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第28話 九尾狐を正しく解釈すると
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「ええっと」
昔からの計画だとすれば、どうして紅葉は悔いた顔をするのか。鈴音は解らずに困惑する。
「なるほど。半妖の姫がいることは秘密だったわけか。しかし、切迫した事態に自分に娘がいると告白するしかなかったというところか。九尾狐は基本的に権力者の傍に仕え、正しいアドバイスを与えるものだからな。国難を前に自分の私情は挟めなかったか」
しかし、健星は解ったようで、そう解説してくれた。なるほど、王様のすぐ傍にいてピンチだと解っているのに、半妖の存在を隠しきれなかったと。
「ううん。ってか、九尾狐って権力者の傍にいるものなの?」
「そうだ。よく傾国の美女イコール九尾狐になるが、それは権力者が失敗を隠すために九尾狐に罪を擦り付けただけだ。基本的に狐は尾の数が多いほど高位だとされている。とすれば、九つの尻尾を持つ狐が悪であるはずがない。本来は国を導く存在なんだよ」
「へえ」
なるほどねえと鈴音は納得。さすが頭がいいだけあって説明上手だ。
「だからこそ、お前は玉座に相応しいという話にもなるんだ。半分は人間で半分は九尾狐ならばサポート役に納まる必要はないからな」
「ぐっ。そんな理由だったなんて」
鈴音は思わず拳を握り締めてしまう。
「鈴音様。朝餉の準備が整いました」
そこにユキがやって来てご飯だと告げる。隣の部屋に用意してあるとのことだ。
「あっ、そうだ。ユキが御前狐だっていうのは」
「御前はおんまえと書くんだぞ。とすれば、王か神に仕える狐だと解るだろ」
「な、なるほど」
段々何もかもが仕組まれていたという事実を受け入れ始める鈴音だ。ああもう、全部整ってるってことじゃん。鈴音はますます拳を握り締めてしまう。
「あ、あのぅ」
「そうだ。そろそろ俺も屋敷に戻って着替えないとな。主上も総て承知の上だとすると、これから今後の相談となるだろうしね。じゃ」
「あっ、うん」
立ち上がって片手を振りながら帰っていく健星に、鈴音も思わず手を振り返す。あいつって何かと忙しないなあ。と、そこでユキを見ると、なぜか口を尖らせている。どうしたのだろう。
「ユキ」
「い、いえ。どうぞ。こちらです」
「ああ、うん」
初めての女房装束に立ち上がるのも一苦労だ。しかも長袴だから、裾を引きずって歩かなければならないというのも難しい。
「ユキ、手を貸して」
「は、はい」
必死の鈴音はユキに助けを求める。するとユキは真っ赤な顔をしてその手を取ったのだが、もちろん鈴音は見ていない。
「あらあら。面白いことになりそうね」
そんな様子を見て、紅葉はくすくすと笑ってしまった。しかし、今は恋路よりも大事なことがある。
「御台所様」
左近が入ってきた気配に紅葉は笑みを引っ込めて向き合う。
「どうでしたか?」
「はっ。先に私だけ確認にいきましたところ、羅刹は酒呑童子と手を組み、猛烈に反対しているようでした。他にも人間を捕食したい連中は、これを機に冥界そのものを壊したいと考えているようです」
「そう。やはり、戦いは避けられないわね」
「はっ。ともかく、小野殿の家臣団とともに、討伐隊を編成いたします」
「お願い」
指示を終えると、紅葉はそっと溜め息を吐く。
「こっちはまだスタートにも立っていないのに」
鈴音にとっては僅か三日。しかし、妖怪たちにとって政権交代は長年窺ってきたチャンスなのだ。待ってくれない。
「大変だわ」
紅葉はそう言いつつも、笑ってしまうのを抑えられなかった。
昔からの計画だとすれば、どうして紅葉は悔いた顔をするのか。鈴音は解らずに困惑する。
「なるほど。半妖の姫がいることは秘密だったわけか。しかし、切迫した事態に自分に娘がいると告白するしかなかったというところか。九尾狐は基本的に権力者の傍に仕え、正しいアドバイスを与えるものだからな。国難を前に自分の私情は挟めなかったか」
しかし、健星は解ったようで、そう解説してくれた。なるほど、王様のすぐ傍にいてピンチだと解っているのに、半妖の存在を隠しきれなかったと。
「ううん。ってか、九尾狐って権力者の傍にいるものなの?」
「そうだ。よく傾国の美女イコール九尾狐になるが、それは権力者が失敗を隠すために九尾狐に罪を擦り付けただけだ。基本的に狐は尾の数が多いほど高位だとされている。とすれば、九つの尻尾を持つ狐が悪であるはずがない。本来は国を導く存在なんだよ」
「へえ」
なるほどねえと鈴音は納得。さすが頭がいいだけあって説明上手だ。
「だからこそ、お前は玉座に相応しいという話にもなるんだ。半分は人間で半分は九尾狐ならばサポート役に納まる必要はないからな」
「ぐっ。そんな理由だったなんて」
鈴音は思わず拳を握り締めてしまう。
「鈴音様。朝餉の準備が整いました」
そこにユキがやって来てご飯だと告げる。隣の部屋に用意してあるとのことだ。
「あっ、そうだ。ユキが御前狐だっていうのは」
「御前はおんまえと書くんだぞ。とすれば、王か神に仕える狐だと解るだろ」
「な、なるほど」
段々何もかもが仕組まれていたという事実を受け入れ始める鈴音だ。ああもう、全部整ってるってことじゃん。鈴音はますます拳を握り締めてしまう。
「あ、あのぅ」
「そうだ。そろそろ俺も屋敷に戻って着替えないとな。主上も総て承知の上だとすると、これから今後の相談となるだろうしね。じゃ」
「あっ、うん」
立ち上がって片手を振りながら帰っていく健星に、鈴音も思わず手を振り返す。あいつって何かと忙しないなあ。と、そこでユキを見ると、なぜか口を尖らせている。どうしたのだろう。
「ユキ」
「い、いえ。どうぞ。こちらです」
「ああ、うん」
初めての女房装束に立ち上がるのも一苦労だ。しかも長袴だから、裾を引きずって歩かなければならないというのも難しい。
「ユキ、手を貸して」
「は、はい」
必死の鈴音はユキに助けを求める。するとユキは真っ赤な顔をしてその手を取ったのだが、もちろん鈴音は見ていない。
「あらあら。面白いことになりそうね」
そんな様子を見て、紅葉はくすくすと笑ってしまった。しかし、今は恋路よりも大事なことがある。
「御台所様」
左近が入ってきた気配に紅葉は笑みを引っ込めて向き合う。
「どうでしたか?」
「はっ。先に私だけ確認にいきましたところ、羅刹は酒呑童子と手を組み、猛烈に反対しているようでした。他にも人間を捕食したい連中は、これを機に冥界そのものを壊したいと考えているようです」
「そう。やはり、戦いは避けられないわね」
「はっ。ともかく、小野殿の家臣団とともに、討伐隊を編成いたします」
「お願い」
指示を終えると、紅葉はそっと溜め息を吐く。
「こっちはまだスタートにも立っていないのに」
鈴音にとっては僅か三日。しかし、妖怪たちにとって政権交代は長年窺ってきたチャンスなのだ。待ってくれない。
「大変だわ」
紅葉はそう言いつつも、笑ってしまうのを抑えられなかった。
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