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第9話 まだまだ秘密が
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「ともかく、現状を把握するのが大事ってことね。ああもう、私って本当に半妖なんだ」
バタバタした気持ちが落ち着くと、その事実がずうんっと鈴音の胸にのし掛かった。
混血児。
健星はそう呼んだが、あの生真面目がスーツを着ているような、公務員の父が九尾狐を嫁にしていた事実は未だにもやっとしてしまう。一体どうやって出会ったというのだ。それに、恋に落ちたのか。それが不思議だ。今の今まで両親はお見合い結婚したのだと勝手に考えていたのに。
「お父さんと話がしたいんだけど」
「それはもちろんでございましょう。でも、夜は現世に向かうのは危険です。妖怪たちの活動時間でございますから」
「お父さんにこっちに来てもらうとかは?」
「それは無理でございます。鈴音様のお父上、安倍泰章様は単なる人の子。健星のように冥界生まれならばまだしも、ここの空気は人間には毒でございます。死んでしまいます」
「そ、そうなのっ」
びっくり事実に鈴音は思わず心臓に手を当ててしまう。うん、今のところ異常なし。って、自分の半分は妖怪なのか。
「鈴音様は大丈夫ですよ。最上位の妖怪であらせられる九尾狐の血を引いておられますもの」
ユキはえっへんと自分のことのように威張る。どうやら九尾狐とは狐の中でも特殊らしい。しかも最上位か。ってもう、聞けば聞くほど凄すぎで驚くことしか出来ない。
「でも、小野篁って人は地獄で働いていたのよね」
「まあ、野狂ですからね。その身に流れる血が人間でありながら違うものだったのでしょう。たまに人間の中にもおります。賀茂保憲しかり安倍晴明しかり」
「あっ、安倍晴明は聞いたことがある。陰陽師でしょ。漫画で見て、同じ名字だから親近感を覚えたのよね」
鈴音がくすっと笑うと、ユキが唖然とした顔をしていた。それに、どうしたのと鈴音は首を傾げる。
「あの、親近感もなにも、鈴音様はその晴明の末裔でございますよ」
「またまた。九尾狐だけでお腹いっぱいよ」
「いえいえ。嘘ではございません。大体、その晴明自身、狐の子だと言われているじゃありませんか。父上と紅葉様が惹かれ合っても当然でございますよ」
「・・・・・・マジで」
ちょっと止めてくれないと、鈴音は額を押える。まだ自分に秘密があるというのか。もう一杯一杯なんですけど。っていうか、十七才になっていきなりそんな出生の秘密を知ることになるなんて。
「とは申しましても、鈴音様は傍流の血筋になってしまいますが。本家は今や土御門と名乗っているはずですので」
「へ、へえ」
もう、色々と一杯です。そう思ってくたっと身体の力を抜くと、ぐうううっと盛大にお腹が鳴った。
「ああ、もう夕餉の時間でございますね。すぐに屋敷の者に用意させます」
ユキはぽんっと人間姿になると、バタバタとどこかに走って行きながら
「おひいさまの食事の用意を。それと、左近、右近。どこにおる。早く支度をなさい」
と叫んだのだった。
バタバタした気持ちが落ち着くと、その事実がずうんっと鈴音の胸にのし掛かった。
混血児。
健星はそう呼んだが、あの生真面目がスーツを着ているような、公務員の父が九尾狐を嫁にしていた事実は未だにもやっとしてしまう。一体どうやって出会ったというのだ。それに、恋に落ちたのか。それが不思議だ。今の今まで両親はお見合い結婚したのだと勝手に考えていたのに。
「お父さんと話がしたいんだけど」
「それはもちろんでございましょう。でも、夜は現世に向かうのは危険です。妖怪たちの活動時間でございますから」
「お父さんにこっちに来てもらうとかは?」
「それは無理でございます。鈴音様のお父上、安倍泰章様は単なる人の子。健星のように冥界生まれならばまだしも、ここの空気は人間には毒でございます。死んでしまいます」
「そ、そうなのっ」
びっくり事実に鈴音は思わず心臓に手を当ててしまう。うん、今のところ異常なし。って、自分の半分は妖怪なのか。
「鈴音様は大丈夫ですよ。最上位の妖怪であらせられる九尾狐の血を引いておられますもの」
ユキはえっへんと自分のことのように威張る。どうやら九尾狐とは狐の中でも特殊らしい。しかも最上位か。ってもう、聞けば聞くほど凄すぎで驚くことしか出来ない。
「でも、小野篁って人は地獄で働いていたのよね」
「まあ、野狂ですからね。その身に流れる血が人間でありながら違うものだったのでしょう。たまに人間の中にもおります。賀茂保憲しかり安倍晴明しかり」
「あっ、安倍晴明は聞いたことがある。陰陽師でしょ。漫画で見て、同じ名字だから親近感を覚えたのよね」
鈴音がくすっと笑うと、ユキが唖然とした顔をしていた。それに、どうしたのと鈴音は首を傾げる。
「あの、親近感もなにも、鈴音様はその晴明の末裔でございますよ」
「またまた。九尾狐だけでお腹いっぱいよ」
「いえいえ。嘘ではございません。大体、その晴明自身、狐の子だと言われているじゃありませんか。父上と紅葉様が惹かれ合っても当然でございますよ」
「・・・・・・マジで」
ちょっと止めてくれないと、鈴音は額を押える。まだ自分に秘密があるというのか。もう一杯一杯なんですけど。っていうか、十七才になっていきなりそんな出生の秘密を知ることになるなんて。
「とは申しましても、鈴音様は傍流の血筋になってしまいますが。本家は今や土御門と名乗っているはずですので」
「へ、へえ」
もう、色々と一杯です。そう思ってくたっと身体の力を抜くと、ぐうううっと盛大にお腹が鳴った。
「ああ、もう夕餉の時間でございますね。すぐに屋敷の者に用意させます」
ユキはぽんっと人間姿になると、バタバタとどこかに走って行きながら
「おひいさまの食事の用意を。それと、左近、右近。どこにおる。早く支度をなさい」
と叫んだのだった。
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