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第45話 咄嗟に飛び込んだら・・・
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いきなり注目を浴びるのは、かなり恥ずかしかった。ついでに
「帝がいらしたぞ」
「馬鹿、まだ交代していないから王女様だぞ」
「ん? 皇太子って言い方がいいんじゃねえのか」
「春宮様だってよ」
と、多種多様な妖怪たちが口々に勝手な敬称を付けて呼ぶのもビックリしてしまった。みんながすでに王様として自分を受け入れている。その事実にも驚いてしまい、鈴音はその場にいることが出来ず、近くの建物にダッシュで入ってしまった。
「すみません、お茶を一杯頂けますか」
顔を真っ赤にし、ぜえぜえと息をする鈴音の背中を擦りながら、ユキはそうお願いする。ここまでダッシュしたせいでユキも息が荒いが、まずは鈴音だ。一緒に飛び込んだが、ここはどこだろう。
「少々お待ちください」
奥から声が聞こえ、ついでぱたぱたと誰かがやって来た。見るとユキのような真っ白な狐だ。
「お茶はすぐにお持ちします。それよりもささ、中へ。主様が鈴音様にお会いしたいとおっしゃっております」
狐はちまっと頭を下げる。その姿に鈴音もほっと一息吐き
「へえ。ここにも狐に関係する人がいるんだ」
と、ようやく笑顔になった。が、今度はユキが顔色を悪くする。
「ま、まさか、ここ」
そして、入ってきた建物ってと驚愕の顔になる。
「ど、どうしたの、ユキ?」
「さあ、どうぞ。雪貴様もご一緒に。主、安倍晴明がお待ちです」
真名を呼ばれ、そして主の名が明かされ、今度はユキが倒れそうになるのだった。
「へえ。可愛い子だね」
「晴明殿、お世話をかけます」
「いやいや。しかし、へえ」
ぺこりと頭を下げるのは、追いついてきた健星だ。しかし、奥で待っていた安倍晴明――そう超有名人のあの大陰陽師だ――は、二十歳そこそこの美青年姿で、鈴音をしげしげと見てくるのだから、鈴音はもう何も答えられずに顔を真っ赤にするしかない。
なんでこうイケメンが多いわけ。鈴音は目の前にある整った顔を前に、どうしていいか解らずに困惑する。ユキに助けを求めようとするが、ユキは畏まって平伏したままだ。
そう、鈴音が飛び込んだ場所は中務省に属する陰陽寮だったのだ。そこのトップはもちろん、この安倍晴明。
「晴明殿。現代とはいえ、女子の顔をそうしげしげと見つめてはいけません」
「そうは言うけどね、篁。現代の子って目が大きいよね」
「篁じゃないです」
健星はどいつもこいつもと溜め息だ。いやはや、二人揃って並んでいると、どこかのアイドルグループみたいである。顔を伏せているユキもイケメンだし、なんだ、ここ。逆ハーレムか。徐々に冷静になってきた鈴音はそう思ってしまった。
「おい、鈴音。晴明に見惚れている場合じゃないぞ」
そんな鈴音の心情が手に取るように解ったのか、健星がふんと鼻を鳴らしてくる。
「み、見惚れていただなんて。いや、めちゃくちゃカッコイイけど」
「ありがとう。まあ、俺の顔も年々変化した結果だけどね。今の理想型ってこういう顔なんだよなあ」
褒められた晴明は不可解なことを言ってくれる。それに、健星は大きく溜め息を吐き、
「普段は神社にいらして、ここにはいないじゃないですか。何やってるんですか」
と質問。ええっと、どういうことだ。また解らないことが出てきたぞ。
「帝がいらしたぞ」
「馬鹿、まだ交代していないから王女様だぞ」
「ん? 皇太子って言い方がいいんじゃねえのか」
「春宮様だってよ」
と、多種多様な妖怪たちが口々に勝手な敬称を付けて呼ぶのもビックリしてしまった。みんながすでに王様として自分を受け入れている。その事実にも驚いてしまい、鈴音はその場にいることが出来ず、近くの建物にダッシュで入ってしまった。
「すみません、お茶を一杯頂けますか」
顔を真っ赤にし、ぜえぜえと息をする鈴音の背中を擦りながら、ユキはそうお願いする。ここまでダッシュしたせいでユキも息が荒いが、まずは鈴音だ。一緒に飛び込んだが、ここはどこだろう。
「少々お待ちください」
奥から声が聞こえ、ついでぱたぱたと誰かがやって来た。見るとユキのような真っ白な狐だ。
「お茶はすぐにお持ちします。それよりもささ、中へ。主様が鈴音様にお会いしたいとおっしゃっております」
狐はちまっと頭を下げる。その姿に鈴音もほっと一息吐き
「へえ。ここにも狐に関係する人がいるんだ」
と、ようやく笑顔になった。が、今度はユキが顔色を悪くする。
「ま、まさか、ここ」
そして、入ってきた建物ってと驚愕の顔になる。
「ど、どうしたの、ユキ?」
「さあ、どうぞ。雪貴様もご一緒に。主、安倍晴明がお待ちです」
真名を呼ばれ、そして主の名が明かされ、今度はユキが倒れそうになるのだった。
「へえ。可愛い子だね」
「晴明殿、お世話をかけます」
「いやいや。しかし、へえ」
ぺこりと頭を下げるのは、追いついてきた健星だ。しかし、奥で待っていた安倍晴明――そう超有名人のあの大陰陽師だ――は、二十歳そこそこの美青年姿で、鈴音をしげしげと見てくるのだから、鈴音はもう何も答えられずに顔を真っ赤にするしかない。
なんでこうイケメンが多いわけ。鈴音は目の前にある整った顔を前に、どうしていいか解らずに困惑する。ユキに助けを求めようとするが、ユキは畏まって平伏したままだ。
そう、鈴音が飛び込んだ場所は中務省に属する陰陽寮だったのだ。そこのトップはもちろん、この安倍晴明。
「晴明殿。現代とはいえ、女子の顔をそうしげしげと見つめてはいけません」
「そうは言うけどね、篁。現代の子って目が大きいよね」
「篁じゃないです」
健星はどいつもこいつもと溜め息だ。いやはや、二人揃って並んでいると、どこかのアイドルグループみたいである。顔を伏せているユキもイケメンだし、なんだ、ここ。逆ハーレムか。徐々に冷静になってきた鈴音はそう思ってしまった。
「おい、鈴音。晴明に見惚れている場合じゃないぞ」
そんな鈴音の心情が手に取るように解ったのか、健星がふんと鼻を鳴らしてくる。
「み、見惚れていただなんて。いや、めちゃくちゃカッコイイけど」
「ありがとう。まあ、俺の顔も年々変化した結果だけどね。今の理想型ってこういう顔なんだよなあ」
褒められた晴明は不可解なことを言ってくれる。それに、健星は大きく溜め息を吐き、
「普段は神社にいらして、ここにはいないじゃないですか。何やってるんですか」
と質問。ええっと、どういうことだ。また解らないことが出てきたぞ。
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