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第十八話
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ウィードはロットから視線を逸らした。彼の顔の圧が凄い。
すると彼は、体を移動させてウィードの視線の先に回り込んだ。
「ウィードさん?」
ロットは、ウィードの顔を下から覗き込んでくる。
「ダメですか?」
「……ダメっ、というかなんというか」
ハルサックから離れたいと思っているのは本当だ。しかし同時に、ハルサックから離れたくないという気持ちも自分の中にはある。
ウィードは、どこか今の状況に安堵してた。
自分から離れたいと言い出したにも関わらず、ハルサックがそれに抵抗してくれたことにどこか嬉しさを感じていたのだ。
幼少期、親と暮らしていた頃、自分自身でさえ自分が苦しんでいることに気が付かなかった。
そんな時現れたのがハルサックで、彼は僕の為に貴族と対立することも厭わずにあの家から連れ出してくれた。
いくら父の爵位が男爵と低くても、貴族の権力は大きい。それも元々問題児のハルサックは色んな場所から目をつけられていた。
それに、僕だって家から離れることを嫌がって彼の足を引っ張った。
そんな苦労を全て一手に引き受けて、本当に僕の為になることを彼はしてくれていた。
彼は僕にとっての英雄だ。
だからこそ、今回のことで受けたショックは大きかったし、何もかも全てリセットしてしまいたいとも一度は思った。
けれどーー
「やっぱり嫌かなぁ」
ウィードはうんざりしながら、ロットに答える。
どっちつかずの自分に本当にうんざりする。
それならいっそのこと、ハルサックに自分から謝り、もう一度パーティーを組んでもらう方がマシかもしれない。
そんなことを真面目に考えていると、二の腕を掴まれた。
見れば、ロットが目の前で俯いている。
「……どうしたーー」
「なんでですか!?!?!?」
耳をつんざくような声の大きさだった。
ウィードは反射で目を眇める。
ロットはゆっくりと顔を上げた。
「どうして嫌なんですか? 僕のこと嫌いですか? いや、僕のことはどうでもいいです。でもハルサックからは早く逃げた方がいいです!」
聞いてる側の頭がぐわんぐわんする程にロットは言葉をまくし立てた。
しかし一度言葉を止めると、二の腕を掴む力が弱くなる。
「あんな奴の近くにいたら、ウィードさんが不幸になってしまいます……」
ロットの表情は苦しそうだった。
二の腕を掴む手もいつの間にかずり落ちて、手首を掴んでいる。
彼は何故ここまで必死になっているんだろう?
その時、手の甲が濡れた。
「……泣いてるの?」
「な゛い゛て゛ま゛せ゛ん゛ん゛」
「いや、泣いてるでしょ」
ウィードはハンカチでロットの涙を拭いてあげる。
ロットは鼻声で礼を言った。
ロットが少し落ち着いたのを見て、ウィードは口を開いた。
「僕の為……に言ってくれてるんだよね?」
「はい」
「ロットくんは、なんでそこまで僕のことを考えてくれるの?」
「それはですねーー」
ロットは音を大きく鳴らして鼻をかむ。
「ウィードさんに命を救われたからです」
そう言ってロットはその当時のことを語ってくれた。
すると彼は、体を移動させてウィードの視線の先に回り込んだ。
「ウィードさん?」
ロットは、ウィードの顔を下から覗き込んでくる。
「ダメですか?」
「……ダメっ、というかなんというか」
ハルサックから離れたいと思っているのは本当だ。しかし同時に、ハルサックから離れたくないという気持ちも自分の中にはある。
ウィードは、どこか今の状況に安堵してた。
自分から離れたいと言い出したにも関わらず、ハルサックがそれに抵抗してくれたことにどこか嬉しさを感じていたのだ。
幼少期、親と暮らしていた頃、自分自身でさえ自分が苦しんでいることに気が付かなかった。
そんな時現れたのがハルサックで、彼は僕の為に貴族と対立することも厭わずにあの家から連れ出してくれた。
いくら父の爵位が男爵と低くても、貴族の権力は大きい。それも元々問題児のハルサックは色んな場所から目をつけられていた。
それに、僕だって家から離れることを嫌がって彼の足を引っ張った。
そんな苦労を全て一手に引き受けて、本当に僕の為になることを彼はしてくれていた。
彼は僕にとっての英雄だ。
だからこそ、今回のことで受けたショックは大きかったし、何もかも全てリセットしてしまいたいとも一度は思った。
けれどーー
「やっぱり嫌かなぁ」
ウィードはうんざりしながら、ロットに答える。
どっちつかずの自分に本当にうんざりする。
それならいっそのこと、ハルサックに自分から謝り、もう一度パーティーを組んでもらう方がマシかもしれない。
そんなことを真面目に考えていると、二の腕を掴まれた。
見れば、ロットが目の前で俯いている。
「……どうしたーー」
「なんでですか!?!?!?」
耳をつんざくような声の大きさだった。
ウィードは反射で目を眇める。
ロットはゆっくりと顔を上げた。
「どうして嫌なんですか? 僕のこと嫌いですか? いや、僕のことはどうでもいいです。でもハルサックからは早く逃げた方がいいです!」
聞いてる側の頭がぐわんぐわんする程にロットは言葉をまくし立てた。
しかし一度言葉を止めると、二の腕を掴む力が弱くなる。
「あんな奴の近くにいたら、ウィードさんが不幸になってしまいます……」
ロットの表情は苦しそうだった。
二の腕を掴む手もいつの間にかずり落ちて、手首を掴んでいる。
彼は何故ここまで必死になっているんだろう?
その時、手の甲が濡れた。
「……泣いてるの?」
「な゛い゛て゛ま゛せ゛ん゛ん゛」
「いや、泣いてるでしょ」
ウィードはハンカチでロットの涙を拭いてあげる。
ロットは鼻声で礼を言った。
ロットが少し落ち着いたのを見て、ウィードは口を開いた。
「僕の為……に言ってくれてるんだよね?」
「はい」
「ロットくんは、なんでそこまで僕のことを考えてくれるの?」
「それはですねーー」
ロットは音を大きく鳴らして鼻をかむ。
「ウィードさんに命を救われたからです」
そう言ってロットはその当時のことを語ってくれた。
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