異世界召喚とおぼしきもの。

第105話 煙に巻けるか？

「まぁ、しばらく実力行使はしてこないでしょ。」

「いやいや、それは困るから!!実力行使された瞬間に終わるから!!」

「ワンコ？通販の品物はどっちに届くの？」

「アパートの私の部屋につきます!!」

「なんでそっちにしたの？」

「セシーさんの部屋に行く人を少なくしたいと思ったんです。いざというときの逃げ場所を晒すのは問題ですから。」

「正樹、ワンコを見習いなさい。ワンコはちゃんと考えて行動してるよ？」

「ごめんなさい。」

「マスター。自分がスパイ映画の主人公だと思って用心すれば良いんですよ♪」

「なるほど、現実感なくて慌てるよりはその方が良いのかもね。」

「はぁ？現実感なんて異世界召喚目撃するよりスパイの方が起こりやすいでしょ!!想像力が自分に都合の良い方向にしか働かないのはどーなのょ？」

そりゃそーだ。空も飛んだしテレポートもした。スパイごときで慌てる必要もないか。

「そんなすぐに慌てる正樹がモンスターと戦闘する気だったのが笑えるょ!!」

「も、もうその話は許して下さい。」

現実から逃げる癖が抜けてないんだよ。

ここはもっと頑張らないとな。

「通販の品物が揃うまでは、二人とも家と商店街くらいであまり出歩かないでいて。その間に誰かに私の事を聞かれたらお金を貰っていろいろ案内をしているって説明してくれたらオケ！その間に、あちこち出歩いたりして、スパイと話をつけてくるから。」

「はーい!!セシーさん頑張って下さいねー!!」

「囮か？何人死ぬんだろうな。」

「殺していったら向こうを本気にさせるだけでしょ？穏便に済ませるょ。」

俺とセシーの穏便の度合いが違う気がするんだがな!!

「スパイは任せるからなんとか宜しく!!」

「任された!!」

セシーは笑顔でこたえてくれた。

「せっかくだから歌を聞かせてちょうだい。」

なに！カラオケなんてほとんどしたこと無いぞ。

「はーい!!行きまーす!!」

そこからマユユンのオンステージが始まった。

結構上手だった。

その日はセシーと分かれて、タクシーで帰宅した。

しばらく何事も起きませんように!!

そう祈るしかなかった。