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第十六話
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ジンがギルドの受付から依頼達成報告を終え、戻ってきた。
「じゃあ、今日はこれで解散ということで」
ジンも含めたパーティーメンバーはそれに頷く。
「じゃあ、また明日。今日と同じ時間に集合だよ」
ジンがそういうと、メンバーそれぞれが返事をしてバラバラに帰路につき始めた。
ジンは小走りでいつもと向かう方向とは別の、建物の陰に消えていった。
誰かと約束でもしているんだろうか?
ウィードは、少し気になって後ろを着いて行き、物陰から除くと、そこにはハルサックがいた。
ウィードがハルサックとパーティーを解消してから一ヶ月経った。
あの日あの後、勢いでハルサックに言い過ぎたと反省した。しかし、今更僕の言葉を気にする人でもないだろうとも思っていた。
だからまた、何も考えずに僕に話しかけてくるのだろう。
そう思っていた。
しかし、あの日からウィードは一度もハルサックに話しかけられていない。
たまに後ろをハルサックに着けられているのか、視線を感じることがあるが、それだけだ。
ハルサックは遠巻きにウィードのことを見るようになった。
ジンがハルサックとよく飲みに行っているのもそのひとつなのかもしれない。
ハルサックは今、何を思っているんだろう?
僕の言葉で深く心を傷つけてしまったんだろうか?
最近、不眠で眠れてないという噂を聞くが、体調は大丈夫だろうか?
最近のウィードの頭の中は、ハルサックのことでいっぱいだった。
ハルサックから離れようと決心したのに、離れたら離れたで彼のことをずっと考えてしまう。
彼のことをふと探してしまうのも、離れる為にパーティーを解消したのに活動拠点を変えないのもーー
一重に僕の未練が意地汚いからだった。
ウィードは、ジンとハルサックの後を追おうとする。
しかし、そんなウィードの足を止めた人物がいた。
「ウィードさんッ」
手を掴まれた。
振り返るとそこにはロットがいた。
彼は一か月前、ウィードがハルサックにパーティーを解消したいと伝えた日に、ハルサックと依頼を受けていた少年だ。
実はジンの弟で、最近では少し交流がある。
ハルサックとはどんな関係だったのかそれとなく話を聞いてみたことがあるのだが、そんなに仲が良いわけではないらしい。
依頼もあれ以来ハルサックと受けたことはないという話だった。
「あのっ、お話したいんですけど、時間取って貰えませんか?」
ロットの身長は小さく、そして顔は可愛らしい。
ウィードは、ハルサックがロットに腕を絡ませていたことを思い出した。
ハルサックは僕のことを好きだと言っていた。
でもやっぱり、こういう可愛い人の方がいいんじゃないだろうか?
好きだと告白しても、怒り散らかして未だに返事もしない僕なんか相応しくないだろう。
今まで隣にいられたことの方がおかしいのだから。
「ウィードさん?」
ロットが首を傾げてウィードの顔を覗き込んでくる。
ウィードは名前を呼ばれてやっと、自分が考え込んでいたことに気づいた。
「あっ、うん。話をするんだっけ? いいよ?」
胸が苦しい。
この気持ちはなんだろう……嫉妬?
せり上がってきた不快な感覚が目の前のロットに向かってしまいそうでウィードは怖くなった。
呼吸を一度深く吸い、気持ちを落ち着かせ、理性を強化する。
「いいんですか!? やったー!」
ロットは第一印象の擦れた感じとは打って変わって、何の裏も感じさせない無邪気な笑みを浮かべた。
それを見てウィードは更に嫌な気持ちになる。
自分も無邪気に慕ってくれる子に、僕はなんて嫌な感情を抱いているんだろう?
なるべくその感情を表に出さないように、顔に笑みを貼り付ける。
「じゃあ、どこで話す? ここ? それとも、お店? 僕あまりそういう場所選びとか得意じゃないんだけど……」
「僕の家はどうですか? 遠くないですし」
「家? お邪魔していいの?」
「はい、ぜひ来てください」
ロットくんの家ということは、ジンさんの家でもあるということだ。
ジンさんがどんな家に住んでいるのか気になる……。
二人はロットの家へと向かった。
「じゃあ、今日はこれで解散ということで」
ジンも含めたパーティーメンバーはそれに頷く。
「じゃあ、また明日。今日と同じ時間に集合だよ」
ジンがそういうと、メンバーそれぞれが返事をしてバラバラに帰路につき始めた。
ジンは小走りでいつもと向かう方向とは別の、建物の陰に消えていった。
誰かと約束でもしているんだろうか?
ウィードは、少し気になって後ろを着いて行き、物陰から除くと、そこにはハルサックがいた。
ウィードがハルサックとパーティーを解消してから一ヶ月経った。
あの日あの後、勢いでハルサックに言い過ぎたと反省した。しかし、今更僕の言葉を気にする人でもないだろうとも思っていた。
だからまた、何も考えずに僕に話しかけてくるのだろう。
そう思っていた。
しかし、あの日からウィードは一度もハルサックに話しかけられていない。
たまに後ろをハルサックに着けられているのか、視線を感じることがあるが、それだけだ。
ハルサックは遠巻きにウィードのことを見るようになった。
ジンがハルサックとよく飲みに行っているのもそのひとつなのかもしれない。
ハルサックは今、何を思っているんだろう?
僕の言葉で深く心を傷つけてしまったんだろうか?
最近、不眠で眠れてないという噂を聞くが、体調は大丈夫だろうか?
最近のウィードの頭の中は、ハルサックのことでいっぱいだった。
ハルサックから離れようと決心したのに、離れたら離れたで彼のことをずっと考えてしまう。
彼のことをふと探してしまうのも、離れる為にパーティーを解消したのに活動拠点を変えないのもーー
一重に僕の未練が意地汚いからだった。
ウィードは、ジンとハルサックの後を追おうとする。
しかし、そんなウィードの足を止めた人物がいた。
「ウィードさんッ」
手を掴まれた。
振り返るとそこにはロットがいた。
彼は一か月前、ウィードがハルサックにパーティーを解消したいと伝えた日に、ハルサックと依頼を受けていた少年だ。
実はジンの弟で、最近では少し交流がある。
ハルサックとはどんな関係だったのかそれとなく話を聞いてみたことがあるのだが、そんなに仲が良いわけではないらしい。
依頼もあれ以来ハルサックと受けたことはないという話だった。
「あのっ、お話したいんですけど、時間取って貰えませんか?」
ロットの身長は小さく、そして顔は可愛らしい。
ウィードは、ハルサックがロットに腕を絡ませていたことを思い出した。
ハルサックは僕のことを好きだと言っていた。
でもやっぱり、こういう可愛い人の方がいいんじゃないだろうか?
好きだと告白しても、怒り散らかして未だに返事もしない僕なんか相応しくないだろう。
今まで隣にいられたことの方がおかしいのだから。
「ウィードさん?」
ロットが首を傾げてウィードの顔を覗き込んでくる。
ウィードは名前を呼ばれてやっと、自分が考え込んでいたことに気づいた。
「あっ、うん。話をするんだっけ? いいよ?」
胸が苦しい。
この気持ちはなんだろう……嫉妬?
せり上がってきた不快な感覚が目の前のロットに向かってしまいそうでウィードは怖くなった。
呼吸を一度深く吸い、気持ちを落ち着かせ、理性を強化する。
「いいんですか!? やったー!」
ロットは第一印象の擦れた感じとは打って変わって、何の裏も感じさせない無邪気な笑みを浮かべた。
それを見てウィードは更に嫌な気持ちになる。
自分も無邪気に慕ってくれる子に、僕はなんて嫌な感情を抱いているんだろう?
なるべくその感情を表に出さないように、顔に笑みを貼り付ける。
「じゃあ、どこで話す? ここ? それとも、お店? 僕あまりそういう場所選びとか得意じゃないんだけど……」
「僕の家はどうですか? 遠くないですし」
「家? お邪魔していいの?」
「はい、ぜひ来てください」
ロットくんの家ということは、ジンさんの家でもあるということだ。
ジンさんがどんな家に住んでいるのか気になる……。
二人はロットの家へと向かった。
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