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最終話
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「ハルサック! 今日はロットと二人で依頼受けてくるね」
ハルサックより先行して歩いていたウィードは隣にいるロットを指さしながら振り返った。
「ほ、本気で言ってんのか? ウィード!」
「え、ダメ?」
「いや……ダメって訳では……」
ロットとパーティーを組むことを決めた次の日、ジンや他のパーティーメンバーと話して、パーティーを脱退することを許して貰えた。実は元々、次の所属先を決めるまでの短い期間だけという話だったので、皆「よかったね」と送り出してくれた。
そして、その日中にパーティーの申請をしに行った。ウィードもロットも本気でハルサックをパーティーに入れるのが嫌だと考えてる訳ではなかった。だから、パーティー申請にはハルサックも連れて行き、三人のパーティーを作った。
ハルサックは泣いて「良かっだ……」と喜んでいた。
強くでられないハルサックを見て、ウィードはやり過ぎたかな? と思った。
その時、ロットがウィードに腕を絡ませてきた。
「仲いいんだな……」
ハルサックがぼそりと呟く。
「うん。ロットくんのこと好きだし」
「俺は?」
「うーーん、どうだろう?」
「そっか、わかった。いってら……俺は帰る」
シュンと背中を丸め、踵を返そうとするハルサックにウィードは慌てて「ごめん、やり過ぎた!」と、駆け寄った。
「嘘だよ、ハルサックも好きだよ」
ウィードは彼の腕を掴む。すると、ハルサックが腕を引き、いつの間にかウィードは彼の腕の中にいた。
「あれ?」
困惑しているとハルサックの顔が近づいている。
「俺、も?」
「あーー、ハルサックが、好きだよ?」
ハルサックはちゅっと音を立てて啄むようなキスをした。
「あーあーあーあー、ハルサック! ここは人の目があるところなんだから別のとこでやってよ! ウィードさんの顔が真っ赤じゃん!」
ロットが人の視線を遮るように、両手を振りながらハルサックの回りを歩く。
「うっせぇ! 恥ずかしがってるだけで嫌がってないから良いじゃねええか! え? もしかして嫌か?」
「少し嫌かなー」
本当はちっとも嫌じゃない。
だって、こうして愛情表現があると、不安にならないですむから。
僕と一緒に居たくないんじゃないか? なんて、考えないですむから。
「す、すまない。じゃあ、帰ったらいっぱいしていいか?」
ウィードはコクコクと頷く。
あれ? でも……。ウィードは疑問に思った。
「やっぱりだめだ」
ウィードは首を横に振る。
「何でーー」
「だってまだ僕たち付き合ってないし、不純じゃない?」
「あ、そうだった……ちょっと待っててくれ」
ウィードは立ち止まり、どこかに駆けていった。戻ってくるとその手には花束があった。彼は跪くと、ウィードを見上げる。
朝の怒号が飛び交う冒険者ギルドの建造物の前。
ハルサックが地面に膝をつけると、辺りは静まり返った。
「好きです。付き合ってください」
手が震えた。声も震える。
よく分かんないけど……なんか泣きそう……。
「こんな僕でいいの?」
「良いに決まってるだろう?」
「僕、まだ惚れ薬抜けきってないけどいいの?」
「問題ない」
「僕、性格……悪いよ? さっきも意地悪しちゃったし」
「大丈夫だ。ウィードは性格悪くない。それに意地悪なお前も好きだ」
「じゃあ……じゃあ……」
ウィードの頬を涙が伝う。
口を開いたら嗚咽してしまいそうで、ウィードは黙り込んでしまった。
ハルサックはそんなウィードを優しく抱き寄せる。
「心配するな。お前の全部が好きだし、何をしでかしてもお前なら嫌いにならないから。だから、大人しく頷いておけ」
「うぅーーーー!」
「あー、泣くな泣くな」
ウィードはハルサックの腕の中で何度も何度も頷いた。
「ハルサックがウィードさんのこと嫌いになることはなくても、その逆はあり得るんじゃない?」
「おいロット、うるさいぞ?」
「はははははー」
ウィードは泣き疲れて、ハルサックの腕の中で眠ってしまった。
その日は解散となり、ハルサックは回りにジロジロ見られながら、ウィードをお姫様抱っこして家まで送った。
ハルサックは有名人だ。それから町中その噂で持ちきりになったのは言うまでもない。
そしてその噂を知ったウィードは恥ずかしくてしばらくの間、家から出られなかったとさ。
《おわり》
ハルサックより先行して歩いていたウィードは隣にいるロットを指さしながら振り返った。
「ほ、本気で言ってんのか? ウィード!」
「え、ダメ?」
「いや……ダメって訳では……」
ロットとパーティーを組むことを決めた次の日、ジンや他のパーティーメンバーと話して、パーティーを脱退することを許して貰えた。実は元々、次の所属先を決めるまでの短い期間だけという話だったので、皆「よかったね」と送り出してくれた。
そして、その日中にパーティーの申請をしに行った。ウィードもロットも本気でハルサックをパーティーに入れるのが嫌だと考えてる訳ではなかった。だから、パーティー申請にはハルサックも連れて行き、三人のパーティーを作った。
ハルサックは泣いて「良かっだ……」と喜んでいた。
強くでられないハルサックを見て、ウィードはやり過ぎたかな? と思った。
その時、ロットがウィードに腕を絡ませてきた。
「仲いいんだな……」
ハルサックがぼそりと呟く。
「うん。ロットくんのこと好きだし」
「俺は?」
「うーーん、どうだろう?」
「そっか、わかった。いってら……俺は帰る」
シュンと背中を丸め、踵を返そうとするハルサックにウィードは慌てて「ごめん、やり過ぎた!」と、駆け寄った。
「嘘だよ、ハルサックも好きだよ」
ウィードは彼の腕を掴む。すると、ハルサックが腕を引き、いつの間にかウィードは彼の腕の中にいた。
「あれ?」
困惑しているとハルサックの顔が近づいている。
「俺、も?」
「あーー、ハルサックが、好きだよ?」
ハルサックはちゅっと音を立てて啄むようなキスをした。
「あーあーあーあー、ハルサック! ここは人の目があるところなんだから別のとこでやってよ! ウィードさんの顔が真っ赤じゃん!」
ロットが人の視線を遮るように、両手を振りながらハルサックの回りを歩く。
「うっせぇ! 恥ずかしがってるだけで嫌がってないから良いじゃねええか! え? もしかして嫌か?」
「少し嫌かなー」
本当はちっとも嫌じゃない。
だって、こうして愛情表現があると、不安にならないですむから。
僕と一緒に居たくないんじゃないか? なんて、考えないですむから。
「す、すまない。じゃあ、帰ったらいっぱいしていいか?」
ウィードはコクコクと頷く。
あれ? でも……。ウィードは疑問に思った。
「やっぱりだめだ」
ウィードは首を横に振る。
「何でーー」
「だってまだ僕たち付き合ってないし、不純じゃない?」
「あ、そうだった……ちょっと待っててくれ」
ウィードは立ち止まり、どこかに駆けていった。戻ってくるとその手には花束があった。彼は跪くと、ウィードを見上げる。
朝の怒号が飛び交う冒険者ギルドの建造物の前。
ハルサックが地面に膝をつけると、辺りは静まり返った。
「好きです。付き合ってください」
手が震えた。声も震える。
よく分かんないけど……なんか泣きそう……。
「こんな僕でいいの?」
「良いに決まってるだろう?」
「僕、まだ惚れ薬抜けきってないけどいいの?」
「問題ない」
「僕、性格……悪いよ? さっきも意地悪しちゃったし」
「大丈夫だ。ウィードは性格悪くない。それに意地悪なお前も好きだ」
「じゃあ……じゃあ……」
ウィードの頬を涙が伝う。
口を開いたら嗚咽してしまいそうで、ウィードは黙り込んでしまった。
ハルサックはそんなウィードを優しく抱き寄せる。
「心配するな。お前の全部が好きだし、何をしでかしてもお前なら嫌いにならないから。だから、大人しく頷いておけ」
「うぅーーーー!」
「あー、泣くな泣くな」
ウィードはハルサックの腕の中で何度も何度も頷いた。
「ハルサックがウィードさんのこと嫌いになることはなくても、その逆はあり得るんじゃない?」
「おいロット、うるさいぞ?」
「はははははー」
ウィードは泣き疲れて、ハルサックの腕の中で眠ってしまった。
その日は解散となり、ハルサックは回りにジロジロ見られながら、ウィードをお姫様抱っこして家まで送った。
ハルサックは有名人だ。それから町中その噂で持ちきりになったのは言うまでもない。
そしてその噂を知ったウィードは恥ずかしくてしばらくの間、家から出られなかったとさ。
《おわり》
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(13件)
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あかつきさん、感想ありがとうございます!(´▽`)
面白いと言っていただけて良かったです。
次回作は今書いて最中ですので、ボツにならなければ近日中に投稿する予定です。時間がある時に読んでいただければ幸いです。
ヒール(ヒーロー)は、猫獣人の話ですかね?本当に申し訳ないのですが、今のところ続きを書く予定がないです……本当に申し訳ない……┏○┓他に書きたい作品がありまして……
ちょっと立て込んで忙しかった1年が終わったので久々に戻ってきたら新作!
面白くて一気読みしてしまいました。
nicoさんご感想ありがとうございます(●︎´▽︎`●︎)
ハルサックがバブちゃん扱いされてるwwww面白すぎるwwwwww
ハルサックの応援もありがとうございます!
nicoさんにそう言って貰えてきっとハルサックもウィードも幸せです。