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第25話 問題が大きすぎる
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続けざまの衝撃から立ち直りきっていない俺だが、貴明たちの調査がどうなったのか気になるので、すぐに会議室へと向かった。
「どうだった?」
「かなりの数がありましたよ」
よろよろと現れた俺に、蛍が元気よく報告してくれる。が、その報告は俺の頭痛をより深刻なものにしてくれる。
「かなりの数」
会議室の机に目を向けると、でんっと積まれた人形の山。ぞわっと気持ち悪いはずのそれを山のように積んでどうすると思うのだが、意外と平気だということに気づく。
「不快感はないな」
「ええ。不思議なんです。一個一個はぞわっとしたはずなのに、ここに持ち帰ると、ぞわっと感が消えました」
「ふむ」
ここが王宮と近いことに関係しているのだろうか。必死に封印を施しているこの場所では、人形に込められた小さな姫神の力ならば、置いているだけで祓えてしまうのかもしれない。
「人形の回収の方が大変だったよ。無理に持って行こうとすると、必死に抵抗するんだから」
ぞわっと感よりも人間の方が怖かったというのは貴明だ。その貴明を見ると、引っ掻かれたらしく頬に傷が出来ていた。髪もぐしゃぐしゃだ。軍服も心なしかよれている。
「姫神への信仰はそれだけ根付きつつあるってことか」
「だね。禁止だって言ったところで、聞く耳持たないんだよ。それどころか、軍の横暴だって、暴動寸前になるし」
「そんな中、よく回収できたな」
「彼女たちが優秀なおかげでね」
貴明は凄かったよと遠い目だ。
横にいる蛍も希鈴も涼しい顔をしている。いや、にこにことしている。
可愛い顔で最強か。
俺の周り、こんな女子しかいないな。
「まあいい。とりあえず、害になりそうな人形が回収だけでも大きい。これに関しては俺が処理しておこう」
「お願いします」
「貴明、王宮まで運んでくれ」
「なんで俺?」
一番疲れているの俺だよ。そう訴えてくる貴明だが
「お前は何も感じないんだろ。すでに姫神の力は弱まっているが、呪力を感知できる奴に運ばせるのはリスクがある。お前がやれ」
他の奴は駄目だときっぱり言ってやった。そもそも、あの姫神教会でも平然としていた奴だ。こいつには呪力が宿っていない。
「げえ」
貴明は不満そうに唇を尖らせたが、仕方ないと人形を段ボール箱に詰め込み始める。俺はそれを横目で見つつ
「どの家に釣り下がっていたか、それもちゃんと調べてくれたか」
二人に詳しい状況を教えてくれと報告を促す。すると、希鈴がチェックしてありますと懐から地図を取り出した。そこに赤ペンで丸印が付けられている。
「特にどこかに偏りがあるというわけではないか」
その地図を覗き込み、人形があった場所は南側全体にまんべんなくある感じだなと気づく。中には貧民街の軒先に吊り下げられていたものもあるようだ。
「あちこちにあってびっくりしました。改めて探してやるぞと思いながら見ると、街のあちこちでぞわってするんです。気持ち悪かったですよ」
蛍はその時のことを思い出し、鳥肌が立ったと二の腕を擦る。その反応から、呪力がある人間にはかなり害が出るレベルに達していることに気づく。が、同時に気にしなければ無視できてしまうという状況だと理解する。
「そう言えば、俺は人形を目にするまで不快に感じなかったな。人形に込められている力はそれだけ微弱ということか」
集中しなければ気づかれないように、あの悟明が調整しているということか。確かに常にぞわっとした感覚を覚える状態だったら、南夏家が黙っていないだろうし、人々の間にも不安感が広がっていたはずだ。いや、信仰する彼らには心地よいのだろうか。
「ううん。まだまだ考えることが多いなあ」
次々に浮上する問題に、俺の頭はパンクしそうだ。
一体いつから、こんな大変なことになっていたのだろう。と、考えるだけ無駄だ。
総てはこの国の中心にいる、姫神が決めたこと。
「姫神そのものを何とかしない限り、俺は運命からは逃げられないってわけか」
「えっ」
「いや、何でもない」
まだ事情を知らない二人に、俺は忘れてくれと誤魔化す。この件に関して、さっさと萌音にリークしているが、トップ以外に漏らす予定はなかった。それだけ問題が大き過ぎ、俺にとって差し迫ったものである。
「どうだった?」
「かなりの数がありましたよ」
よろよろと現れた俺に、蛍が元気よく報告してくれる。が、その報告は俺の頭痛をより深刻なものにしてくれる。
「かなりの数」
会議室の机に目を向けると、でんっと積まれた人形の山。ぞわっと気持ち悪いはずのそれを山のように積んでどうすると思うのだが、意外と平気だということに気づく。
「不快感はないな」
「ええ。不思議なんです。一個一個はぞわっとしたはずなのに、ここに持ち帰ると、ぞわっと感が消えました」
「ふむ」
ここが王宮と近いことに関係しているのだろうか。必死に封印を施しているこの場所では、人形に込められた小さな姫神の力ならば、置いているだけで祓えてしまうのかもしれない。
「人形の回収の方が大変だったよ。無理に持って行こうとすると、必死に抵抗するんだから」
ぞわっと感よりも人間の方が怖かったというのは貴明だ。その貴明を見ると、引っ掻かれたらしく頬に傷が出来ていた。髪もぐしゃぐしゃだ。軍服も心なしかよれている。
「姫神への信仰はそれだけ根付きつつあるってことか」
「だね。禁止だって言ったところで、聞く耳持たないんだよ。それどころか、軍の横暴だって、暴動寸前になるし」
「そんな中、よく回収できたな」
「彼女たちが優秀なおかげでね」
貴明は凄かったよと遠い目だ。
横にいる蛍も希鈴も涼しい顔をしている。いや、にこにことしている。
可愛い顔で最強か。
俺の周り、こんな女子しかいないな。
「まあいい。とりあえず、害になりそうな人形が回収だけでも大きい。これに関しては俺が処理しておこう」
「お願いします」
「貴明、王宮まで運んでくれ」
「なんで俺?」
一番疲れているの俺だよ。そう訴えてくる貴明だが
「お前は何も感じないんだろ。すでに姫神の力は弱まっているが、呪力を感知できる奴に運ばせるのはリスクがある。お前がやれ」
他の奴は駄目だときっぱり言ってやった。そもそも、あの姫神教会でも平然としていた奴だ。こいつには呪力が宿っていない。
「げえ」
貴明は不満そうに唇を尖らせたが、仕方ないと人形を段ボール箱に詰め込み始める。俺はそれを横目で見つつ
「どの家に釣り下がっていたか、それもちゃんと調べてくれたか」
二人に詳しい状況を教えてくれと報告を促す。すると、希鈴がチェックしてありますと懐から地図を取り出した。そこに赤ペンで丸印が付けられている。
「特にどこかに偏りがあるというわけではないか」
その地図を覗き込み、人形があった場所は南側全体にまんべんなくある感じだなと気づく。中には貧民街の軒先に吊り下げられていたものもあるようだ。
「あちこちにあってびっくりしました。改めて探してやるぞと思いながら見ると、街のあちこちでぞわってするんです。気持ち悪かったですよ」
蛍はその時のことを思い出し、鳥肌が立ったと二の腕を擦る。その反応から、呪力がある人間にはかなり害が出るレベルに達していることに気づく。が、同時に気にしなければ無視できてしまうという状況だと理解する。
「そう言えば、俺は人形を目にするまで不快に感じなかったな。人形に込められている力はそれだけ微弱ということか」
集中しなければ気づかれないように、あの悟明が調整しているということか。確かに常にぞわっとした感覚を覚える状態だったら、南夏家が黙っていないだろうし、人々の間にも不安感が広がっていたはずだ。いや、信仰する彼らには心地よいのだろうか。
「ううん。まだまだ考えることが多いなあ」
次々に浮上する問題に、俺の頭はパンクしそうだ。
一体いつから、こんな大変なことになっていたのだろう。と、考えるだけ無駄だ。
総てはこの国の中心にいる、姫神が決めたこと。
「姫神そのものを何とかしない限り、俺は運命からは逃げられないってわけか」
「えっ」
「いや、何でもない」
まだ事情を知らない二人に、俺は忘れてくれと誤魔化す。この件に関して、さっさと萌音にリークしているが、トップ以外に漏らす予定はなかった。それだけ問題が大き過ぎ、俺にとって差し迫ったものである。
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