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第5話 試してください
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「よ、よろしくお願いします。予約した宮脇です」
琴実はもうすっかり亮翔のイケメンっぷりにやられていて、顔を赤らめながら頭を下げた。
その姿をがっくんが見たらショックを受けると思うよ。そのくらい解りやすい態度だ。
「宮脇さんですね。そして、お連れの中森さん。どうぞこちらに。先ずは一服どうぞ」
亮翔は座布団を勧め、二人はそこに正座することになる。しかし、慣れていないから、すぐにもぞもぞと動いてしまった。
「ああ。どうぞ足は崩してください。緊張したままでは話したいことも話せませんから」
「は、はい」
二人はお言葉に甘えて、足を崩して楽な姿勢になった。とはいえ、パンツスタイルの琴実は足を動かしやすいが、千鶴はスカートだから難しい。結局はどこか堅苦しいままだ。
「どうぞ。粗茶ですが。お茶請けもありますよ」
「ありがとうございます」
「いえいえ。このお代が三百円に含まれていますから」
「あっ、そうか」
「三百円?」
千鶴が首を傾げていると、相談料として三百円をお納めくださいと書かれていたのだという。琴実は無理矢理誘ったから千鶴の分の三百円も出すよと男前だった。
「ああ、そうなんだ。まあ、そうだよね」
無料でここまでしてくれるわけないかと千鶴は納得する。
しかも三百円って良心的な値段だ。それでお茶とお菓子までついて来るならば、お得感もある。
お菓子は四国のお菓子の代名詞、一六タルトだった。頬張ると柚子の香りが口に広がり美味しい。お茶もちゃんとお抹茶でいい香りのするものだった。
「さて、宮脇さんのご相談をお伺いしましょうか」
二人がお菓子とお茶でほっとしたのを見計らい、亮翔が二人の前に座った。手には数珠と小さな扇子があり、本格的な感じがする。
にっこりと微笑まれると、琴実はほうっと息を吐き出した。そして最近彼氏の様子がおかしいと説明する。
「ふうむ。彼女である琴実さんの好みとは全く違う小物や服をよく見ておられると。しかし、他にお付き合いしている女性の影はなさそうだというわけですね」
「はい」
女子高生の恋愛相談なんてバカバカしいと思われるかと考えていたが、亮翔は真剣に頷きながら聞いてくれる。それに琴実も安心したようで、何故でしょうと困り顔を浮かべた。
「ふうむ。因みにその高梨君にお姉さんか妹さんはいらっしゃいますか」
「いいえ。一人っ子です。だから、身内にプレゼントするにしても、お母さんくらいだと思うんです」
「なるほど。そして、ちりめんの手鏡は高梨君の部屋にあったと」
「はい」
琴実が頷くと、亮翔はどうしたものかと考えるように顎を撫でた。じゃらりと手に持っていた数珠が音を立てる。しかしそれもすぐで、閃いたという顔をした。
「一つ、試していただけますか。ただし、高梨君がどんな反応をしても、いつも通りに受け入れてあげる。それが条件ですけど」
「えっ」
悪戯を思いついたかのような笑顔で亮翔がそう言うので、千鶴は大丈夫かと顔を顰める。すると亮翔がこちらを見た。
「ああ。彼女にそのままの姿を見せるとは限らないですね。中森さん、あなたも高梨君を知っていますよね」
「は、はい」
琴実にやらせようとしていたことを、どうやら千鶴にやらせるつもりらしい。千鶴は最大限に警戒しつつも頷いた。
この坊主は二面性がある。危険なことだったら自分が代わりにやるのはいいが、琴実のこともがっくんのことも守らなきゃいけない。
「いい目をされていますね。そんなあなたなら大丈夫でしょう」
しかし、そんな警戒をどう解釈したのか、亮翔はそんなことを言う。それに合わせて琴実も
「お願い、協力して」
と頼んできたから、ますます何を言われても断れなくなってしまった。これは腹を括るしかないらしい。
「解りました。何をすればいいんですか?」
千鶴はぎっと亮翔に挑むかのように問い掛けていた。
「どうして解ったんですか?」
数日後、亮翔からの依頼を実行した千鶴は、琴実とがっくんがやって来る前に亮翔に問い質していた。
今日ここに三人で集まって亮翔に報告する予定だったが、どうにも納得できない。というわけで、ご近所特権で先に乗り込んだのだ。丁度よく、亮翔は作務衣姿で箒を片手に境内の掃除をしていたので、千鶴は突進してしまった。
「どうしてって、高梨君の行動はヒントの塊だったじゃないですか」
しかし、問い詰められた亮翔はしれっとそんなことを言う。
いやいや、全く解らないから琴実は二人分のお代、六百円を払ってまで相談したのだ。どうしてさらっと解ったと言えるのか。
「で、その様子だと見立て通りだったわけですね。高梨君はあなたと楽しくお買い物をし、女子トークに花を咲かせたと」
「は、はい」
千鶴は頷いた。
そう、亮翔に頼まれたのは今度の休日にがっくんと買い物に行くこと。それも女子が好むお店を回ることだった。そしてカフェでお喋り。そのお誘いをする際に
「琴実から聞いて、あなたのこと解ってるから安心して。目一杯可愛いお店を巡ろうね」
と言い添えることと言われていた。学校で琴実が遠くからこっそり見守る中、そうお誘いしたわけだが、がっくんは当然ながらびっくりしていた。しかし、すぐにとても嬉しそうに笑顔になると
「ありがとう。なんだ、やっぱり琴実、気づいてたんだ。ずっと言えなくて、困っていたんだよね」
とはにかんだように言ったのだった。
琴実はもうすっかり亮翔のイケメンっぷりにやられていて、顔を赤らめながら頭を下げた。
その姿をがっくんが見たらショックを受けると思うよ。そのくらい解りやすい態度だ。
「宮脇さんですね。そして、お連れの中森さん。どうぞこちらに。先ずは一服どうぞ」
亮翔は座布団を勧め、二人はそこに正座することになる。しかし、慣れていないから、すぐにもぞもぞと動いてしまった。
「ああ。どうぞ足は崩してください。緊張したままでは話したいことも話せませんから」
「は、はい」
二人はお言葉に甘えて、足を崩して楽な姿勢になった。とはいえ、パンツスタイルの琴実は足を動かしやすいが、千鶴はスカートだから難しい。結局はどこか堅苦しいままだ。
「どうぞ。粗茶ですが。お茶請けもありますよ」
「ありがとうございます」
「いえいえ。このお代が三百円に含まれていますから」
「あっ、そうか」
「三百円?」
千鶴が首を傾げていると、相談料として三百円をお納めくださいと書かれていたのだという。琴実は無理矢理誘ったから千鶴の分の三百円も出すよと男前だった。
「ああ、そうなんだ。まあ、そうだよね」
無料でここまでしてくれるわけないかと千鶴は納得する。
しかも三百円って良心的な値段だ。それでお茶とお菓子までついて来るならば、お得感もある。
お菓子は四国のお菓子の代名詞、一六タルトだった。頬張ると柚子の香りが口に広がり美味しい。お茶もちゃんとお抹茶でいい香りのするものだった。
「さて、宮脇さんのご相談をお伺いしましょうか」
二人がお菓子とお茶でほっとしたのを見計らい、亮翔が二人の前に座った。手には数珠と小さな扇子があり、本格的な感じがする。
にっこりと微笑まれると、琴実はほうっと息を吐き出した。そして最近彼氏の様子がおかしいと説明する。
「ふうむ。彼女である琴実さんの好みとは全く違う小物や服をよく見ておられると。しかし、他にお付き合いしている女性の影はなさそうだというわけですね」
「はい」
女子高生の恋愛相談なんてバカバカしいと思われるかと考えていたが、亮翔は真剣に頷きながら聞いてくれる。それに琴実も安心したようで、何故でしょうと困り顔を浮かべた。
「ふうむ。因みにその高梨君にお姉さんか妹さんはいらっしゃいますか」
「いいえ。一人っ子です。だから、身内にプレゼントするにしても、お母さんくらいだと思うんです」
「なるほど。そして、ちりめんの手鏡は高梨君の部屋にあったと」
「はい」
琴実が頷くと、亮翔はどうしたものかと考えるように顎を撫でた。じゃらりと手に持っていた数珠が音を立てる。しかしそれもすぐで、閃いたという顔をした。
「一つ、試していただけますか。ただし、高梨君がどんな反応をしても、いつも通りに受け入れてあげる。それが条件ですけど」
「えっ」
悪戯を思いついたかのような笑顔で亮翔がそう言うので、千鶴は大丈夫かと顔を顰める。すると亮翔がこちらを見た。
「ああ。彼女にそのままの姿を見せるとは限らないですね。中森さん、あなたも高梨君を知っていますよね」
「は、はい」
琴実にやらせようとしていたことを、どうやら千鶴にやらせるつもりらしい。千鶴は最大限に警戒しつつも頷いた。
この坊主は二面性がある。危険なことだったら自分が代わりにやるのはいいが、琴実のこともがっくんのことも守らなきゃいけない。
「いい目をされていますね。そんなあなたなら大丈夫でしょう」
しかし、そんな警戒をどう解釈したのか、亮翔はそんなことを言う。それに合わせて琴実も
「お願い、協力して」
と頼んできたから、ますます何を言われても断れなくなってしまった。これは腹を括るしかないらしい。
「解りました。何をすればいいんですか?」
千鶴はぎっと亮翔に挑むかのように問い掛けていた。
「どうして解ったんですか?」
数日後、亮翔からの依頼を実行した千鶴は、琴実とがっくんがやって来る前に亮翔に問い質していた。
今日ここに三人で集まって亮翔に報告する予定だったが、どうにも納得できない。というわけで、ご近所特権で先に乗り込んだのだ。丁度よく、亮翔は作務衣姿で箒を片手に境内の掃除をしていたので、千鶴は突進してしまった。
「どうしてって、高梨君の行動はヒントの塊だったじゃないですか」
しかし、問い詰められた亮翔はしれっとそんなことを言う。
いやいや、全く解らないから琴実は二人分のお代、六百円を払ってまで相談したのだ。どうしてさらっと解ったと言えるのか。
「で、その様子だと見立て通りだったわけですね。高梨君はあなたと楽しくお買い物をし、女子トークに花を咲かせたと」
「は、はい」
千鶴は頷いた。
そう、亮翔に頼まれたのは今度の休日にがっくんと買い物に行くこと。それも女子が好むお店を回ることだった。そしてカフェでお喋り。そのお誘いをする際に
「琴実から聞いて、あなたのこと解ってるから安心して。目一杯可愛いお店を巡ろうね」
と言い添えることと言われていた。学校で琴実が遠くからこっそり見守る中、そうお誘いしたわけだが、がっくんは当然ながらびっくりしていた。しかし、すぐにとても嬉しそうに笑顔になると
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