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第3話 静嵐
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「ああ、ごめんごめん。混乱させるか。実はね。毎日のように図書館を利用している美少女がいるって、その知り合いが気にしているものだからさ」
「び、美少女!? わ、私ですか? 勘違いでしょう」
全然綺麗でも美しくもないし、それに少女という表現には違和感がと、色々と思う愛佳だ。それに、寺本は苦笑する。
「今時の子には珍しい、奥ゆかしさだねえ。そうか。それで静嵐も気になったのか」
「せいらん?」
聞いたことのない、多分誰かの名前だろうということしか解らない単語に、愛佳はさらに困惑する。
「ああ。その情報をくれた子ね。彼もまあ奥手というか、色々と気にするタイプというか、見かけるけど声を掛けていいのかなって思っているというか」
寺本は先ほどまでの明快さとは異なる、何だか奥歯に物が挟まったようなことを言う。
「あの」
「まあ、気が向いたら、声を掛けてみてよ。それを言いに来ただけなんだ。静嵐も、こんなおじさんばかりを相手にしているより、可愛い子と話した方が楽しいだろうからね」
「えっと」
まだまだ話が見えないままだ。しかし、静嵐に該当する人が一人しか思い浮かばないのも事実。
「あの人、史学科の人なんですか?」
一先ず、その疑問から口にしていた。毒物の本にマルクス経済学の本。他にも宮沢賢治を読んでいたり司馬遼太郎を読んでいたりと、乱読している彼は、何学部の人なのか。
「ううん。一応はそうかな。扱いとしては」
「え?」
「ま、その辺は本人が話す気になってからってところかな。悪い子じゃないし、変な下心があるわけでもないんだよ。ただね。最近は図書館を利用する子って減ってるだろ。だから気になったんだと思う。君も、気になっているんだよね?」
「ま、まあ」
そう指摘されて、顔が赤くなるのを自覚する。向こうは何とも思っていないし、たまたま近くの席に座ってくる学生としか思っていないだろうと考えていたのに、気にしていたのかと、いまさら気付いたせいだ。恥ずかしい。絶対に自分を気にしている変な女子と思われているに違いない。
「大概の本は読んでいるからさ。話題には困らないと思うよ。たまに、話し掛けてあげて」
「え、はい」
そう言われて図書館へと送り出されると、絶対に今日、話し掛けなくてはならないではないか。愛佳は困ったなと思いつつも、いつも通りに青年の姿を探す。
「あれ、ちょっと待って。静嵐ってどう考えても下の名前よね。上は? 名字は?」
しかし、肝心の第一声を考えた時、名字を知らない事実に気付いて愕然とした。いくら向こうも顔を覚えている、そして何故か名前も知っているらしいが、とはいえ、いきなり下の名前を呼ぶのは躊躇われる。
「び、美少女!? わ、私ですか? 勘違いでしょう」
全然綺麗でも美しくもないし、それに少女という表現には違和感がと、色々と思う愛佳だ。それに、寺本は苦笑する。
「今時の子には珍しい、奥ゆかしさだねえ。そうか。それで静嵐も気になったのか」
「せいらん?」
聞いたことのない、多分誰かの名前だろうということしか解らない単語に、愛佳はさらに困惑する。
「ああ。その情報をくれた子ね。彼もまあ奥手というか、色々と気にするタイプというか、見かけるけど声を掛けていいのかなって思っているというか」
寺本は先ほどまでの明快さとは異なる、何だか奥歯に物が挟まったようなことを言う。
「あの」
「まあ、気が向いたら、声を掛けてみてよ。それを言いに来ただけなんだ。静嵐も、こんなおじさんばかりを相手にしているより、可愛い子と話した方が楽しいだろうからね」
「えっと」
まだまだ話が見えないままだ。しかし、静嵐に該当する人が一人しか思い浮かばないのも事実。
「あの人、史学科の人なんですか?」
一先ず、その疑問から口にしていた。毒物の本にマルクス経済学の本。他にも宮沢賢治を読んでいたり司馬遼太郎を読んでいたりと、乱読している彼は、何学部の人なのか。
「ううん。一応はそうかな。扱いとしては」
「え?」
「ま、その辺は本人が話す気になってからってところかな。悪い子じゃないし、変な下心があるわけでもないんだよ。ただね。最近は図書館を利用する子って減ってるだろ。だから気になったんだと思う。君も、気になっているんだよね?」
「ま、まあ」
そう指摘されて、顔が赤くなるのを自覚する。向こうは何とも思っていないし、たまたま近くの席に座ってくる学生としか思っていないだろうと考えていたのに、気にしていたのかと、いまさら気付いたせいだ。恥ずかしい。絶対に自分を気にしている変な女子と思われているに違いない。
「大概の本は読んでいるからさ。話題には困らないと思うよ。たまに、話し掛けてあげて」
「え、はい」
そう言われて図書館へと送り出されると、絶対に今日、話し掛けなくてはならないではないか。愛佳は困ったなと思いつつも、いつも通りに青年の姿を探す。
「あれ、ちょっと待って。静嵐ってどう考えても下の名前よね。上は? 名字は?」
しかし、肝心の第一声を考えた時、名字を知らない事実に気付いて愕然とした。いくら向こうも顔を覚えている、そして何故か名前も知っているらしいが、とはいえ、いきなり下の名前を呼ぶのは躊躇われる。
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