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第13話 意味が解らん

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「まあ、ぶっ殺すにしろ屠るにしろ、街中でやるのは難しいと判断してのことか。でも、それならば昨日の段階で殺しておけばよかったんじゃないか。昨日、周囲には誰もいなかった。お前のことも呼び出しているんだから、二人とも邪魔だと判断したわけだろ。だったら、昨日躊躇いなく殺しておくべきだよな」
「ううん。それを言われると困っちゃうけど、向こうにも段取りがあるんじゃない?」
「段取りねえ。あっ、嫌なことが閃いた。俺は姫神に近いとされる南夏家の人間だ。その血を捧げようとか思っているのかも」
「うわあ。あり得そう」
 そこまで喋って、二人揃って深々と溜め息を吐き出してしまう。そして、二人の間に置かれた招待状を見て、また溜め息だ。
 ここで何を言い合っても無駄だということは解っている。しかし、相手の言葉を鵜呑みにしていいのか。
「マジで招待状だもんな」
 俺は封書を取り上げ、その中身に再度目を通した。

『拝啓、南夏聖夜様。
 この度は愚弟を通じてこのような手紙を差し上げること、まずお詫び申し上げます。しかし、あなた様の名前を出せば明らかに警戒されてしまいます故、ご承知いただきたい。
 さて、こうして文を認めたのは他でもありません。南夏様とゆっくり茶を飲みながらお話をしたいと考えております。
 場所は姫神教会内になりますが、あなた様に危害を加えるつもりは毛頭ございません。どうぞ、ご気兼ねなくお越しください。もちろん、帯刀したままで大丈夫でございます。また、我が愚弟を同席させることも問題ありません。
 日時は明日の午後三時はいかがでしょう。歳星門にてお待ちしております。ご都合がつかない場合は、三時にお姿がなかったことで確認いたしますので、連絡は不要です。
 それでは、お目に掛かれることを楽しみにしております。

 敬具 桜宮悟明』

「何も読み取れない文面だもんな。一応は中を改められることを警戒しているわけだ」
 お茶会をしたい。三時に待っている。それ以外の情報は一切ないのだ。つまり、肝心の用件は会うまで喋る気がないというわけだ。
「なんだよ、この虎穴に入らずんば感は」
 俺は思わずどんっと机を殴ってしまう。それに貴明はまあまあと諫めてくるが、同じことを思っているのだろう。今度は覇気がない。
「同席を許すって言うけど、お前も来いよってことだもんなあ」
 そう思っていると、貴明がぼやくように言った。同じく虎穴に入らなきゃいけない俺はどうなるんだと、そんな気持ちが顔からダイレクトに伝わってくる。
「行くしかねえよな」
「だねえ」
 何なんだよ、この桜宮悟明って。俺は罵りたいのをぐっと堪え、一先ずこのことについて萌音に報告へと向かったのだった。



 お茶会と指定された翌日。俺たちは三時少し前に歳星門前にいた。
 萌音に報告したら、当然のように行けとの命令が下った。もちろん軍が動くことはない。というわけで、二人は逃げ道を塞がれ、出たとこ勝負の状況に追い込まれた。
「お前の姉貴を初めて殺したくなったよ」
「ははっ。二年で初めてとは、ずいぶんと忍耐力があるんだね、聖夜って」
「はんっ」
 それは今まで感謝していたからな。俺はそれすら嵌められた結果だったと思うと腸が煮えくり返るが、あの元帥をぶっ殺してやるという心境になったことはない。今も言うほどキレているわけではなく、とりあえず文句を言わなきゃ収まらないと言うだけだ。
「まあ、今回のことが自分の思い通りにいかないから、姉上もストレスが溜まっているだろうよ。あの人、何でも自分でやらなきゃ気が済まないタイプなのに、今回は聖夜に丸投げしなきゃいけないんだから」
 貴明は行けと言っちゃうよねと、諦めの境地で笑っている。なんで萌音ではなく自分なんだと、兄のことを恨んでいるというのも解った。
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