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第二十話(ハルサック視点)
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『ウィードさんもハルサックさんがいないと寂しそうにしてましたし』
ジンの言葉を思い出してハルサックは、上機嫌になる。
普段なら絶対にしない鼻歌を歌いながら、ジンの家へと向かう。酒屋で話をした後倒れたジンを抱えながら。
彼の家に到着する。
そして、呼び鈴を鳴らした。
すると、バタバタという騒々しく走る音が扉向こうから聞こえた。
「兄さん!!!」
そんな言葉と共に、扉が勢いよく開かれる。出てきたのは、ロットだった。
「ハッ! ハルサック!?!?」
目が会った瞬間、ロットは扉を閉めようとする。
どうやらジンが帰ってきたと思って扉を開けたようだ。
ハルサックは閉じられる扉に足を突っ込んだ。
「おいおいおい、わざわざお前の兄さん送って来てやってんのに、なんで閉めようとすんだ」
扉が足でそれ以上閉められなくなる。
ロットはそれを見ると、扉の取っ手から手を離す。そして、家の中に走って引き返していった。
「なんだあいつ?」
ハルサックはいつもとは違う様子のロットを変に思いながら、家に入った。
ハルサックはジンとロットが兄弟であることも、そして彼らの家の場所も知っていた。
特に変な意味はなく、ロットに初めてウィードをもっと大切にしろと注意されてから、顔も可愛いし彼とはよく話すようになった。
その延長線上で、知っていたのだ。
ハルサックは玄関に入る。
すると端っこの方に大きなリュックが置いてあった。
遠出でもする予定があるんだろうか?
いやそれよりも、早く担いでるジンを下ろしたい。
ハルサックは背中にある成人男性一人分の重みを改めて感じて、そう思った。
確かこの家、リビングにソファがあったよな?
ハルサックはどの部屋が誰のなんの部屋かなんて知らない。だから、リビングに向かった。
すると、リビングへと繋がる扉の前にロットがいる。
「ロット、邪魔だ、どけ」
そこで右往左往するロットを押しのけて扉を開けようとするが、それを遮られた。
「な、なんでリビングに来るんだよ!」
「はぁ? お前の兄さんをソファまで運んでやろうとしてんだろうがよ?」
「だ、ダメだ!」
ロットは両手を広げて仁王立ちをする。
ハルサックはその様子を見てため息をついた。
ロットってこんなやつだったっけか? ああ、もうめんどくせぇ。
「じゃあ、お前の兄さんここに下ろしていいってのかよ?」
「い、い、いいよ!!!」
いいのかよ!!!
ハルサックは絶対にダメだと言われると思っていたので、とてつもなく驚いた。
と、同時に好奇心が湧いてきた。
ロットのこの態度からして、何かハルサックには絶対に見せたくないものがあるのだろう。
それがとてつもなく気になった。
ハルサックは、雑にジンを背中から下ろした。そして、少し遠目の壁に横たわらせた。
「ハルサック、兄さんのことはありがとう。じゃあね」
「いや、帰らねぇけど?」
そうそうに帰らせようとするロットの態度を見て、ハルサックは顔に笑みを張りつけた。
「お前何隠してんだよ?」
「な、何も、か、隠してないけど!?」
「顔に書いてあんだよ、隠し事してますってな」
「な、何を言って……」
「だからどけって!」
「いーやーだー!!!」
少しの間、扉を開けるか開けないかで、押し問答が繰り広げられる。
するとーー
「ロットくん……ロットくん……?」
そんな切なそうな声が扉の奥から聞こえてくる。
この声、は……。
ハルサックは一歩後ずさった。
どうしてここに?
「起きちゃったんですか?」
「ロットくん……どこ? そこにいるの? 僕を一人にしないで?」
扉がゆっくりと開かれる。
「ロットくん、好き……好き……」
上気した頬に潤んだ瞳。そんな色っぽい顔でロットの名前を呼んで、甘えるなんて……。抱きついて、頬をスリスリすり寄らせて……。
信じられない。いや、信じたくない。
しかし何度、目をこすっても見える光景は変わらない。
ハルサックの目の前には、ロットにベタベタと甘えるウィードがいた。
ジンの言葉を思い出してハルサックは、上機嫌になる。
普段なら絶対にしない鼻歌を歌いながら、ジンの家へと向かう。酒屋で話をした後倒れたジンを抱えながら。
彼の家に到着する。
そして、呼び鈴を鳴らした。
すると、バタバタという騒々しく走る音が扉向こうから聞こえた。
「兄さん!!!」
そんな言葉と共に、扉が勢いよく開かれる。出てきたのは、ロットだった。
「ハッ! ハルサック!?!?」
目が会った瞬間、ロットは扉を閉めようとする。
どうやらジンが帰ってきたと思って扉を開けたようだ。
ハルサックは閉じられる扉に足を突っ込んだ。
「おいおいおい、わざわざお前の兄さん送って来てやってんのに、なんで閉めようとすんだ」
扉が足でそれ以上閉められなくなる。
ロットはそれを見ると、扉の取っ手から手を離す。そして、家の中に走って引き返していった。
「なんだあいつ?」
ハルサックはいつもとは違う様子のロットを変に思いながら、家に入った。
ハルサックはジンとロットが兄弟であることも、そして彼らの家の場所も知っていた。
特に変な意味はなく、ロットに初めてウィードをもっと大切にしろと注意されてから、顔も可愛いし彼とはよく話すようになった。
その延長線上で、知っていたのだ。
ハルサックは玄関に入る。
すると端っこの方に大きなリュックが置いてあった。
遠出でもする予定があるんだろうか?
いやそれよりも、早く担いでるジンを下ろしたい。
ハルサックは背中にある成人男性一人分の重みを改めて感じて、そう思った。
確かこの家、リビングにソファがあったよな?
ハルサックはどの部屋が誰のなんの部屋かなんて知らない。だから、リビングに向かった。
すると、リビングへと繋がる扉の前にロットがいる。
「ロット、邪魔だ、どけ」
そこで右往左往するロットを押しのけて扉を開けようとするが、それを遮られた。
「な、なんでリビングに来るんだよ!」
「はぁ? お前の兄さんをソファまで運んでやろうとしてんだろうがよ?」
「だ、ダメだ!」
ロットは両手を広げて仁王立ちをする。
ハルサックはその様子を見てため息をついた。
ロットってこんなやつだったっけか? ああ、もうめんどくせぇ。
「じゃあ、お前の兄さんここに下ろしていいってのかよ?」
「い、い、いいよ!!!」
いいのかよ!!!
ハルサックは絶対にダメだと言われると思っていたので、とてつもなく驚いた。
と、同時に好奇心が湧いてきた。
ロットのこの態度からして、何かハルサックには絶対に見せたくないものがあるのだろう。
それがとてつもなく気になった。
ハルサックは、雑にジンを背中から下ろした。そして、少し遠目の壁に横たわらせた。
「ハルサック、兄さんのことはありがとう。じゃあね」
「いや、帰らねぇけど?」
そうそうに帰らせようとするロットの態度を見て、ハルサックは顔に笑みを張りつけた。
「お前何隠してんだよ?」
「な、何も、か、隠してないけど!?」
「顔に書いてあんだよ、隠し事してますってな」
「な、何を言って……」
「だからどけって!」
「いーやーだー!!!」
少しの間、扉を開けるか開けないかで、押し問答が繰り広げられる。
するとーー
「ロットくん……ロットくん……?」
そんな切なそうな声が扉の奥から聞こえてくる。
この声、は……。
ハルサックは一歩後ずさった。
どうしてここに?
「起きちゃったんですか?」
「ロットくん……どこ? そこにいるの? 僕を一人にしないで?」
扉がゆっくりと開かれる。
「ロットくん、好き……好き……」
上気した頬に潤んだ瞳。そんな色っぽい顔でロットの名前を呼んで、甘えるなんて……。抱きついて、頬をスリスリすり寄らせて……。
信じられない。いや、信じたくない。
しかし何度、目をこすっても見える光景は変わらない。
ハルサックの目の前には、ロットにベタベタと甘えるウィードがいた。
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