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第二章:勇者カイ
第二章:勇者カイ⑧
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「やはり……貴方が魔王なのですね」
姫が納得したように頷く。と同時に、警戒するかのように目を細める。まぁ、無理もないだろうな。ここは目的を話して警戒を解くべきだろう。
「あぁ。だが安心してほしい。俺は別に、姫や王を殺すためにここに来たわけではない」
「……その言葉、信じられますとでも?」
「大丈夫ですよ、姫。コイツは今のとこ悪い奴じゃないですよ、たぶん」
多分、とは……。カイがそんなことを言うから姫がますます疑惑の眼差しでこちらを見てくるではないか!助けるならもっと確実に助けてほしいものだ……。
「……では、何のために城へいらしたんですの? 先ほど申していた時の繰り返しとやらを聞くためだけという訳ではないでしょう」
思わず、俺とカイが顔を見つめあう。さて、どう答えたら良いものか……。
「さぁおっしゃって! 貴方の真の目的を!」
「……あの、姫」
「何ですの」
「申し上げにくいのだが……俺たちは本当に時の繰り返しについて聞きたいだけで……」
「……嘘はやめて頂きたいですわ。そんなはずありませんもの」
「いやぁ~姫、信じがたいでしょうけど本当にそれだけなんですよね~。僕の命に誓って断言しますよ」
カイの言葉を聞いて姫が眉間に皺を寄せる。勇者が命に誓うほどのことだ、嘘とも思えないと考えたのだろうか。
しかしカイの奴、命に誓ってとは……なかなかカッコよいことを言うではないか。
「……本当に、本当ですの?」
俺とカイは黙ってうなずく。しばらく俺たちの顔を交互に眺めつつ、考えている様子の姫だったが、ため息を一つつくと気が抜けたように椅子の背もたれに寄りかかる。
「はぁ~……良かったですわ……」
姫は安心したようにそう呟くと、気が緩んだのかくすくすと笑いだす。
「私、ダモサーラを見た時本当に驚きましたのよ? まさか魔王がこの城に来るなんて思ってもみなかったんですもの……お父様に心配かける訳にも参りませんし、ですからこうやって聞こうと……」
「姫! 少しよろしいかな?」
「何ですの?」
「先ほどから気になっていたのだが……何故俺を見て魔王だと思ったのですか? この角以外で」
そう言って角を指さす。先ほど姫は見た時驚いた、と言った。角を見て普通じゃないと思うのはまぁわかるのだが、魔王と思うのには何か理由があるはずだ。何らかの方法で俺の容姿が外部に漏れていたのかもしれない。時の繰り返しとは関係がないかもしれないが、今後のために聞いておかねば……。
「あぁ、それなら簡単ですわ! 神様が教えてくださったの」
「神様~?」
カイが素っ頓狂な声を出す。神様、と言うと……この大地を作ったとか人間を作ったとかいう奴の事か?そういえば、人間の中にはその神様とやらを崇拝する者もいると聞くが……姫もそうなのだろうか。
「えぇ。これはお父様と私しか知らないことですが……私、神様の声が聞こえるのです」
「はぁ……」
正直人間と神様の関係など魔物である俺にはわからん。声が聞こえるのも皆できることなのではないのか?
しかしカイの信じられないという表情を見て、これは普通の事ではないのだなと思った。
「まぁ! 信じていませんわね!」
「いえまさか、その……詳しく教えて頂いてもいいですかな」
「姫、僕も詳しく聞きたいです!」
「……まぁ、いいでしょう」
姫はあまり乗り気ではないようだが、その神様とやらについて、是非とも知っておきたいものだ。神様は俺が魔王だと知っていたとするならば、それは時の繰り返しと何かしら関係があるかもしれん。
俺たちは姫の話に静かに耳を澄ました。
姫が納得したように頷く。と同時に、警戒するかのように目を細める。まぁ、無理もないだろうな。ここは目的を話して警戒を解くべきだろう。
「あぁ。だが安心してほしい。俺は別に、姫や王を殺すためにここに来たわけではない」
「……その言葉、信じられますとでも?」
「大丈夫ですよ、姫。コイツは今のとこ悪い奴じゃないですよ、たぶん」
多分、とは……。カイがそんなことを言うから姫がますます疑惑の眼差しでこちらを見てくるではないか!助けるならもっと確実に助けてほしいものだ……。
「……では、何のために城へいらしたんですの? 先ほど申していた時の繰り返しとやらを聞くためだけという訳ではないでしょう」
思わず、俺とカイが顔を見つめあう。さて、どう答えたら良いものか……。
「さぁおっしゃって! 貴方の真の目的を!」
「……あの、姫」
「何ですの」
「申し上げにくいのだが……俺たちは本当に時の繰り返しについて聞きたいだけで……」
「……嘘はやめて頂きたいですわ。そんなはずありませんもの」
「いやぁ~姫、信じがたいでしょうけど本当にそれだけなんですよね~。僕の命に誓って断言しますよ」
カイの言葉を聞いて姫が眉間に皺を寄せる。勇者が命に誓うほどのことだ、嘘とも思えないと考えたのだろうか。
しかしカイの奴、命に誓ってとは……なかなかカッコよいことを言うではないか。
「……本当に、本当ですの?」
俺とカイは黙ってうなずく。しばらく俺たちの顔を交互に眺めつつ、考えている様子の姫だったが、ため息を一つつくと気が抜けたように椅子の背もたれに寄りかかる。
「はぁ~……良かったですわ……」
姫は安心したようにそう呟くと、気が緩んだのかくすくすと笑いだす。
「私、ダモサーラを見た時本当に驚きましたのよ? まさか魔王がこの城に来るなんて思ってもみなかったんですもの……お父様に心配かける訳にも参りませんし、ですからこうやって聞こうと……」
「姫! 少しよろしいかな?」
「何ですの?」
「先ほどから気になっていたのだが……何故俺を見て魔王だと思ったのですか? この角以外で」
そう言って角を指さす。先ほど姫は見た時驚いた、と言った。角を見て普通じゃないと思うのはまぁわかるのだが、魔王と思うのには何か理由があるはずだ。何らかの方法で俺の容姿が外部に漏れていたのかもしれない。時の繰り返しとは関係がないかもしれないが、今後のために聞いておかねば……。
「あぁ、それなら簡単ですわ! 神様が教えてくださったの」
「神様~?」
カイが素っ頓狂な声を出す。神様、と言うと……この大地を作ったとか人間を作ったとかいう奴の事か?そういえば、人間の中にはその神様とやらを崇拝する者もいると聞くが……姫もそうなのだろうか。
「えぇ。これはお父様と私しか知らないことですが……私、神様の声が聞こえるのです」
「はぁ……」
正直人間と神様の関係など魔物である俺にはわからん。声が聞こえるのも皆できることなのではないのか?
しかしカイの信じられないという表情を見て、これは普通の事ではないのだなと思った。
「まぁ! 信じていませんわね!」
「いえまさか、その……詳しく教えて頂いてもいいですかな」
「姫、僕も詳しく聞きたいです!」
「……まぁ、いいでしょう」
姫はあまり乗り気ではないようだが、その神様とやらについて、是非とも知っておきたいものだ。神様は俺が魔王だと知っていたとするならば、それは時の繰り返しと何かしら関係があるかもしれん。
俺たちは姫の話に静かに耳を澄ました。
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