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第27話 政権交代が必要になった理由
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「知らないわよ。私はつい三日前まで普通の女子高生だったの。いきなり半妖です、九尾狐の姫です、王になってくださいっていう怒濤の展開だったの。誰も何も説明してくれないんだから。あっ、ここの今の王様が月読命さんだってのは知ってるけど」
鈴音は健星の嫌味に対して一気に捲し立てた。すると健星は面白くなさそうな顔をしていたが
「そいつは気の毒だったな」
と珍しい一言を放った。なに、労ってくれているの。それとも馬鹿にしてるの。鈴音は困惑してしまう。
「そうね。怒濤の展開だったわね」
鈴音の髪のセットをしていた紅葉も、仕方ないわねえとくすくすと笑っている。
「解った。解りやすく説明してやろう。まったく、こいつが王になるかと思うと今から気が重いぜ」
健星はぶつぶつ文句を言いながらも鈴音の前にどかっと座る。
「あら、小野殿はどうせ宰相の座に納まるつもりでしょ。だったら予行演習よ」
そんな健星に紅葉は気になる一言を言う。それに健星は舌打ちしているが、どういうことだ。
「鈴音。あなたが王様になるのが一番なのよ。でも、選挙はやるっていう話は昨日の夜したわよね」
「えっ、うん。でも、あれって健星も納得してるわけ?」
「納得も何も、それが最も適当な落としどころというだけだ。あの気まぐれの王がいきなり引退すると言いだし、次は選挙だと言った理由はこれだったんだよ。お前も俺も嵌められたんだ。王とそこにいる紅葉にな」
「えっ?」
嵌められた。どういうこと。鈴音は健星の不機嫌な顔を見、次に紅葉の妖艶な笑顔を見る。
「嵌めたというのは人聞きが悪いですわ。ただ、今の人間社会に詳しい人が王にならないことには、トラブルは増え続ける。そう判断しての主上の引退ですし、私は傍近くにお仕えする者として、アドバイスしただけです」
しれっと紅葉は言うが、要するに計画した側ってことだ。鈴音はどうしてと紅葉を睨む。
「まあ、それこそお前が二十歳になったら発動する予定だった計画なんだろうよ。しかし、急ぐ理由が出来たってことだろうな。刑事として妖怪がらみの事件が多発していることを知る俺が、確実に出馬するのも解っていただろうし」
はんっと、健星は面白くなさそうに鼻を鳴らした。本当にエリートなのかと聞きたくなる態度の悪さだ。
「ん? ということは、妖怪が人間に悪さをしているってこと?」
しかし、今の話で解ったことがある。人間に対して悪さをする妖怪の増加。これが原因なのだ。
「まあ、人間どもが悪い部分もあるんだけどな。ともかく、今の王では押さえ込めない事態になってきているのは確かだ。そりゃあ引退を急ぎたくもなるだろう。このままでは過労で倒れるぜ、あの神様」
くくっと笑う健星はどこまでも意地悪だ。この人、性格がねじ曲がりすぎだと思う。
「ともかく、人間と妖怪のどちらも知る人たちに穏便に政権を譲りたい。そう主上が仰られたのよ。でも、王の座に人間、つまり小野殿ね、がなると反対勢力が大きくなるのは目に見えていたのよ。そこで必要な存在が半妖だったの」
紅葉はそこで悔いるように目を伏せる。
鈴音は健星の嫌味に対して一気に捲し立てた。すると健星は面白くなさそうな顔をしていたが
「そいつは気の毒だったな」
と珍しい一言を放った。なに、労ってくれているの。それとも馬鹿にしてるの。鈴音は困惑してしまう。
「そうね。怒濤の展開だったわね」
鈴音の髪のセットをしていた紅葉も、仕方ないわねえとくすくすと笑っている。
「解った。解りやすく説明してやろう。まったく、こいつが王になるかと思うと今から気が重いぜ」
健星はぶつぶつ文句を言いながらも鈴音の前にどかっと座る。
「あら、小野殿はどうせ宰相の座に納まるつもりでしょ。だったら予行演習よ」
そんな健星に紅葉は気になる一言を言う。それに健星は舌打ちしているが、どういうことだ。
「鈴音。あなたが王様になるのが一番なのよ。でも、選挙はやるっていう話は昨日の夜したわよね」
「えっ、うん。でも、あれって健星も納得してるわけ?」
「納得も何も、それが最も適当な落としどころというだけだ。あの気まぐれの王がいきなり引退すると言いだし、次は選挙だと言った理由はこれだったんだよ。お前も俺も嵌められたんだ。王とそこにいる紅葉にな」
「えっ?」
嵌められた。どういうこと。鈴音は健星の不機嫌な顔を見、次に紅葉の妖艶な笑顔を見る。
「嵌めたというのは人聞きが悪いですわ。ただ、今の人間社会に詳しい人が王にならないことには、トラブルは増え続ける。そう判断しての主上の引退ですし、私は傍近くにお仕えする者として、アドバイスしただけです」
しれっと紅葉は言うが、要するに計画した側ってことだ。鈴音はどうしてと紅葉を睨む。
「まあ、それこそお前が二十歳になったら発動する予定だった計画なんだろうよ。しかし、急ぐ理由が出来たってことだろうな。刑事として妖怪がらみの事件が多発していることを知る俺が、確実に出馬するのも解っていただろうし」
はんっと、健星は面白くなさそうに鼻を鳴らした。本当にエリートなのかと聞きたくなる態度の悪さだ。
「ん? ということは、妖怪が人間に悪さをしているってこと?」
しかし、今の話で解ったことがある。人間に対して悪さをする妖怪の増加。これが原因なのだ。
「まあ、人間どもが悪い部分もあるんだけどな。ともかく、今の王では押さえ込めない事態になってきているのは確かだ。そりゃあ引退を急ぎたくもなるだろう。このままでは過労で倒れるぜ、あの神様」
くくっと笑う健星はどこまでも意地悪だ。この人、性格がねじ曲がりすぎだと思う。
「ともかく、人間と妖怪のどちらも知る人たちに穏便に政権を譲りたい。そう主上が仰られたのよ。でも、王の座に人間、つまり小野殿ね、がなると反対勢力が大きくなるのは目に見えていたのよ。そこで必要な存在が半妖だったの」
紅葉はそこで悔いるように目を伏せる。
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