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第24話 謎がある
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「駄目だな。問題がでかすぎて、お前の頭が思考放棄している」
「知ってます」
知ってますとも。だから、あんたにどうすればいいのかと聞いてるんじゃん。
「ともかく、姫神が男を求めていると解っただけでも収穫だな。で、器になるのはお前で、力を貸したいのはうちの馬鹿か。ったく、困ったもんだね。せめてその逆ならば、軍部でその力を利用してやるというのに」
「……」
おい。この元帥、とんでもないことを言っているぞ。
しかし、その発言で俺の頭も少しは冷静になっていた。
「つまり、南夏家がこの問題を今まで俺に隠し、そして今になって動かしたのは、俺が器であり、姫神と適合できる唯一の人間だから、ってことですか」
「だろうね。だから放置出来たんだ。姫神教会単体では、どう頑張っても姫神の力の総てを引き出すことは出来ない。そして、軍部に入るような跳ねっ返りならば、そう簡単に姫神教会の連中が手出しできないってことだ」
「ううん」
そんな、総て俺任せみたいな作戦、うちの親父が考えるかな。
俺は腕を組んで悩んでしまう。が、あの会議で貴族四家の間ではすでに意思疎通が出来ていたようだから、着実に何かを進めているのかもしれない。
「当事者なのに、何も解らないなんて理不尽だ」
あれだけ「なんかせいや」と煽られていたはずなのに、俺は間違った方向に驀進していたことになる。
「まあ、当事者だから見えなかったということもあるだろう。姫神があえてお前を無視する態度を取っていたのならば、他の南夏家の連中より封印を軽く考えるのも当然だ。総ては誰もが信仰してはならない神の意思だった。そして今、この信仰してはならないという意味合いも変わって来るわけだ」
「えっ。ああ」
神は存在し、意思疎通が出来、そして器を選び、復活を目論んでいる。
それは総てを超越する力を得ることが出来るということだ。
「一般人に知られるわけにはいかない力。だから、神を信じてはならないと教えているというわけですか。それを破っているのが姫神教会で、姫神教会の言い分が実は正しいということになる。だから民衆に広がってしまう」
「その通り」
随分とすっきりしてきたな。そう言いながらも萌音の目が鋭くなる。
「全員を騙すのが最も手っ取り早い、というわけですか。確かにどうして王家と南夏家にのみ呪力が使えるのか。常に封印が必要なのか。考えると不思議なんですよね。そういうものだと思い込んでいましたが、貴族四家が王家の血縁であるのに、どうして南夏家だけなのか、という疑問もあります」
「そうだな。特に軍が出来る時に切り離された桜宮家から、呪術が使える奴が出てきたんだ。本来は貴族ならば使えて当たり前だったのかもしれない」
「はい。それに、万が一に他から呪術が使える人間が出た場合、南夏家が養子にするというルールがあります。これもまた、本来は貴族全員が使えたはずだという傍証になりますね」
「ああ」
桜宮家を切り離したように、役割を分担することで、徐々に力が南夏家にだけ使えるように仕向けてきたのだろう。それこそ建国から続く努力のはずだ。しかし、それでは何かが足りないと俺は気づく。
「貴族だけに限定するのはおかしいのかもしれません。姫神が暴れたという太古、その時にいた人たちには、姫神の力が伝わっていた、と考えるべきです。たまに一般人からも呪力が使える人間がいるので、そう考えないと辻褄が合いません。だからこそ、民衆は姫神教会の、力を分け与えてくれるという話がすんなりと納得できるはずです」
「なるほどな。確かにその通り。つい、自分たちだけが特殊だと思ってしまうのが、権力者の悪いところだな」
萌音は苦笑しつつ、呪力はこの国において普遍的なものだったとの指摘には納得していた。だからこそ、何とかして独占状態を作ろうとし、信仰を禁止したのだ。
「はあ。しかし、俺が器。一体何をどうするのが正解なんだ」
根本的な疑問については解決してきたが、今回の問題についてどう解決すべきかが解らない。俺は床に座り込んだまま、盛大な溜め息を吐いていたのだった。
「知ってます」
知ってますとも。だから、あんたにどうすればいいのかと聞いてるんじゃん。
「ともかく、姫神が男を求めていると解っただけでも収穫だな。で、器になるのはお前で、力を貸したいのはうちの馬鹿か。ったく、困ったもんだね。せめてその逆ならば、軍部でその力を利用してやるというのに」
「……」
おい。この元帥、とんでもないことを言っているぞ。
しかし、その発言で俺の頭も少しは冷静になっていた。
「つまり、南夏家がこの問題を今まで俺に隠し、そして今になって動かしたのは、俺が器であり、姫神と適合できる唯一の人間だから、ってことですか」
「だろうね。だから放置出来たんだ。姫神教会単体では、どう頑張っても姫神の力の総てを引き出すことは出来ない。そして、軍部に入るような跳ねっ返りならば、そう簡単に姫神教会の連中が手出しできないってことだ」
「ううん」
そんな、総て俺任せみたいな作戦、うちの親父が考えるかな。
俺は腕を組んで悩んでしまう。が、あの会議で貴族四家の間ではすでに意思疎通が出来ていたようだから、着実に何かを進めているのかもしれない。
「当事者なのに、何も解らないなんて理不尽だ」
あれだけ「なんかせいや」と煽られていたはずなのに、俺は間違った方向に驀進していたことになる。
「まあ、当事者だから見えなかったということもあるだろう。姫神があえてお前を無視する態度を取っていたのならば、他の南夏家の連中より封印を軽く考えるのも当然だ。総ては誰もが信仰してはならない神の意思だった。そして今、この信仰してはならないという意味合いも変わって来るわけだ」
「えっ。ああ」
神は存在し、意思疎通が出来、そして器を選び、復活を目論んでいる。
それは総てを超越する力を得ることが出来るということだ。
「一般人に知られるわけにはいかない力。だから、神を信じてはならないと教えているというわけですか。それを破っているのが姫神教会で、姫神教会の言い分が実は正しいということになる。だから民衆に広がってしまう」
「その通り」
随分とすっきりしてきたな。そう言いながらも萌音の目が鋭くなる。
「全員を騙すのが最も手っ取り早い、というわけですか。確かにどうして王家と南夏家にのみ呪力が使えるのか。常に封印が必要なのか。考えると不思議なんですよね。そういうものだと思い込んでいましたが、貴族四家が王家の血縁であるのに、どうして南夏家だけなのか、という疑問もあります」
「そうだな。特に軍が出来る時に切り離された桜宮家から、呪術が使える奴が出てきたんだ。本来は貴族ならば使えて当たり前だったのかもしれない」
「はい。それに、万が一に他から呪術が使える人間が出た場合、南夏家が養子にするというルールがあります。これもまた、本来は貴族全員が使えたはずだという傍証になりますね」
「ああ」
桜宮家を切り離したように、役割を分担することで、徐々に力が南夏家にだけ使えるように仕向けてきたのだろう。それこそ建国から続く努力のはずだ。しかし、それでは何かが足りないと俺は気づく。
「貴族だけに限定するのはおかしいのかもしれません。姫神が暴れたという太古、その時にいた人たちには、姫神の力が伝わっていた、と考えるべきです。たまに一般人からも呪力が使える人間がいるので、そう考えないと辻褄が合いません。だからこそ、民衆は姫神教会の、力を分け与えてくれるという話がすんなりと納得できるはずです」
「なるほどな。確かにその通り。つい、自分たちだけが特殊だと思ってしまうのが、権力者の悪いところだな」
萌音は苦笑しつつ、呪力はこの国において普遍的なものだったとの指摘には納得していた。だからこそ、何とかして独占状態を作ろうとし、信仰を禁止したのだ。
「はあ。しかし、俺が器。一体何をどうするのが正解なんだ」
根本的な疑問については解決してきたが、今回の問題についてどう解決すべきかが解らない。俺は床に座り込んだまま、盛大な溜め息を吐いていたのだった。
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