼殿で幸せそうに食べていたのだとか。
「そんなに冥界って嫌なの。でも、大体の妖怪はここに棲んでいるのよね」
鈴音もマカロンを食べつつ、よく解らないなあと首を捻った。この冥界はそもそも人以外のモノの住処ではないのか。
「まあ、脅かす系の妖怪からすれば、妖怪や怨霊や神しかいないこの世界は退屈で仕方ないだろうな。化け狐も脅かす系だが、知性が発達しているからな。ここでも上手くやっていっているが、そう適応できる奴ばかりじゃない」
「ああ、そうか。妖怪相手じゃビックリしてくれないもんね。脅かす系って、振り向いたら顔がないっていうアレとか」
「それは狐や狸が正体の場合が多いが、まあ、そうやって脅かしたい奴らだな。今でも頑張っているやつだと、袖引き小僧やべとべとさんかな。とはいえ、奴らがもともと姿が見えないから実害はない」
「姿が見えない?」
また解らない事を言うなあと鈴音は唇を尖らせる。妖怪と知られているんだから、実体があるんじゃないのか。
「袖引き小僧は袖を引っ張るだけ、べとべとさんはずっと付いてくる足音の怪異だ。見えなくても十分に驚く」
「ああ、まあ、そうか」
確かに袖を引っ張られたのに誰もいなければ驚くか。足音も同じだ。
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なぜこうすんなりと物事が進まないんだ。さすがの健星も嫌になる状況だった。
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