27 / 72
第27話 政権交代が必要になった理由
しおりを挟む
「知らないわよ。私はつい三日前まで普通の女子高生だったの。いきなり半妖です、九尾狐の姫です、王になってくださいっていう怒濤の展開だったの。誰も何も説明してくれないんだから。あっ、ここの今の王様が月読命さんだってのは知ってるけど」
鈴音は健星の嫌味に対して一気に捲し立てた。すると健星は面白くなさそうな顔をしていたが
「そいつは気の毒だったな」
と珍しい一言を放った。なに、労ってくれているの。それとも馬鹿にしてるの。鈴音は困惑してしまう。
「そうね。怒濤の展開だったわね」
鈴音の髪のセットをしていた紅葉も、仕方ないわねえとくすくすと笑っている。
「解った。解りやすく説明してやろう。まったく、こいつが王になるかと思うと今から気が重いぜ」
健星はぶつぶつ文句を言いながらも鈴音の前にどかっと座る。
「あら、小野殿はどうせ宰相の座に納まるつもりでしょ。だったら予行演習よ」
そんな健星に紅葉は気になる一言を言う。それに健星は舌打ちしているが、どういうことだ。
「鈴音。あなたが王様になるのが一番なのよ。でも、選挙はやるっていう話は昨日の夜したわよね」
「えっ、うん。でも、あれって健星も納得してるわけ?」
「納得も何も、それが最も適当な落としどころというだけだ。あの気まぐれの王がいきなり引退すると言いだし、次は選挙だと言った理由はこれだったんだよ。お前も俺も嵌められたんだ。王とそこにいる紅葉にな」
「えっ?」
嵌められた。どういうこと。鈴音は健星の不機嫌な顔を見、次に紅葉の妖艶な笑顔を見る。
「嵌めたというのは人聞きが悪いですわ。ただ、今の人間社会に詳しい人が王にならないことには、トラブルは増え続ける。そう判断しての主上の引退ですし、私は傍近くにお仕えする者として、アドバイスしただけです」
しれっと紅葉は言うが、要するに計画した側ってことだ。鈴音はどうしてと紅葉を睨む。
「まあ、それこそお前が二十歳になったら発動する予定だった計画なんだろうよ。しかし、急ぐ理由が出来たってことだろうな。刑事として妖怪がらみの事件が多発していることを知る俺が、確実に出馬するのも解っていただろうし」
はんっと、健星は面白くなさそうに鼻を鳴らした。本当にエリートなのかと聞きたくなる態度の悪さだ。
「ん? ということは、妖怪が人間に悪さをしているってこと?」
しかし、今の話で解ったことがある。人間に対して悪さをする妖怪の増加。これが原因なのだ。
「まあ、人間どもが悪い部分もあるんだけどな。ともかく、今の王では押さえ込めない事態になってきているのは確かだ。そりゃあ引退を急ぎたくもなるだろう。このままでは過労で倒れるぜ、あの神様」
くくっと笑う健星はどこまでも意地悪だ。この人、性格がねじ曲がりすぎだと思う。
「ともかく、人間と妖怪のどちらも知る人たちに穏便に政権を譲りたい。そう主上が仰られたのよ。でも、王の座に人間、つまり小野殿ね、がなると反対勢力が大きくなるのは目に見えていたのよ。そこで必要な存在が半妖だったの」
紅葉はそこで悔いるように目を伏せる。
鈴音は健星の嫌味に対して一気に捲し立てた。すると健星は面白くなさそうな顔をしていたが
「そいつは気の毒だったな」
と珍しい一言を放った。なに、労ってくれているの。それとも馬鹿にしてるの。鈴音は困惑してしまう。
「そうね。怒濤の展開だったわね」
鈴音の髪のセットをしていた紅葉も、仕方ないわねえとくすくすと笑っている。
「解った。解りやすく説明してやろう。まったく、こいつが王になるかと思うと今から気が重いぜ」
健星はぶつぶつ文句を言いながらも鈴音の前にどかっと座る。
「あら、小野殿はどうせ宰相の座に納まるつもりでしょ。だったら予行演習よ」
そんな健星に紅葉は気になる一言を言う。それに健星は舌打ちしているが、どういうことだ。
「鈴音。あなたが王様になるのが一番なのよ。でも、選挙はやるっていう話は昨日の夜したわよね」
「えっ、うん。でも、あれって健星も納得してるわけ?」
「納得も何も、それが最も適当な落としどころというだけだ。あの気まぐれの王がいきなり引退すると言いだし、次は選挙だと言った理由はこれだったんだよ。お前も俺も嵌められたんだ。王とそこにいる紅葉にな」
「えっ?」
嵌められた。どういうこと。鈴音は健星の不機嫌な顔を見、次に紅葉の妖艶な笑顔を見る。
「嵌めたというのは人聞きが悪いですわ。ただ、今の人間社会に詳しい人が王にならないことには、トラブルは増え続ける。そう判断しての主上の引退ですし、私は傍近くにお仕えする者として、アドバイスしただけです」
しれっと紅葉は言うが、要するに計画した側ってことだ。鈴音はどうしてと紅葉を睨む。
「まあ、それこそお前が二十歳になったら発動する予定だった計画なんだろうよ。しかし、急ぐ理由が出来たってことだろうな。刑事として妖怪がらみの事件が多発していることを知る俺が、確実に出馬するのも解っていただろうし」
はんっと、健星は面白くなさそうに鼻を鳴らした。本当にエリートなのかと聞きたくなる態度の悪さだ。
「ん? ということは、妖怪が人間に悪さをしているってこと?」
しかし、今の話で解ったことがある。人間に対して悪さをする妖怪の増加。これが原因なのだ。
「まあ、人間どもが悪い部分もあるんだけどな。ともかく、今の王では押さえ込めない事態になってきているのは確かだ。そりゃあ引退を急ぎたくもなるだろう。このままでは過労で倒れるぜ、あの神様」
くくっと笑う健星はどこまでも意地悪だ。この人、性格がねじ曲がりすぎだと思う。
「ともかく、人間と妖怪のどちらも知る人たちに穏便に政権を譲りたい。そう主上が仰られたのよ。でも、王の座に人間、つまり小野殿ね、がなると反対勢力が大きくなるのは目に見えていたのよ。そこで必要な存在が半妖だったの」
紅葉はそこで悔いるように目を伏せる。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる