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第17話
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「まあ、とりあえずそれはどうでも良くて……」
「どうでも良い?」
「どうでも良くないけど、とりあえず置いておいて……」
なんか面倒臭くなってきた。
でも、やっぱり様子が変だな。
「慎二、どうしたの?」
「どうしたって?」
「なんか様子変じゃない?」
僕は慎二に近づいて、おでこを触る。
「熱はないよ。ただまあ、申し訳なくて……」
申し訳ない? 慎二が何を申し訳なく思う必要があるんだろうか?
僕は首をかしげる。
「今回の公園で撮られた写真。俺があんなに会社に近い場所で、あんな軽率な行動したせいだ」
慎二は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「俺との関係がバレたら、那月が危ないことぐらい分かってたのに。こんなことになるくらいなら先に、結婚してること言っときゃ良かった……」
その声は段々と小さくなり、最後には震えていた。
いや、いやいやいやいや。
「昨日のは、明らかに僕が悪かったでしょ。慎二のメッセージ無視して、それでも僕のところに来てくれて僕は嬉しかったよ」
僕は驚いていた。
慎二がそんなこと考えてたなんて、思いもよらなかったから。
「それに、先に結婚してること言っときゃ良かったって……慎二、言いたくなかったんでしょ? 別に無理する必要ないよ」
「俺、言いたくないなんて言ったっけ?」
僕の言葉に、今度は慎二が驚いた顔をした。
「いや、言ったっていうか……こう、僕が何か言う前から隠そうとしてたよね? だから僕は、言いたくないんだと思って」
「えっ? あぁ、那月はそう思ってたんだ。って、そうか。俺、理由言ってなかったんだっけ?」
「理由……?」
僕と結婚してることを知られたくなかったからじゃないの?
番になったのも事故だし、結婚はその責任を取るって感じだったし、てっきり僕、心の底ではお荷物だと思われてるんだと思ってたのに。
「そう、理由。って、えーと……」
慎二が急にまごまごし始めた。
視線が彷徨い、頬をポリポリと掻いている。
「あー、俺って……結構モテるよー、ね?」
何故、疑問分なんだ? 慎二は、営業部だろうと、他部署だろうとモテまくる。
だからこそ、今回の写真だって会社中に拡散されまくったのだ。
僕は一瞬だけ首をかしげ、頷いた。
その間慎二は、「あー、待て。那月の前でこれいうの恥ずかしいな。俺、自意識過剰じゃないよなッ! 大丈夫だよなッ!」と、自分ワールドでボソボソと独りごちていた。
これが二年前に、僕に理由とやらを話さなかったワケか?
慎二はひとつ咳払いをして、話を続けた。
「あー、だからつまり俺は、結婚を報告すると、俺のことを好きな奴らが嫉妬に狂って、那月に迷惑をかけるんじゃないかって思ったんだよ」
慎二はどこか居心地悪そうな顔をしている。
反対に僕は、不可思議な顔をしていると思う。
この二年間の僕の悩みは何だったんだ!
ずっとずっと、僕だけ結婚指輪をしてる状況が寂しかったのに……。
本当は、僕のことを想っての行動だったなんて。
その気持ちが例え恋心じゃなくても、僕は嬉しかった。
さっきまでは優しくされるのが嫌だったのに何でだろう?
今は凄く嬉しい。
顔が勝手にニヤけてしまう。
「んふっ……」
ヤバい、気持ち悪い声が出た。
しかし慎二には、そんなことどうでもいいようで、僕は肩を掴まれた。
「だから那月、結婚してること、言っていいよね?」
「ダメ」
「なんでッ!?」
なんでも何も四日後には離婚するつもりだからです。なんて、言えない。
「だから、もう僕の心配なくていいんだって。僕一人で何とかするか……ら……って、あれ? 慎二その指輪……」
僕の肩を掴んできた手を、片方ずつ外していると、その左手の薬指に指輪が嵌められていた。
僕の指輪とおなじデザインのそれは、慎二の分の結婚指輪だ。
その指輪を嵌めてるってことは、もしかして……。
僕は嫌な予感がした。
「どうでも良い?」
「どうでも良くないけど、とりあえず置いておいて……」
なんか面倒臭くなってきた。
でも、やっぱり様子が変だな。
「慎二、どうしたの?」
「どうしたって?」
「なんか様子変じゃない?」
僕は慎二に近づいて、おでこを触る。
「熱はないよ。ただまあ、申し訳なくて……」
申し訳ない? 慎二が何を申し訳なく思う必要があるんだろうか?
僕は首をかしげる。
「今回の公園で撮られた写真。俺があんなに会社に近い場所で、あんな軽率な行動したせいだ」
慎二は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「俺との関係がバレたら、那月が危ないことぐらい分かってたのに。こんなことになるくらいなら先に、結婚してること言っときゃ良かった……」
その声は段々と小さくなり、最後には震えていた。
いや、いやいやいやいや。
「昨日のは、明らかに僕が悪かったでしょ。慎二のメッセージ無視して、それでも僕のところに来てくれて僕は嬉しかったよ」
僕は驚いていた。
慎二がそんなこと考えてたなんて、思いもよらなかったから。
「それに、先に結婚してること言っときゃ良かったって……慎二、言いたくなかったんでしょ? 別に無理する必要ないよ」
「俺、言いたくないなんて言ったっけ?」
僕の言葉に、今度は慎二が驚いた顔をした。
「いや、言ったっていうか……こう、僕が何か言う前から隠そうとしてたよね? だから僕は、言いたくないんだと思って」
「えっ? あぁ、那月はそう思ってたんだ。って、そうか。俺、理由言ってなかったんだっけ?」
「理由……?」
僕と結婚してることを知られたくなかったからじゃないの?
番になったのも事故だし、結婚はその責任を取るって感じだったし、てっきり僕、心の底ではお荷物だと思われてるんだと思ってたのに。
「そう、理由。って、えーと……」
慎二が急にまごまごし始めた。
視線が彷徨い、頬をポリポリと掻いている。
「あー、俺って……結構モテるよー、ね?」
何故、疑問分なんだ? 慎二は、営業部だろうと、他部署だろうとモテまくる。
だからこそ、今回の写真だって会社中に拡散されまくったのだ。
僕は一瞬だけ首をかしげ、頷いた。
その間慎二は、「あー、待て。那月の前でこれいうの恥ずかしいな。俺、自意識過剰じゃないよなッ! 大丈夫だよなッ!」と、自分ワールドでボソボソと独りごちていた。
これが二年前に、僕に理由とやらを話さなかったワケか?
慎二はひとつ咳払いをして、話を続けた。
「あー、だからつまり俺は、結婚を報告すると、俺のことを好きな奴らが嫉妬に狂って、那月に迷惑をかけるんじゃないかって思ったんだよ」
慎二はどこか居心地悪そうな顔をしている。
反対に僕は、不可思議な顔をしていると思う。
この二年間の僕の悩みは何だったんだ!
ずっとずっと、僕だけ結婚指輪をしてる状況が寂しかったのに……。
本当は、僕のことを想っての行動だったなんて。
その気持ちが例え恋心じゃなくても、僕は嬉しかった。
さっきまでは優しくされるのが嫌だったのに何でだろう?
今は凄く嬉しい。
顔が勝手にニヤけてしまう。
「んふっ……」
ヤバい、気持ち悪い声が出た。
しかし慎二には、そんなことどうでもいいようで、僕は肩を掴まれた。
「だから那月、結婚してること、言っていいよね?」
「ダメ」
「なんでッ!?」
なんでも何も四日後には離婚するつもりだからです。なんて、言えない。
「だから、もう僕の心配なくていいんだって。僕一人で何とかするか……ら……って、あれ? 慎二その指輪……」
僕の肩を掴んできた手を、片方ずつ外していると、その左手の薬指に指輪が嵌められていた。
僕の指輪とおなじデザインのそれは、慎二の分の結婚指輪だ。
その指輪を嵌めてるってことは、もしかして……。
僕は嫌な予感がした。
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