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第14話 とんでもない奴だ
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「ええっと、ここは」
「俺の家だ」
「ええっ!?」
荒い運転の末に着いた場所はマンションの一室だった。健星はさらっと自分の家だと言うが、どう見ても高級マンションのその一室に鈴音は驚いてしまう。
「何階建てなんでしょう」
ユキも興味津々でベランダから外を覗いている。
「二十五階建ての十二階だ」
エレベータを見ていなかったのかと健星は言うが、あなたの言動に振り回されてそれどころじゃなかったですと、ユキも鈴音も思う。しかもさらっと自宅に連れて来るってどういうこと。
「なんでここなんですか?」
まさかこのままここに監禁するとか言わないよね。鈴音は思わず警戒するが、ほらと缶ジュースを渡されてしまう。健星はしっかりビールを飲んでいた。
「仕事中じゃないんですか?」
「問題ない。それに、事件は俺が偽装するんだ。別に現在進行形の捜査なんてどうでもいい」
さらっと言い切るこの人は本当になんなの。鈴音は呆れてしまう。
「さすがは篁の子孫。適当なところまで遺伝しておりますな」
ユキもその姿に思うところがあるらしく、ぼそっと呟いている。
「それよりそこのソファに座れ。これからどうするか言うぞ」
しかし、健星はマイペースにそう言い、自分はさっさと一人掛けのソファに座った。仕方なく、鈴音とユキは並んでその前の二人掛けソファに座る。
「作戦があるんですね」
「ああ。ここで待ち構える。事件の構造を単純化するためだ」
「え?」
「いいか。お前にはこれから俺の姪という役割を振る」
「め、姪?」
「あくまで役割だ。横の狐、いちいち睨むな」
「ぐっ」
お前なんかと血縁関係にないと怒鳴りたかったユキだが、先を制されてしまい唸る。
「追ってくる鬼どもは、俺たちを狙っていたストーカーということにするぞ」
「そ、そんなこと出来るんですか」
「出来る。ついでに鬼は適当な人間に封じ込めて、そのまま殺人事件の犯人として渡す」
「む、無実の人を犯人にするんですか?」
次々に出てくるとんでもない言葉に、鈴音は目を白黒とさせた。総てが刑事の発言とは思えない。
「アホか。無実じゃない奴に罪をもう一個くっつけるだけだ。俺がなぜわざわざ警部補なんて地位にいると思ってるんだよ」
「はあ」
そう言われても、警察で偉い方だろうということしか解らない。鈴音が正直に告げると、健星はふんっと鼻で笑ってくれる。どこまでも小馬鹿にしてくる人だ。
「お前なあ」
その態度にユキはキレそうになったが、鈴音はどうどうと押える。
「ヒントだ。若いのに警部補。普通ならばまだ巡査か巡査部長なのにそれより上」
そんな鈴音の態度を評価したのか、健星がヒントを出してくる。それに鈴音は出世しているってことよねと頷く。そして、東大出身だということを思い出した。
「まさか、キャリア組ってやつですか」
「正解。つまり、俺には上とのコネクションがあるんだ。だから妖怪事件の責任を代わりに負わせる奴を探し出すなんて簡単だ。何事も権力を握って初めて出来る」
「・・・・・・」
清々しいくらいに言い切ってくれる健星に、鈴音は呆れるしかない。でも、妖怪を嫌う健星が玉座を狙う理由が、今の発言で解った。この人には何か理想があるんだ。そのための手段として王になろうとしている。
「やっぱり戦国武将みたいよね」
しかし、それが解ると第一印象が補強されてしまうのだった。
「俺の家だ」
「ええっ!?」
荒い運転の末に着いた場所はマンションの一室だった。健星はさらっと自分の家だと言うが、どう見ても高級マンションのその一室に鈴音は驚いてしまう。
「何階建てなんでしょう」
ユキも興味津々でベランダから外を覗いている。
「二十五階建ての十二階だ」
エレベータを見ていなかったのかと健星は言うが、あなたの言動に振り回されてそれどころじゃなかったですと、ユキも鈴音も思う。しかもさらっと自宅に連れて来るってどういうこと。
「なんでここなんですか?」
まさかこのままここに監禁するとか言わないよね。鈴音は思わず警戒するが、ほらと缶ジュースを渡されてしまう。健星はしっかりビールを飲んでいた。
「仕事中じゃないんですか?」
「問題ない。それに、事件は俺が偽装するんだ。別に現在進行形の捜査なんてどうでもいい」
さらっと言い切るこの人は本当になんなの。鈴音は呆れてしまう。
「さすがは篁の子孫。適当なところまで遺伝しておりますな」
ユキもその姿に思うところがあるらしく、ぼそっと呟いている。
「それよりそこのソファに座れ。これからどうするか言うぞ」
しかし、健星はマイペースにそう言い、自分はさっさと一人掛けのソファに座った。仕方なく、鈴音とユキは並んでその前の二人掛けソファに座る。
「作戦があるんですね」
「ああ。ここで待ち構える。事件の構造を単純化するためだ」
「え?」
「いいか。お前にはこれから俺の姪という役割を振る」
「め、姪?」
「あくまで役割だ。横の狐、いちいち睨むな」
「ぐっ」
お前なんかと血縁関係にないと怒鳴りたかったユキだが、先を制されてしまい唸る。
「追ってくる鬼どもは、俺たちを狙っていたストーカーということにするぞ」
「そ、そんなこと出来るんですか」
「出来る。ついでに鬼は適当な人間に封じ込めて、そのまま殺人事件の犯人として渡す」
「む、無実の人を犯人にするんですか?」
次々に出てくるとんでもない言葉に、鈴音は目を白黒とさせた。総てが刑事の発言とは思えない。
「アホか。無実じゃない奴に罪をもう一個くっつけるだけだ。俺がなぜわざわざ警部補なんて地位にいると思ってるんだよ」
「はあ」
そう言われても、警察で偉い方だろうということしか解らない。鈴音が正直に告げると、健星はふんっと鼻で笑ってくれる。どこまでも小馬鹿にしてくる人だ。
「お前なあ」
その態度にユキはキレそうになったが、鈴音はどうどうと押える。
「ヒントだ。若いのに警部補。普通ならばまだ巡査か巡査部長なのにそれより上」
そんな鈴音の態度を評価したのか、健星がヒントを出してくる。それに鈴音は出世しているってことよねと頷く。そして、東大出身だということを思い出した。
「まさか、キャリア組ってやつですか」
「正解。つまり、俺には上とのコネクションがあるんだ。だから妖怪事件の責任を代わりに負わせる奴を探し出すなんて簡単だ。何事も権力を握って初めて出来る」
「・・・・・・」
清々しいくらいに言い切ってくれる健星に、鈴音は呆れるしかない。でも、妖怪を嫌う健星が玉座を狙う理由が、今の発言で解った。この人には何か理想があるんだ。そのための手段として王になろうとしている。
「やっぱり戦国武将みたいよね」
しかし、それが解ると第一印象が補強されてしまうのだった。
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