相方に冒険者パーティー解消したいと言ったらブチ切れられた

人生1919回血迷った人

文字の大きさ
上 下
20 / 25

第二十話(ハルサック視点)

しおりを挟む
『ウィードさんもハルサックさんがいないと寂しそうにしてましたし』

 ジンの言葉を思い出してハルサックは、上機嫌になる。

 普段なら絶対にしない鼻歌を歌いながら、ジンの家へと向かう。酒屋で話をした後倒れたジンを抱えながら。

 彼の家に到着する。
 そして、呼び鈴を鳴らした。

 すると、バタバタという騒々しく走る音が扉向こうから聞こえた。

「兄さん!!!」

 そんな言葉と共に、扉が勢いよく開かれる。出てきたのは、ロットだった。

「ハッ! ハルサック!?!?」

 目が会った瞬間、ロットは扉を閉めようとする。
 どうやらジンが帰ってきたと思って扉を開けたようだ。

 ハルサックは閉じられる扉に足を突っ込んだ。
 
「おいおいおい、わざわざお前の兄さん送って来てやってんのに、なんで閉めようとすんだ」

 扉が足でそれ以上閉められなくなる。
 ロットはそれを見ると、扉の取っ手から手を離す。そして、家の中に走って引き返していった。

「なんだあいつ?」

 ハルサックはいつもとは違う様子のロットを変に思いながら、家に入った。

 ハルサックはジンとロットが兄弟であることも、そして彼らの家の場所も知っていた。
 特に変な意味はなく、ロットに初めてウィードをもっと大切にしろと注意されてから、顔も可愛いし彼とはよく話すようになった。
 その延長線上で、知っていたのだ。

 ハルサックは玄関に入る。
 すると端っこの方に大きなリュックが置いてあった。
 遠出でもする予定があるんだろうか?

 いやそれよりも、早く担いでるジンを下ろしたい。
 ハルサックは背中にある成人男性一人分の重みを改めて感じて、そう思った。

 確かこの家、リビングにソファがあったよな?

 ハルサックはどの部屋が誰のなんの部屋かなんて知らない。だから、リビングに向かった。

 すると、リビングへと繋がる扉の前にロットがいる。

「ロット、邪魔だ、どけ」

 そこで右往左往するロットを押しのけて扉を開けようとするが、それを遮られた。

「な、なんでリビングに来るんだよ!」
「はぁ? お前の兄さんをソファまで運んでやろうとしてんだろうがよ?」
「だ、ダメだ!」

 ロットは両手を広げて仁王立ちをする。
 ハルサックはその様子を見てため息をついた。

 ロットってこんなやつだったっけか? ああ、もうめんどくせぇ。

「じゃあ、お前の兄さんここに下ろしていいってのかよ?」
「い、い、いいよ!!!」

 いいのかよ!!!

 ハルサックは絶対にダメだと言われると思っていたので、とてつもなく驚いた。
 と、同時に好奇心が湧いてきた。

 ロットのこの態度からして、何かハルサックには絶対に見せたくないものがあるのだろう。

 それがとてつもなく気になった。

 ハルサックは、雑にジンを背中から下ろした。そして、少し遠目の壁に横たわらせた。

「ハルサック、兄さんのことはありがとう。じゃあね」
「いや、帰らねぇけど?」

 そうそうに帰らせようとするロットの態度を見て、ハルサックは顔に笑みを張りつけた。

「お前何隠してんだよ?」
「な、何も、か、隠してないけど!?」
「顔に書いてあんだよ、隠し事してますってな」
「な、何を言って……」
「だからどけって!」
「いーやーだー!!!」

 少しの間、扉を開けるか開けないかで、押し問答が繰り広げられる。

 するとーー

「ロットくん……ロットくん……?」

 そんな切なそうな声が扉の奥から聞こえてくる。

 この声、は……。

 ハルサックは一歩後ずさった。

 どうしてここに?

「起きちゃったんですか?」
「ロットくん……どこ? そこにいるの? 僕を一人にしないで?」

 扉がゆっくりと開かれる。

「ロットくん、好き……好き……」

 上気した頬に潤んだ瞳。そんな色っぽい顔でロットの名前を呼んで、甘えるなんて……。抱きついて、頬をスリスリすり寄らせて……。

 信じられない。いや、信じたくない。

 しかし何度、目をこすっても見える光景は変わらない。

 ハルサックの目の前には、ロットにベタベタと甘えるウィードがいた。
 
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

何でもできる幼馴染への告白を邪魔してみたら

たけむら
BL
何でもできる幼馴染への告白を邪魔してみたら 何でも出来る美形男子高校生(17)×ちょっと詰めが甘い平凡な男子高校生(17)が、とある生徒からの告白をきっかけに大きく関係が変わる話。 特に秀でたところがない花岡李久は、何でもできる幼馴染、月野秋斗に嫉妬して、日々何とか距離を取ろうと奮闘していた。それにも関わらず、その幼馴染に恋人はいるのか、と李久に聞いてくる人が後を絶たない。魔が差した李久は、ある日嘘をついてしまう。それがどんな結果になるのか、あまり考えもしないで… *別タイトルでpixivに掲載していた作品をこちらでも公開いたしました。

シャルルは死んだ

ふじの
BL
地方都市で理髪店を営むジルには、秘密がある。実はかつてはシャルルという名前で、傲慢な貴族だったのだ。しかし婚約者であった第二王子のファビアン殿下に嫌われていると知り、身を引いて王都を四年前に去っていた。そんなある日、店の買い出しで出かけた先でファビアン殿下と再会し──。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

ラストダンスは僕と

中屋沙鳥
BL
ブランシャール公爵令息エティエンヌは三男坊の気楽さから、領地で植物の品種改良をして生きるつもりだった。しかし、第二王子パトリックに気に入られて婚約者候補になってしまう。側近候補と一緒にそれなりに仲良く学院に通っていたが、ある日聖女候補の男爵令嬢アンヌが転入してきて……/王子×公爵令息/異世界転生を匂わせていますが、作品中では明らかになりません。完結しました。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

かくして王子様は彼の手を取った

亜桜黄身
BL
麗しい顔が近づく。それが挨拶の距離感ではないと気づいたのは唇同士が触れたあとだった。 「男を簡単に捨ててしまえるだなどと、ゆめゆめ思わないように」 ── 目が覚めたら異世界転生してた外見美少女中身男前の受けが、計算高い腹黒婚約者の攻めに婚約破棄を申し出てすったもんだする話。 腹黒で策士で計算高い攻めなのに受けが鈍感越えて予想外の方面に突っ走るから受けの行動だけが読み切れず頭掻きむしるやつです。 受けが同性に性的な意味で襲われる描写があります。

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

処理中です...