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第十五話(ハルサック視点)
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帰り道。
ハルサックとジンの家は、途中まで同じ方向の為、二人で並んで歩く。
そうしてしばらく歩いていたら、ジンが唐突に足を止めた。
ハルサックは少ししてそれに気づく。
「ジン? どうした?」
ジンの方へ振り返る。
すると、思ったよりもジンとの距離は近かった。
「ハルサックさん」
「なんだ?」
ジンは一度、深く呼吸をした。
そして少し逡巡したような様子を見せて、口を開いた。
「あなたがウィードさんを諦めるなら、僕が彼を貰っても構いませんよね?」
ハルサックは一瞬何を言われたのか分からなかった。
数秒時間をおいてやっとその意味を咀嚼することが出来た。
こいつ……よく俺にそんなこと言えたな?
「ふざけてんじゃねえぞ?」
頭の血管がブチ切れそうだ。
ハルサックはウィードと仲違いしてから、よく眠れていない。
ウィードが唐突に消えてしまう夢。
ウィードがどこの馬の骨とも分からないような男の隣を楽しそうに歩く夢。
ウィードが魔物との交戦中に死んだと報告を受ける夢。
そんな悪夢が毎晩のようにハルサックを襲う。
不安で不安で仕方がない。
しかし、自分はウィードの近くにいない方が良い人間であることをあの日、ハルサックは十分すぎるほどに理解した。
苦しいのだ。
元の関係に戻りたい。出来ることなら恋人関係にだってなりたい。
ウィードがいないと、不安で心配で苦しくて寂しくて生きた心地がしない。
しかし、彼の傍を自分は離れるべきなのだ。
ハルサックはこの一ヶ月、自分にそう言い聞かせてきた。
それなのに目の前のこいつは自分のその理性をぶっ壊そうとしてくる。
それにイラついてイラついて仕方がない。
「俺に発破をかけんじゃねえ。これ以上やったらぶっ殺してやるからな」
ハルサックは拳を血がにじむほど握りしめ、意図せず殺気が漏れ出した。
「いや……これはちょっと洒落にならないな……」
ジンは全身が震え、慌ててハルサックから距離を取ろうとした。
しかし、足に力が入らなくなりその場で地べたに座り込んだ。
「ハルサックさん……野暮なことしてすみませんでした。僕はウィードさんに恋愛感情をもったりはしていません」
ジンは、震えで上手く回らない口を必死に開いた。
ハルサックはしばらく難しい顔をしてジンを見つめると、殺気をなくした。
「殺気引っ込めてくださってありがとうございます」
ジンは頭を下げる。
そして言葉を続ける。
ジンの顔色は今にもぶっ倒れそうなほど青白くなっていた。
「ただ、気絶する前にこれだけ言わせて下さい」
ハルサックは今度は何を言うんだと身を構えた。
今の自分が暴走したら、何をしでかすか分からないから。
身体に力を入れる。
「なんだ?」
ハルサックが聞くと、ジンはゆっくり目を瞑って話し出した。
「ウィードさんを狙ってる人は色んな意味で沢山います。今まではハルサックさんが近くに居て防波堤代わりになっていましたが、今は違う。あんなに魅力的な人を周りが放っておくはずがありません」
ジンはそこで一度言葉を区切ると、小難しい顔をする。
「それに、ハルサックさんに恨みを持つ人が、ウィードさんを利用しようと考えてもおかしくありません。だから僕は、ハルサックさんにウィードさんを守って欲しいと思いました」
「……俺のせいで……またウィードが……」
また、自分自身へのいらだちが募る。
俺は、何度ウィードを傷つけるんだ……。
「それに、ウィードさんもハルサックさんが居ないと寂しそうに……して……ましたし……」
「それッ、ほんとうか!?!?」
ハルサックは自分の体重を支えきれずにバタリと倒れたジンの身体を揺する。しかし、彼は気絶してしまっていた。
たたき起こしたい気持ちに駆られるが、さすがに辞めた。
ハルサックはジンをおぶって彼の家へと向かった。
ハルサックとジンの家は、途中まで同じ方向の為、二人で並んで歩く。
そうしてしばらく歩いていたら、ジンが唐突に足を止めた。
ハルサックは少ししてそれに気づく。
「ジン? どうした?」
ジンの方へ振り返る。
すると、思ったよりもジンとの距離は近かった。
「ハルサックさん」
「なんだ?」
ジンは一度、深く呼吸をした。
そして少し逡巡したような様子を見せて、口を開いた。
「あなたがウィードさんを諦めるなら、僕が彼を貰っても構いませんよね?」
ハルサックは一瞬何を言われたのか分からなかった。
数秒時間をおいてやっとその意味を咀嚼することが出来た。
こいつ……よく俺にそんなこと言えたな?
「ふざけてんじゃねえぞ?」
頭の血管がブチ切れそうだ。
ハルサックはウィードと仲違いしてから、よく眠れていない。
ウィードが唐突に消えてしまう夢。
ウィードがどこの馬の骨とも分からないような男の隣を楽しそうに歩く夢。
ウィードが魔物との交戦中に死んだと報告を受ける夢。
そんな悪夢が毎晩のようにハルサックを襲う。
不安で不安で仕方がない。
しかし、自分はウィードの近くにいない方が良い人間であることをあの日、ハルサックは十分すぎるほどに理解した。
苦しいのだ。
元の関係に戻りたい。出来ることなら恋人関係にだってなりたい。
ウィードがいないと、不安で心配で苦しくて寂しくて生きた心地がしない。
しかし、彼の傍を自分は離れるべきなのだ。
ハルサックはこの一ヶ月、自分にそう言い聞かせてきた。
それなのに目の前のこいつは自分のその理性をぶっ壊そうとしてくる。
それにイラついてイラついて仕方がない。
「俺に発破をかけんじゃねえ。これ以上やったらぶっ殺してやるからな」
ハルサックは拳を血がにじむほど握りしめ、意図せず殺気が漏れ出した。
「いや……これはちょっと洒落にならないな……」
ジンは全身が震え、慌ててハルサックから距離を取ろうとした。
しかし、足に力が入らなくなりその場で地べたに座り込んだ。
「ハルサックさん……野暮なことしてすみませんでした。僕はウィードさんに恋愛感情をもったりはしていません」
ジンは、震えで上手く回らない口を必死に開いた。
ハルサックはしばらく難しい顔をしてジンを見つめると、殺気をなくした。
「殺気引っ込めてくださってありがとうございます」
ジンは頭を下げる。
そして言葉を続ける。
ジンの顔色は今にもぶっ倒れそうなほど青白くなっていた。
「ただ、気絶する前にこれだけ言わせて下さい」
ハルサックは今度は何を言うんだと身を構えた。
今の自分が暴走したら、何をしでかすか分からないから。
身体に力を入れる。
「なんだ?」
ハルサックが聞くと、ジンはゆっくり目を瞑って話し出した。
「ウィードさんを狙ってる人は色んな意味で沢山います。今まではハルサックさんが近くに居て防波堤代わりになっていましたが、今は違う。あんなに魅力的な人を周りが放っておくはずがありません」
ジンはそこで一度言葉を区切ると、小難しい顔をする。
「それに、ハルサックさんに恨みを持つ人が、ウィードさんを利用しようと考えてもおかしくありません。だから僕は、ハルサックさんにウィードさんを守って欲しいと思いました」
「……俺のせいで……またウィードが……」
また、自分自身へのいらだちが募る。
俺は、何度ウィードを傷つけるんだ……。
「それに、ウィードさんもハルサックさんが居ないと寂しそうに……して……ましたし……」
「それッ、ほんとうか!?!?」
ハルサックは自分の体重を支えきれずにバタリと倒れたジンの身体を揺する。しかし、彼は気絶してしまっていた。
たたき起こしたい気持ちに駆られるが、さすがに辞めた。
ハルサックはジンをおぶって彼の家へと向かった。
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