南夏聖夜は陰謀に好かれる!?~姫神信仰の謎~

渋川宙

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第22話 説明不足!

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「年齢は大きな要因ではない。しかし、共通点はあると考えているわけですね」
「もちろん」
「その共通点は、あとは男だってことくらいですけど」
「それだよ」
「それ」
「男」
「男であることに、どんな意味が」
 俺がそんな大雑把な共通点でいいのかと訊ねると、帝はやれやれという顔をしてくれる。
 今の指摘にどうしてそれほど呆れたという態度を取られなければならないのか。
「朴念仁であることは解っていたとは、まさかここまで筋金入りとはな」
「は?」
「恋人がいないのも頷けるし、朕としてはラッキーなのだが、色々と心配になる」
「ええっと」
 今度は心配されているらしい。しかし、一体どうしてそういう話になるのか。俺は解らず、より一層顔を顰めてしまう。
「聖夜よ。姫神の性別はなんだ?」
「えっ。そりゃあ、女でしょう」
「女が力を貸したいと思うのは、男だと思わないか」
「えっ、まあ、そうでしょうね。たいていの場合は、そうじゃないでしょうか」
「姫神とて例外ではないのだよ。悟明、なかなかのイケメンではないかね」
「ええっと」
 あれ? 何の話をしているんだっけ。
 俺は首を傾げるが、十九歳、男、女が力を貸すというキーワードが頭を渦巻き、ぐるぐるとする。何か肝心なことが含まれているはずなのに、何をどう繋げればいいのか解らなくなっている。
 一体何の話をしているんだっけ。しかし、そこに悟明がイケメンだという情報を加えて、ようやく一つの結論を導いた。
「えっ。ひょっとして姫神が惚れることが条件、ですか。まさか十九歳というタイミングだったのは、結婚適齢期になったから、とか」
「そうだ」
 ようやくか。帝が呆れたように溜め息を吐く。しかし、俺としては呆れられる謂れがない。
「そんな馬鹿な。姫神は封印されているんでしょ」
 俺はむっとしてそう反論するが
「では、我らはどうして毎日のように、何時間も掛けて封印の儀式をやるのだ」
 と訊き返されてしまった。俺は唖然とし
「それは……えっ……まさか」
 今まで一度も考えたことのなかった可能性について、ようやく思考が追いつく。だが、それはあまりに危険な状態と言えないか。
「そう。姫神は定期的に目覚めておられる。もちろん、日々の封印と、暴れた後になされた封印が効き、外に出てくることは出来ない。しかし、その意識は、一日に数十分から数時間程度、目覚めておるのだ」
「なっ」
 あまりのことに、俺はマジで絶句してしまった。それからへなへなとその場に両手をついて、うんうんと唸ってしまう。
 あまりに想定外の内容だ。想像したことのなかった話だ。俺はもう、何をどう考えていいか解らずに、唸ることしか出来ない。人間、許容量オーバーなことが起こると、マジで何も出来なくなる。
「聖夜でも想像したことがなかったか。まあ、そうでなければ、軍部に行こうなんて思わないだろうな」
 フリーズしてしまった俺に向けて、帝はやれやれと溜め息を吐いてくれる。しかし、俺はそれに対して一言、言いたいことがある。
「説明不足!」
 そう、これだ。それほど肝心な儀式ならば、さっさと姫神が目覚める可能性があることを教えるべきではないだろうか。
「はん。呪術が使えようと、まさか姫神が目覚めそうだなんて荒唐無稽な話、普通の状態で説明されて納得できるのか」
「うっ」
「こういうのは、何事もタイミングだ。聖夜の場合は姫神教会がきっかけになったにすぎんというだけだ」
「ん?」
 ムカついて怒鳴る寸前だった俺だが、きっかけになったという言葉に冷静になる。
「ということは、儀式の最中に似たような状態になるってことですか」
「おっ、鋭いな。そのとおりだ。私は四つの時、彼女と会話を交わした。愛らしい御方であったぞ」
「なっ」
 帝は姫神と喋ったことがあるだと!
 俺はもう何がどうなっているんだと、本気で狼狽えてしまう。今まで知った気になっていた世界は、何も知らない世界だったなんて!
「なんかせいや」
「うっ」
「お前にはやることが山のようにあるな」
「ううっ」
 ついに帝にまでイジられた。俺はやり場のない感情を、床をどかどか叩くことで発散させるしかない。
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