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第34話 ※本番あり

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「んっ……あっ……」
「那月、怖くなったら言って。俺のこと殴ってもいいから」

 慎二は、僕の後ろをトントンと叩きながらそんなことを言う。

「怖くなったら? 痛かったらじゃなくて?」
「痛くてもすぐに言って。止めてあげられるかは分からないけど」
「う、うん」

 僕が承諾したのと同時に、慎二の指が体内に侵入してくる。そこは既に濡れそぼっていて、簡単にその侵入を許してしまう。

「んあっ……そんな、見ないでっ……」

 そんな光景をジッと見つめる慎二は、おもむろに口を開いた。

「那月は、俺とセックスするのが嫌なんだよね?」

 その言葉と同時に、指の抽挿は雑に激しくなる。

「んやっ、ゆびっ、ちがっ……」
「那月が俺のこと発情期に誘ってくれる理由は、社交辞令みたいなものだって分かってるんだけど、ごめんね。今日は我慢出来ない」
「あっ、あっ、ああっ、まっ……」

 言葉を否定したいのに、慎二がその暇を与えてくれない。
 何度も何度も大好きな人の指に前立腺を責め立てられて、嬌声を上げずにはいられない。

 挿入される指が二本、三本と増えていく。

「まっ、とまっ、んんんっ……ん?」

 その時、ピタッと抽挿が止まった。そして、指が丁寧に抜かれていく。

「んんっ……やっと、止まっ……」
「ごめん、乱暴だった! 怖かったよね!?」
「いや、怖くはなかった……かな? というか、慎二はなんでそんなに離れてるの?」

 やっとさっきの言葉を否定できると思い、慎二の方を見ると、何故か慎二はベッドから降りて部屋の隅に立っていた。

 さっきまでは何がなんでも抱いてやるぜ! みたいな雰囲気だったのに、今の慎二は僕を脅えるような目付きで見ている。

「ねぇ、慎二」
「ごめん、ごめん……」

 こんな慎二は初めてだ。僕の目を一切見てくれない。
 さっきの行為でも、僕と目を合わせてくれていたのは愛撫までで、いざ行為が始まれば僕の後ろばっかり見ていた。

 さっきから慎二の様子がちょっとおかしい。

 そういえば、マンションの前で待ち構えていたのも、それが怒っている雰囲気だったのもなんだったんだろう?

「慎二、なんでそんなに謝るの? 僕、怖くなかったよ? それに、慎二とするの嫌じゃないし」

 そもそも何で僕が嫌がってるって勘違いしてるんだ?

 慎二の腕を掴み、再びベッドに来るように促す。そして、僕の後ろに慎二の指を勝手に入れた。

「んっ……!」
「那月?」

 慎二の指で勝手に自慰を始めた僕を見て、彼は困惑げな表情を浮かべたら。
 慎二の指には力が入っていないので、僕の指を絡ませて、同時に抜き差しする。

「もうずっと、んあっ、発情期でさえ慎二に相手して貰えなくて……はうっ、ずっと我慢してたんだもん……」

 この二年ずっと一人で発情期を耐えてきた。
 身体だってこんなにも、この先を期待してるのに、こんなところで止まれるわけがない。

「ねぇ、抱いてよ、慎二。僕のこと好きなんでしょ?」

 僕のフェロモンが慎二を誘うように、部屋中にぶわっと充満した。
 その瞬間、慎二の血走った目と僕の目が合った。
 ドクリと心臓が大きな音を立てる。

「あっ……待って……」

 その目と合った瞬間、身がすくんだ。

「慎二、待って! 怖い!」

 冷や汗が止まらなくなる。僕は逃げるようにベッドから降りようとした。
 しかし、慎二は止まらなかった。

 僕が逃げようとすると、肩を掴まれベッドに押し戻される。

「いやっ! 待って、怖いっ!」

 僕は無理矢理仰向けに寝かされ、下からカチャカチャという金属音がする。

「ヤダっ、ヤダっ……」

 僕の肩が震える。

『オメガはいいよなーッ! 無能でもヘラヘラ笑ってりゃいいんだからよー』
『あははははーッ。やっぱりオメガとヤるなら男だよなー! 可愛くはねぇけど、その分頑丈。よしよーし、我慢できて偉いぞー那月』

「ヤダっ、やめてっ……ねぇ、慎二……」

 僕の後ろに慎二の一物が入ってこようとする。
 目尻から、涙がこぼれ落ちた。

 慎二はもしかして、僕がこうして怖がることを分かってて、今まで僕のこと抱こうとしなかったんだろうか?

 一度オメガのフェロモンに当てられ、ラット状態になってしまったアルファは止まらない。
 理性は吹っ飛び、満足するまで目の前のオメガを味わい尽くす。

 結婚後、初めての発情期。僕の記憶があるのは慎二がラット状態に入る前までだ。
 そのラット状態の慎二を僕が怖がっていたとしたら?
 そんな僕を気遣って、今まで慎二が我慢してきたとすれば?

「慎二って、僕のこと好き過ぎるんじゃ……」

 僕に覆い被さる慎二と目が合った。

「ひっ……」

 それと同時に、慎二の一物が僕の中を一気に貫いた。

「あ、ああ……」
「那月ッ、那月ッ」

 その衝撃に身体が硬直した。
 しかし、すぐに抽挿が開始され、強ばっている身体を強引に揺すられる。

「まっ、あっ、んんっ」

 眉間に皺を寄せ、僕の身体をガツガツと貪り尽くさんとする目の前の慎二は怖い。怖いけれど、僕は彼に抱きついた。

「慎二、好きだよ」

 やっと素直になれる気がする。
 これさえ耐えきれば、あとは慎二と話し合って解決できる。
 離婚なんてしなくていい。

 だって慎二は、僕のことを愛してくれてるから。
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