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第44話 王様って・・・
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中務省を後にして、次に向かったのは兵部省だった。ここで反対勢力の鬼に関して相談もするという。
「すでに嫌な予感がするんだけど、兵部省の長官も歴史上の人物なの?」
大内裏の中を歩きながら、鈴音はまずそこを確認してしまう。
「まあな。会ってからのお楽しみだ」
「た、楽しめないわよ」
にやっと笑う健星に、一体誰なのよと鈴音は警戒してしまう。その後ろを歩くユキは、何だか仲良くなってるなあと不機嫌だ。
「それよりも、大内裏の中もちゃんと見学しておけ。王になればそうやって来ることはないが、ここで政治の多くが処理されるんだぞ」
健星は不機嫌なユキを捉えて苦笑しつつ、ちゃんと周囲にも目を向けろと鈴音を注意する。
「そう言われても、ここって建物だらけよね。そして、妖怪だらけだ」
鈴音はあんまりキョロキョロしたくないなあと、直衣姿の馬面の妖怪が通り過ぎていく様子に首を竦めてしまう。
「妖怪に慣れろ。お前が統治する相手だぞ。ついでにここにいる連中は人畜無害だ。悪さをする連中がいくら自分たちのためになるとはいえ、真面目に働くわけがないんだ。今回も選挙の妨害に回っているしな」
そんな鈴音の背中をばしっと叩き、背筋を伸せと健星の指導が入る。すでにこの人、新人の王の教育係になろうとしてるんですけど。鈴音はようやく後ろをちょこちょこと付いてくるユキに目を向ける。
「鈴音様。王たるもの、堂々とでございます」
でもってユキ、健星に対して密かにライバル意識を燃やしているものだから、ガッツポーズ付きで応援する。俺は優しくサポートしますとアピールしているのだが、鈴音には届かない。
「王様って大変ねえ。あの月読命様を見てると、のほほんとしてても大丈夫っぽいのに」
おかげで鈴音からそんな愚痴を頂戴してしまった。ユキはまあ、そうですねえと曖昧だ。
「あれでも式典の時はばしっとしているし、必要とあれば難しい顔も出来る」
健星も否定しきれないのか、態度に関してしか言わない。まったくもう、月読命って王様の仕事はしていなかったのか。そう訊きたくなる。
「まあ、今まではお飾りで良かったってことだよ。ここの整備をしたのはイザナミ様で、隠居するからって月読命様が内裏にいただけという言い方も出来るからな」
「いや、それでいいわけ。っていうか、王様の交代のタイミングって隠居なの?」
まず交代のタイミングがおかしいのよねと鈴音は溜め息。
「それは仕方がないさ。イザナギ様も月読命様も神だ。すでに死というものを超越された存在だからな」
「ふうん。じゃあ、次からはちゃんと交代することになるわよね。私、半分は人間だし」
鈴音がそう言うと、健星がくくっと笑った。久々に意地の悪い笑いだ。これは何かあるな。
「なによ」
「冥界では寿命が変化する。俺だってよく解らない存在になったくらいだからな。お前が無事に王になった暁には、天命を全うするまで寿命は尽きないさ」
「なっ」
「そうだな。改革に掛かる時間、今後の妖怪の変化などなど、あれこれ考えると千年は生きるんじゃないか」
「はあっ!?」
急に寿命も延長されるって言われても困るんですけど。鈴音は絶叫してしまった。おかげで大内裏を歩いていた妖怪たちに注目されてしまう。
「安倍鈴音だ。次の選挙で王になる者だぞ」
注目されたのを幸いと、健星がそう大声で宣言する。それにパチパチと拍手が起こり、鈴音は血圧が上がりすぎて、危うく倒れるところだった。
「すでに嫌な予感がするんだけど、兵部省の長官も歴史上の人物なの?」
大内裏の中を歩きながら、鈴音はまずそこを確認してしまう。
「まあな。会ってからのお楽しみだ」
「た、楽しめないわよ」
にやっと笑う健星に、一体誰なのよと鈴音は警戒してしまう。その後ろを歩くユキは、何だか仲良くなってるなあと不機嫌だ。
「それよりも、大内裏の中もちゃんと見学しておけ。王になればそうやって来ることはないが、ここで政治の多くが処理されるんだぞ」
健星は不機嫌なユキを捉えて苦笑しつつ、ちゃんと周囲にも目を向けろと鈴音を注意する。
「そう言われても、ここって建物だらけよね。そして、妖怪だらけだ」
鈴音はあんまりキョロキョロしたくないなあと、直衣姿の馬面の妖怪が通り過ぎていく様子に首を竦めてしまう。
「妖怪に慣れろ。お前が統治する相手だぞ。ついでにここにいる連中は人畜無害だ。悪さをする連中がいくら自分たちのためになるとはいえ、真面目に働くわけがないんだ。今回も選挙の妨害に回っているしな」
そんな鈴音の背中をばしっと叩き、背筋を伸せと健星の指導が入る。すでにこの人、新人の王の教育係になろうとしてるんですけど。鈴音はようやく後ろをちょこちょこと付いてくるユキに目を向ける。
「鈴音様。王たるもの、堂々とでございます」
でもってユキ、健星に対して密かにライバル意識を燃やしているものだから、ガッツポーズ付きで応援する。俺は優しくサポートしますとアピールしているのだが、鈴音には届かない。
「王様って大変ねえ。あの月読命様を見てると、のほほんとしてても大丈夫っぽいのに」
おかげで鈴音からそんな愚痴を頂戴してしまった。ユキはまあ、そうですねえと曖昧だ。
「あれでも式典の時はばしっとしているし、必要とあれば難しい顔も出来る」
健星も否定しきれないのか、態度に関してしか言わない。まったくもう、月読命って王様の仕事はしていなかったのか。そう訊きたくなる。
「まあ、今まではお飾りで良かったってことだよ。ここの整備をしたのはイザナミ様で、隠居するからって月読命様が内裏にいただけという言い方も出来るからな」
「いや、それでいいわけ。っていうか、王様の交代のタイミングって隠居なの?」
まず交代のタイミングがおかしいのよねと鈴音は溜め息。
「それは仕方がないさ。イザナギ様も月読命様も神だ。すでに死というものを超越された存在だからな」
「ふうん。じゃあ、次からはちゃんと交代することになるわよね。私、半分は人間だし」
鈴音がそう言うと、健星がくくっと笑った。久々に意地の悪い笑いだ。これは何かあるな。
「なによ」
「冥界では寿命が変化する。俺だってよく解らない存在になったくらいだからな。お前が無事に王になった暁には、天命を全うするまで寿命は尽きないさ」
「なっ」
「そうだな。改革に掛かる時間、今後の妖怪の変化などなど、あれこれ考えると千年は生きるんじゃないか」
「はあっ!?」
急に寿命も延長されるって言われても困るんですけど。鈴音は絶叫してしまった。おかげで大内裏を歩いていた妖怪たちに注目されてしまう。
「安倍鈴音だ。次の選挙で王になる者だぞ」
注目されたのを幸いと、健星がそう大声で宣言する。それにパチパチと拍手が起こり、鈴音は血圧が上がりすぎて、危うく倒れるところだった。
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