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第21話 ラジコンの音?
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「ああ、それはあるかもな。もしこいつがここに住んでいたら、この時間に物音はしねえわ」
哲太も和臣を見て納得する。朝が苦手なのは昔からだから、その寝起きの悪さは知っているのだ。そんな二人の視線を受ける和臣は憮然としていたが、可能性は否定しなかった。
「そうだ。昼間に買い物に行くんだったら、スーパーに張り込んでいる方がいいよな。ここ、暑いし。車の冷房使ってるとすぐにガソリン食うし」
どうすると、すでに暑くなってきた気温にうんざりして哲太が提案する。確かに炎天下の下にずっといるのは無理だ。今日もカンカン照りの日差しを受けていると、すぐに熱中症になりそうだった。
「ともかく、音を聞いた中島さんに話を聞こうか。それからスーパーに行って、目撃された男が来るかどうか確認しよう。あそこ、喫茶スペースがあったよな。見張るには丁度いいんじゃないか」
「ああ。最近はラーメンとかうどんとか売っていて、イートインスペースとして充実してるぜ」
東京にいる奴には解らんだろうけどなと、和臣の情報をにやにや笑って訂正する哲太だ。それに、和臣はそうなんだと軽く返す。張り合いがないだろうなと、それを横で見ていた悠人は哲太に同情してしまった。しかし、哲太は気にしている様子がない。ひょっとして高校の時もそんな不毛なやり取りをしていたのだろうか。何だか慣れている感じがある。
「ということで、行くか。うどんくらいなら奢ってやるぜ」
哲太は悠人に向けて笑うと、先に軽トラックに戻っていった。悠人も続こうとしたが、和臣が腕を組んでまだ校庭を睨んでいたので、戻ることになった。
「どうかしたんですか」
「いや、どうして草むしりをしないのか。昨日も議論になっていたが、確かに違和感があるなと思って。それに雑草が動く音がしたということは、明らかに利用しているわけだが」
「不便だと思うのに、ってこと」
「そうだ。頻繁に出入りはしていないのか。まだ、草刈りの必要はないと考えているのか。中は綺麗だったから、ずぼらな人物だとは思えないんだよな。草が動く音がしたということは、ここも利用しているはずなのになぜ放置するんだろう」
正体を掴んだと思っていたのになと、和臣は顎を擦って悩む。ひょっとして違うのかと思うも、他に可能性はないと思うのだがと、一人で悩んでいる。
「おおい。もののついでだ。中島さんとこにも寄るんだろ、早くしろよ。それに俺は腹が減ったんだ」
しかし、その思考は哲太の大声で遮られてしまうのだった。
雑草が揺れ動く音を聞いたという中島真子さんの家は、校舎から近い場所にあった。と言っても、車で五分ほど掛かる。間に田んぼが広がっているせいだ。
「校舎で音。ああ、そうそう。てっちゃんに訊かれて思い出したのよね。夕方くらいだったかしら。ぶううんっていう感じの音とがさがさ雑草の中を移動する音がしたの。一体何かしらって気になったんだったわ」
四十代と思われる真子は、頬に手を当てつつ、首を傾げながらそう証言した。どうしておばさんってこういうポーズを取るんだろうと、悠人はそれが不思議だがもちろん訊かない。
「ぶうんっていうのは」
「ラジコンみたいな音よ。それでどこかの子どもが学校に忍び込んでラジコンでも遊んでいるのかしらと覗いたんだけど」
「子どもはいなかったと」
「ええ。それで何なのかしらねと思ったんだけど、その音はすぐに終わったし、まあ聞き間違いかしらって、そこから気にしていなかったのよ」
夕方でそろそろ暗くなりそうだったので、校舎の中を確認することはなかったのだという。まあ、あれだけ雑草が生えていれば、わざわざ中まで確認しようとは思わないだろう。意外とあの雑草、人除けになっている。
「その時、校舎に電気は点いてませんでしたか」
「いいえ」
きっぱりと言われ、三人は顔を見合わせてしまう。そいつは、もうすぐ暗くなろうとする時間に電気も点けずに何かやっていたというのか。ますます怪しくなってくる。しかし、真子が見ていたのは僅かな時間だから、その後で電気を点けたのかもしれない。誰かが来たと思って、咄嗟に隠れてしまったのだろうか。
「あそこ、何かに使うのかしら」
「さあ。それが解らないから調べてるんですよ」
哲太が言うと、じゃあ解ったらよろしくねと真子は笑った。どうやら妙な音を聞いたものの、それほど気にしていない様子だ。危険はないと感じたのだろう。
「気にならないのかなあ」
家の目の前で勝手に何かをやってるかもしれないのにと、悠人は田んぼ越しに見える校舎を見て、首を捻っていた。悠人だったら気になって誰かに相談するというのに。
「出入りしているのが一人で、しかもラジコンの音だと思ったとなれば、悪戯小僧が入り込んだという程度なんだろうな」
中島の反応に対し、和臣は雑な考察をしてくれるのだった。
哲太も和臣を見て納得する。朝が苦手なのは昔からだから、その寝起きの悪さは知っているのだ。そんな二人の視線を受ける和臣は憮然としていたが、可能性は否定しなかった。
「そうだ。昼間に買い物に行くんだったら、スーパーに張り込んでいる方がいいよな。ここ、暑いし。車の冷房使ってるとすぐにガソリン食うし」
どうすると、すでに暑くなってきた気温にうんざりして哲太が提案する。確かに炎天下の下にずっといるのは無理だ。今日もカンカン照りの日差しを受けていると、すぐに熱中症になりそうだった。
「ともかく、音を聞いた中島さんに話を聞こうか。それからスーパーに行って、目撃された男が来るかどうか確認しよう。あそこ、喫茶スペースがあったよな。見張るには丁度いいんじゃないか」
「ああ。最近はラーメンとかうどんとか売っていて、イートインスペースとして充実してるぜ」
東京にいる奴には解らんだろうけどなと、和臣の情報をにやにや笑って訂正する哲太だ。それに、和臣はそうなんだと軽く返す。張り合いがないだろうなと、それを横で見ていた悠人は哲太に同情してしまった。しかし、哲太は気にしている様子がない。ひょっとして高校の時もそんな不毛なやり取りをしていたのだろうか。何だか慣れている感じがある。
「ということで、行くか。うどんくらいなら奢ってやるぜ」
哲太は悠人に向けて笑うと、先に軽トラックに戻っていった。悠人も続こうとしたが、和臣が腕を組んでまだ校庭を睨んでいたので、戻ることになった。
「どうかしたんですか」
「いや、どうして草むしりをしないのか。昨日も議論になっていたが、確かに違和感があるなと思って。それに雑草が動く音がしたということは、明らかに利用しているわけだが」
「不便だと思うのに、ってこと」
「そうだ。頻繁に出入りはしていないのか。まだ、草刈りの必要はないと考えているのか。中は綺麗だったから、ずぼらな人物だとは思えないんだよな。草が動く音がしたということは、ここも利用しているはずなのになぜ放置するんだろう」
正体を掴んだと思っていたのになと、和臣は顎を擦って悩む。ひょっとして違うのかと思うも、他に可能性はないと思うのだがと、一人で悩んでいる。
「おおい。もののついでだ。中島さんとこにも寄るんだろ、早くしろよ。それに俺は腹が減ったんだ」
しかし、その思考は哲太の大声で遮られてしまうのだった。
雑草が揺れ動く音を聞いたという中島真子さんの家は、校舎から近い場所にあった。と言っても、車で五分ほど掛かる。間に田んぼが広がっているせいだ。
「校舎で音。ああ、そうそう。てっちゃんに訊かれて思い出したのよね。夕方くらいだったかしら。ぶううんっていう感じの音とがさがさ雑草の中を移動する音がしたの。一体何かしらって気になったんだったわ」
四十代と思われる真子は、頬に手を当てつつ、首を傾げながらそう証言した。どうしておばさんってこういうポーズを取るんだろうと、悠人はそれが不思議だがもちろん訊かない。
「ぶうんっていうのは」
「ラジコンみたいな音よ。それでどこかの子どもが学校に忍び込んでラジコンでも遊んでいるのかしらと覗いたんだけど」
「子どもはいなかったと」
「ええ。それで何なのかしらねと思ったんだけど、その音はすぐに終わったし、まあ聞き間違いかしらって、そこから気にしていなかったのよ」
夕方でそろそろ暗くなりそうだったので、校舎の中を確認することはなかったのだという。まあ、あれだけ雑草が生えていれば、わざわざ中まで確認しようとは思わないだろう。意外とあの雑草、人除けになっている。
「その時、校舎に電気は点いてませんでしたか」
「いいえ」
きっぱりと言われ、三人は顔を見合わせてしまう。そいつは、もうすぐ暗くなろうとする時間に電気も点けずに何かやっていたというのか。ますます怪しくなってくる。しかし、真子が見ていたのは僅かな時間だから、その後で電気を点けたのかもしれない。誰かが来たと思って、咄嗟に隠れてしまったのだろうか。
「あそこ、何かに使うのかしら」
「さあ。それが解らないから調べてるんですよ」
哲太が言うと、じゃあ解ったらよろしくねと真子は笑った。どうやら妙な音を聞いたものの、それほど気にしていない様子だ。危険はないと感じたのだろう。
「気にならないのかなあ」
家の目の前で勝手に何かをやってるかもしれないのにと、悠人は田んぼ越しに見える校舎を見て、首を捻っていた。悠人だったら気になって誰かに相談するというのに。
「出入りしているのが一人で、しかもラジコンの音だと思ったとなれば、悪戯小僧が入り込んだという程度なんだろうな」
中島の反応に対し、和臣は雑な考察をしてくれるのだった。
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