22 / 42
第22話 説明不足!
しおりを挟む
「年齢は大きな要因ではない。しかし、共通点はあると考えているわけですね」
「もちろん」
「その共通点は、あとは男だってことくらいですけど」
「それだよ」
「それ」
「男」
「男であることに、どんな意味が」
俺がそんな大雑把な共通点でいいのかと訊ねると、帝はやれやれという顔をしてくれる。
今の指摘にどうしてそれほど呆れたという態度を取られなければならないのか。
「朴念仁であることは解っていたとは、まさかここまで筋金入りとはな」
「は?」
「恋人がいないのも頷けるし、朕としてはラッキーなのだが、色々と心配になる」
「ええっと」
今度は心配されているらしい。しかし、一体どうしてそういう話になるのか。俺は解らず、より一層顔を顰めてしまう。
「聖夜よ。姫神の性別はなんだ?」
「えっ。そりゃあ、女でしょう」
「女が力を貸したいと思うのは、男だと思わないか」
「えっ、まあ、そうでしょうね。たいていの場合は、そうじゃないでしょうか」
「姫神とて例外ではないのだよ。悟明、なかなかのイケメンではないかね」
「ええっと」
あれ? 何の話をしているんだっけ。
俺は首を傾げるが、十九歳、男、女が力を貸すというキーワードが頭を渦巻き、ぐるぐるとする。何か肝心なことが含まれているはずなのに、何をどう繋げればいいのか解らなくなっている。
一体何の話をしているんだっけ。しかし、そこに悟明がイケメンだという情報を加えて、ようやく一つの結論を導いた。
「えっ。ひょっとして姫神が惚れることが条件、ですか。まさか十九歳というタイミングだったのは、結婚適齢期になったから、とか」
「そうだ」
ようやくか。帝が呆れたように溜め息を吐く。しかし、俺としては呆れられる謂れがない。
「そんな馬鹿な。姫神は封印されているんでしょ」
俺はむっとしてそう反論するが
「では、我らはどうして毎日のように、何時間も掛けて封印の儀式をやるのだ」
と訊き返されてしまった。俺は唖然とし
「それは……えっ……まさか」
今まで一度も考えたことのなかった可能性について、ようやく思考が追いつく。だが、それはあまりに危険な状態と言えないか。
「そう。姫神は定期的に目覚めておられる。もちろん、日々の封印と、暴れた後になされた封印が効き、外に出てくることは出来ない。しかし、その意識は、一日に数十分から数時間程度、目覚めておるのだ」
「なっ」
あまりのことに、俺はマジで絶句してしまった。それからへなへなとその場に両手をついて、うんうんと唸ってしまう。
あまりに想定外の内容だ。想像したことのなかった話だ。俺はもう、何をどう考えていいか解らずに、唸ることしか出来ない。人間、許容量オーバーなことが起こると、マジで何も出来なくなる。
「聖夜でも想像したことがなかったか。まあ、そうでなければ、軍部に行こうなんて思わないだろうな」
フリーズしてしまった俺に向けて、帝はやれやれと溜め息を吐いてくれる。しかし、俺はそれに対して一言、言いたいことがある。
「説明不足!」
そう、これだ。それほど肝心な儀式ならば、さっさと姫神が目覚める可能性があることを教えるべきではないだろうか。
「はん。呪術が使えようと、まさか姫神が目覚めそうだなんて荒唐無稽な話、普通の状態で説明されて納得できるのか」
「うっ」
「こういうのは、何事もタイミングだ。聖夜の場合は姫神教会がきっかけになったにすぎんというだけだ」
「ん?」
ムカついて怒鳴る寸前だった俺だが、きっかけになったという言葉に冷静になる。
「ということは、儀式の最中に似たような状態になるってことですか」
「おっ、鋭いな。そのとおりだ。私は四つの時、彼女と会話を交わした。愛らしい御方であったぞ」
「なっ」
帝は姫神と喋ったことがあるだと!
俺はもう何がどうなっているんだと、本気で狼狽えてしまう。今まで知った気になっていた世界は、何も知らない世界だったなんて!
「なんかせいや」
「うっ」
「お前にはやることが山のようにあるな」
「ううっ」
ついに帝にまでイジられた。俺はやり場のない感情を、床をどかどか叩くことで発散させるしかない。
「もちろん」
「その共通点は、あとは男だってことくらいですけど」
「それだよ」
「それ」
「男」
「男であることに、どんな意味が」
俺がそんな大雑把な共通点でいいのかと訊ねると、帝はやれやれという顔をしてくれる。
今の指摘にどうしてそれほど呆れたという態度を取られなければならないのか。
「朴念仁であることは解っていたとは、まさかここまで筋金入りとはな」
「は?」
「恋人がいないのも頷けるし、朕としてはラッキーなのだが、色々と心配になる」
「ええっと」
今度は心配されているらしい。しかし、一体どうしてそういう話になるのか。俺は解らず、より一層顔を顰めてしまう。
「聖夜よ。姫神の性別はなんだ?」
「えっ。そりゃあ、女でしょう」
「女が力を貸したいと思うのは、男だと思わないか」
「えっ、まあ、そうでしょうね。たいていの場合は、そうじゃないでしょうか」
「姫神とて例外ではないのだよ。悟明、なかなかのイケメンではないかね」
「ええっと」
あれ? 何の話をしているんだっけ。
俺は首を傾げるが、十九歳、男、女が力を貸すというキーワードが頭を渦巻き、ぐるぐるとする。何か肝心なことが含まれているはずなのに、何をどう繋げればいいのか解らなくなっている。
一体何の話をしているんだっけ。しかし、そこに悟明がイケメンだという情報を加えて、ようやく一つの結論を導いた。
「えっ。ひょっとして姫神が惚れることが条件、ですか。まさか十九歳というタイミングだったのは、結婚適齢期になったから、とか」
「そうだ」
ようやくか。帝が呆れたように溜め息を吐く。しかし、俺としては呆れられる謂れがない。
「そんな馬鹿な。姫神は封印されているんでしょ」
俺はむっとしてそう反論するが
「では、我らはどうして毎日のように、何時間も掛けて封印の儀式をやるのだ」
と訊き返されてしまった。俺は唖然とし
「それは……えっ……まさか」
今まで一度も考えたことのなかった可能性について、ようやく思考が追いつく。だが、それはあまりに危険な状態と言えないか。
「そう。姫神は定期的に目覚めておられる。もちろん、日々の封印と、暴れた後になされた封印が効き、外に出てくることは出来ない。しかし、その意識は、一日に数十分から数時間程度、目覚めておるのだ」
「なっ」
あまりのことに、俺はマジで絶句してしまった。それからへなへなとその場に両手をついて、うんうんと唸ってしまう。
あまりに想定外の内容だ。想像したことのなかった話だ。俺はもう、何をどう考えていいか解らずに、唸ることしか出来ない。人間、許容量オーバーなことが起こると、マジで何も出来なくなる。
「聖夜でも想像したことがなかったか。まあ、そうでなければ、軍部に行こうなんて思わないだろうな」
フリーズしてしまった俺に向けて、帝はやれやれと溜め息を吐いてくれる。しかし、俺はそれに対して一言、言いたいことがある。
「説明不足!」
そう、これだ。それほど肝心な儀式ならば、さっさと姫神が目覚める可能性があることを教えるべきではないだろうか。
「はん。呪術が使えようと、まさか姫神が目覚めそうだなんて荒唐無稽な話、普通の状態で説明されて納得できるのか」
「うっ」
「こういうのは、何事もタイミングだ。聖夜の場合は姫神教会がきっかけになったにすぎんというだけだ」
「ん?」
ムカついて怒鳴る寸前だった俺だが、きっかけになったという言葉に冷静になる。
「ということは、儀式の最中に似たような状態になるってことですか」
「おっ、鋭いな。そのとおりだ。私は四つの時、彼女と会話を交わした。愛らしい御方であったぞ」
「なっ」
帝は姫神と喋ったことがあるだと!
俺はもう何がどうなっているんだと、本気で狼狽えてしまう。今まで知った気になっていた世界は、何も知らない世界だったなんて!
「なんかせいや」
「うっ」
「お前にはやることが山のようにあるな」
「ううっ」
ついに帝にまでイジられた。俺はやり場のない感情を、床をどかどか叩くことで発散させるしかない。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる