22 / 72
第22話 母との再会
しおりを挟む
目を覚まして、どこにいるのか解らなかった。見慣れない天井がそこにある。その天井は高く光っているはずの部屋の電気はない。
「あれ、私」
起き上がろうとして身体に力が入らないことに気づく。鈴音は風邪を引いたみたいと寝返りを打った。
「ん?」
そこでようやく、ここが冥界であることに気づいた。間仕切りとして置かれた几帳。こんなの、平安時代を模した冥界にしかないはずだ。
「うそっ、あれ、私どうして」
混乱するも、熱があるのか身体が動かない。ううん。解らないなあ。確か健星の部屋にいて、鬼を待ち構えて――
「っつ」
徐々にはっきりと思い出し、鈴音は息を飲む。そうだ、ユキの顔を見てショックだったのだ。半分人間半分妖怪。あの顔を自分は見たことがある。それも幼い頃、自分の顔がそうなったのだ。
「私、やっぱり狐なんだ」
半妖だなんて信じられなかった。泰章が否定しなかったことで受け入れていたが、心の中では人間だと思っていた。それだけに、小さい頃にそんな顔だった記憶が蘇り、ショックが大きい。
「はあ」
「目が覚めた?」
大きく溜め息をしたら声を掛けられ、鈴音はびくっとしてしまう。女性の声だから右近だろうか。
「は、はい」
一応返事をしなきゃと声を出すと、几帳がずらされて女房装束の美しい女性が入ってきた。右近の比じゃない。まさに絶世の美女。同性でも思わず顔が赤くなるなんてものじゃない、見つめたまま固まってしまうレベルの美女がいた。
「久しぶりね。といっても、あなたは覚えていないかしら」
「え?」
しかし、几帳越しではないその声は聞き覚えがあった。こんな絶世の美女なんて知らないはずなのに、声は知っている。
「まさか、お母さん」
「ええ」
「・・・・・・」
感動の再会とはほど遠く、鈴音は完全にフリーズしてしまった。
ええっ、こんな美女がお母さん?
驚きすぎて目と口があんぐり開ききってしまう。
「あらあら。そんな顔は駄目よ。それより身体は大丈夫? いきなり封印が解けたものだから、相当負担があったはずよ」
紅葉はそう言って優しく額を撫でてくれた。その手の感触は間違いなく母のもので、泣きそうになる。
「し、しんどい」
だから素直に辛いと訴えることが出来た。
「ユキ、薬湯を用意して」
「畏まりました」
傍にはユキもいたらしい。さっと立ち上がってどこかに行く気配だけがある。
「あの、封印って」
「覚えてないのね。仕方ないわ。大丈夫、ゆっくり説明してあげるから」
「あ、うん」
にこにこと微笑む母の顔に安心するが、鈴音は同時に不安にもなる。冥界で再会できるだろうことは解っていたが、あの時はすぐに来てくれなかった母が今はいる意味は何だろう。
「現世での事件は小野殿がしっかり片を付けてくれているわ」
そんな不安な顔を見て、紅葉はわざと話題を逸らした。鈴音はこくりと頷く。
「適当な人に殺人の罪を擦り付けるってやつよね」
「ふふっ。相変わらず口の悪い子なのねえ。大丈夫よ。どうしようもない、救いのない人間が選ばれるだけ」
「そ、そうなんだ」
とはいえ、それでも殺人の罪を追加していい理由にはならない気がするけど。鈴音が首を傾げていると、美少年に戻ったユキが薬湯を運んで来てくれた。その顔に鈴音はほっとしてしまう。
「あれ、私」
起き上がろうとして身体に力が入らないことに気づく。鈴音は風邪を引いたみたいと寝返りを打った。
「ん?」
そこでようやく、ここが冥界であることに気づいた。間仕切りとして置かれた几帳。こんなの、平安時代を模した冥界にしかないはずだ。
「うそっ、あれ、私どうして」
混乱するも、熱があるのか身体が動かない。ううん。解らないなあ。確か健星の部屋にいて、鬼を待ち構えて――
「っつ」
徐々にはっきりと思い出し、鈴音は息を飲む。そうだ、ユキの顔を見てショックだったのだ。半分人間半分妖怪。あの顔を自分は見たことがある。それも幼い頃、自分の顔がそうなったのだ。
「私、やっぱり狐なんだ」
半妖だなんて信じられなかった。泰章が否定しなかったことで受け入れていたが、心の中では人間だと思っていた。それだけに、小さい頃にそんな顔だった記憶が蘇り、ショックが大きい。
「はあ」
「目が覚めた?」
大きく溜め息をしたら声を掛けられ、鈴音はびくっとしてしまう。女性の声だから右近だろうか。
「は、はい」
一応返事をしなきゃと声を出すと、几帳がずらされて女房装束の美しい女性が入ってきた。右近の比じゃない。まさに絶世の美女。同性でも思わず顔が赤くなるなんてものじゃない、見つめたまま固まってしまうレベルの美女がいた。
「久しぶりね。といっても、あなたは覚えていないかしら」
「え?」
しかし、几帳越しではないその声は聞き覚えがあった。こんな絶世の美女なんて知らないはずなのに、声は知っている。
「まさか、お母さん」
「ええ」
「・・・・・・」
感動の再会とはほど遠く、鈴音は完全にフリーズしてしまった。
ええっ、こんな美女がお母さん?
驚きすぎて目と口があんぐり開ききってしまう。
「あらあら。そんな顔は駄目よ。それより身体は大丈夫? いきなり封印が解けたものだから、相当負担があったはずよ」
紅葉はそう言って優しく額を撫でてくれた。その手の感触は間違いなく母のもので、泣きそうになる。
「し、しんどい」
だから素直に辛いと訴えることが出来た。
「ユキ、薬湯を用意して」
「畏まりました」
傍にはユキもいたらしい。さっと立ち上がってどこかに行く気配だけがある。
「あの、封印って」
「覚えてないのね。仕方ないわ。大丈夫、ゆっくり説明してあげるから」
「あ、うん」
にこにこと微笑む母の顔に安心するが、鈴音は同時に不安にもなる。冥界で再会できるだろうことは解っていたが、あの時はすぐに来てくれなかった母が今はいる意味は何だろう。
「現世での事件は小野殿がしっかり片を付けてくれているわ」
そんな不安な顔を見て、紅葉はわざと話題を逸らした。鈴音はこくりと頷く。
「適当な人に殺人の罪を擦り付けるってやつよね」
「ふふっ。相変わらず口の悪い子なのねえ。大丈夫よ。どうしようもない、救いのない人間が選ばれるだけ」
「そ、そうなんだ」
とはいえ、それでも殺人の罪を追加していい理由にはならない気がするけど。鈴音が首を傾げていると、美少年に戻ったユキが薬湯を運んで来てくれた。その顔に鈴音はほっとしてしまう。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】冥界のイケメンたちとお仕事することにすることになりました。
キツナ月。
キャラ文芸
☆キャラ文芸大賞 エントリー☆
現世で就活に失敗した女子大生が冥界に就職!?
上司は平安時代に実在した歴史上の人物、小野篁(おののたかむら)。
冥界にて七日ごとに亡者を裁く「十王」の他、冥界の皆さんを全員クセのあるイケメンにしてみました。
今回は少しずつの登場ですが、いずれシリーズ化して個性豊かな冥界のイケメンたちを描いていけたらいいなと思っています!
十王の中には閻魔さまもいますよ〜♫
♡十王の皆さま♡
罰当たりでごめんなさい。
地獄に落とさないでください。
※読者の皆さま※
ご覧いただいてありがとうございます。
このお話はフィクションです。
死んだらどうなるかは誰にも分かりません。
死後の世界は、本作みたいに楽しくはないはず。
絶対に足を踏み入れないでください……!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。
円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。
魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。
洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。
身動きもとれず、記憶も無い。
ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。
亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。
そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。
※この作品は「小説家になろう」からの転載です。
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる