37 / 72
第37話 支持してくれるのは?
しおりを挟む
「ともかく、鬼どもは詳しい調査結果が出ないとどうしようもないな。俺のところの家臣団と一緒に探りに行っているんだろ?」
健星は再びユキに確認。
「はい。もしも再び危害を加えるような動きを見せた場合は、すぐに動けるようにしてあります」
ユキは抜かりなくやっていると頷いた。取り敢えず、鬼に関しては逐次情報が入るはずだ。問題はそれ以外というところだろう。
「鬼だけじゃないんだ」
「まあな。妖怪は多種多様だ。そもそも一枚岩に固まって何かをする連中でもない。だから派閥も多い」
「うわあ」
すでに面倒臭い予感しかしない。鈴音は思い切り顔を顰めてしまった。って、じゃあ、味方は誰なのよ。
「鈴音様に王になってもらいたいと思っている者は多いですよ。まず狐、狸、犬神、これだけでも相当な数でございます」
鈴音の疑問に、大丈夫ですとユキは胸を張る。が、全部動物じゃんと鈴音は頭が痛い。
「他には」
「雪女や橋姫といった、女性陣はもれなく」
「そ、そう」
妖怪にも女子がいるのねえと、鈴音は曖昧だ。というか、雪女は知っているけれども橋姫って誰?
「まあ、男妖怪も紅葉の娘ならばと期待しているからな。ある程度は支持しているだろう。問題は意外と平凡な娘だってことくらいで」
そこに健星の余計な一言が入る。悪かったわね、平凡で。美人じゃない自覚はあるもん、と鈴音は鼻を鳴らす。
「まあ、気の強さが気に入られるだろう。俺しか候補者がいないのならばと思っていた奴も、ほぼお前に付くから問題ない」
健星はそんな鈴音の不機嫌なんて無視して、菅原道真とか怨霊たちの票は大丈夫だろうと言う。
「いや、怨霊も入ってくるの、妖怪って」
鈴音は不機嫌になっている場合ではなくなってしまった。怨霊って恨んで死んだ人ってことでしょ。怖くないのとびっくりだ。
「普段は気のいい連中だから問題ない。というより、怨霊ってのは、まあいい。講釈すると面倒だ。会えば解る」
「は、はあ」
何だろう。鬼の時といい、このすっきり説明されない感じ。もやもやするなあ。でも、会っても問題ない人たちなのか。
「まあ、大多数は問題なくお前に投票するし、邪魔しようともしないはずだ。だから、鬼以外で邪魔をしそうな奴を考えればいいだけだ」
健星は何か思い当たるかと、ユキに訊ねる。
「そうですね。七人ミサキや船幽霊、通り魔といった、もともと人間に害をなし、人間そのものを取り込む類の妖怪たちは、そもそも締め付けを強くするためのこの選挙自体に反対です。月読命様のような、怪異は仕方がないと許容されないことそのものが嫌ですからね」
「やはりそっちか」
「何一つ解らないんだけど、通り魔って犯罪の名前じゃないの?」
鈴音は質問と手を挙げた。ガンガン訊いていかないとまた置いて行かれる。
「もとは妖怪の名前だ。それを犯罪の名前として使っている。順序が逆なんだ。魔に魅入られたとしか思えないから通り魔、と現代でも考えているってことだよ」
質問に対して健星は馬鹿にすることなく答えてくれた。なるほど、妖怪が先か。って、現代人。意外と妖怪を許容してるよね、本当に。
「人間と妖怪の棲み分けは無理ですからねえ」
ユキもしみじみと言っていた。ううん、トラブルは増加しているけれども、どうしても切れない相手か。そりゃあ難しい。
「どうやればみんなが幸せになるかってことよね」
鈴音は難しいなと腕を組んだが、妖怪の問題はそれ以上にややこしいと健星が溜め息を吐く。
「ややこしいって」
「先ほどの例の七人ミサキで言えば、奴らは人間一人を殺して成仏することを願っているんだぞ。つまり、奴らに取っての幸せは誰かの死だ。根本的な解決が存在しない」
「なっ」
あまりのことに鈴音は絶句。
健星は再びユキに確認。
「はい。もしも再び危害を加えるような動きを見せた場合は、すぐに動けるようにしてあります」
ユキは抜かりなくやっていると頷いた。取り敢えず、鬼に関しては逐次情報が入るはずだ。問題はそれ以外というところだろう。
「鬼だけじゃないんだ」
「まあな。妖怪は多種多様だ。そもそも一枚岩に固まって何かをする連中でもない。だから派閥も多い」
「うわあ」
すでに面倒臭い予感しかしない。鈴音は思い切り顔を顰めてしまった。って、じゃあ、味方は誰なのよ。
「鈴音様に王になってもらいたいと思っている者は多いですよ。まず狐、狸、犬神、これだけでも相当な数でございます」
鈴音の疑問に、大丈夫ですとユキは胸を張る。が、全部動物じゃんと鈴音は頭が痛い。
「他には」
「雪女や橋姫といった、女性陣はもれなく」
「そ、そう」
妖怪にも女子がいるのねえと、鈴音は曖昧だ。というか、雪女は知っているけれども橋姫って誰?
「まあ、男妖怪も紅葉の娘ならばと期待しているからな。ある程度は支持しているだろう。問題は意外と平凡な娘だってことくらいで」
そこに健星の余計な一言が入る。悪かったわね、平凡で。美人じゃない自覚はあるもん、と鈴音は鼻を鳴らす。
「まあ、気の強さが気に入られるだろう。俺しか候補者がいないのならばと思っていた奴も、ほぼお前に付くから問題ない」
健星はそんな鈴音の不機嫌なんて無視して、菅原道真とか怨霊たちの票は大丈夫だろうと言う。
「いや、怨霊も入ってくるの、妖怪って」
鈴音は不機嫌になっている場合ではなくなってしまった。怨霊って恨んで死んだ人ってことでしょ。怖くないのとびっくりだ。
「普段は気のいい連中だから問題ない。というより、怨霊ってのは、まあいい。講釈すると面倒だ。会えば解る」
「は、はあ」
何だろう。鬼の時といい、このすっきり説明されない感じ。もやもやするなあ。でも、会っても問題ない人たちなのか。
「まあ、大多数は問題なくお前に投票するし、邪魔しようともしないはずだ。だから、鬼以外で邪魔をしそうな奴を考えればいいだけだ」
健星は何か思い当たるかと、ユキに訊ねる。
「そうですね。七人ミサキや船幽霊、通り魔といった、もともと人間に害をなし、人間そのものを取り込む類の妖怪たちは、そもそも締め付けを強くするためのこの選挙自体に反対です。月読命様のような、怪異は仕方がないと許容されないことそのものが嫌ですからね」
「やはりそっちか」
「何一つ解らないんだけど、通り魔って犯罪の名前じゃないの?」
鈴音は質問と手を挙げた。ガンガン訊いていかないとまた置いて行かれる。
「もとは妖怪の名前だ。それを犯罪の名前として使っている。順序が逆なんだ。魔に魅入られたとしか思えないから通り魔、と現代でも考えているってことだよ」
質問に対して健星は馬鹿にすることなく答えてくれた。なるほど、妖怪が先か。って、現代人。意外と妖怪を許容してるよね、本当に。
「人間と妖怪の棲み分けは無理ですからねえ」
ユキもしみじみと言っていた。ううん、トラブルは増加しているけれども、どうしても切れない相手か。そりゃあ難しい。
「どうやればみんなが幸せになるかってことよね」
鈴音は難しいなと腕を組んだが、妖怪の問題はそれ以上にややこしいと健星が溜め息を吐く。
「ややこしいって」
「先ほどの例の七人ミサキで言えば、奴らは人間一人を殺して成仏することを願っているんだぞ。つまり、奴らに取っての幸せは誰かの死だ。根本的な解決が存在しない」
「なっ」
あまりのことに鈴音は絶句。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる