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第十二話(ハルサック視点)

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「えーっと、僕は何でまたまたまた、呼ばれたんでしょうかね? ハルサックさん?」

 目の前の席に座り、ジョッキを片手に目を眇めてくるのはジン。
 この街で有名なAランクパーティーのリーダー務める男だ。

 ギルドのカウンターで依頼達成の報告をしていたところを捕まえてきた。
 そして、ハルサックの行きつけの酒屋に入り、酒を注文してテーブルに着いたのがついさっき。

「何でも何も言わなくても分かるだろう?」
「まあ、分かりますけどね? ウィードさんのことでしょう?」
「ああ、そうだ。分かってんじゃねえか」
「そりゃ分かりますよ。こう何度も連れ去られて、ウィードさんの様子を聞かれたら」

 ハルサックがジンをこうして酒場に連れてくるのは初めてではなかった。
 一か月前のあの日、ウィードはハルサックとパーティーを解消して、ジンのいるパーティーへと入った。
 パーティーの解消を了承したハルサックだが、それからウィードのことが気になって気になって仕方がなくなっていった。
 だから、ジンを無理矢理酒屋に連れ去って何度かウィードの話を聞いていた。
 
「でも、変わった様子は特にないですよ?」
「本当か?」
「はい。つい四日前にもお話した通り、特に何もないです」

 ジンはうんざりした様子で話す。
 つい一か月前は、ハルサックに萎縮していたジンも、今やガキを相手にしてるみたいで疲れるとついこの間ボヤいていた。
 しかしハルサックはそんなことを気にしない。

「本当に本当か? 体調は悪そうにしてないか? 元気か? 怪我はしてないか? 無理はさせてないだろうな?」

 ガタリと席を下げ、ジンに顔を近づける。
 そんなハルサックの顔をジンは右手で押さえた。

「はいはい、僕から見た感じは大丈夫でしたよ。少なくともハルサックさんとパーティーを組んでいた時よりは顔色がいいんじゃないですか?」

 ふはっと、ジンは笑った。

「そうかよ……てめぇ、ちゃんとウィードのこと見てんだろうなぁ?」

 ハルサックはジンに煽られたことで手が出そうになった。しかし、必死に理性を引っ張り出して引っ込める。
 そして、変わりに眼光で鋭く睨みつけた。

「うーん」

 ジンは自身の顎を摘んで、考え込んだかと思えば、パッと話す。

「分かりません」
「おいっ、てめぇーー」
「というか、リーダーとはいえパーティーメンバーのことを完璧に把握しているわけじゃないんですよ。その必要もないですし」

 ジンは、ハルサックの反応を無視して話し続ける。

「ハルサックさんとウィードさんがパーティーを組んでいる時もそうだったんじゃないですか? 必要なのは仲間に対する不満や自身の体調不良を躊躇いなく言える信頼関係を作ることです」

 ハルサックはその言葉にドキリとした。
 数ヶ月前に一度、遠出の依頼を受けた時に、帰りにウィードが熱を出した。
 その時のウィードは「大丈夫」と言い張り、ハルサックをそれを真に受けて、あまり気にしなかったが、本当は辛かったんじゃないだろうか?

「だから、これからウィードさんのことは、僕に聞くんじゃなくて、本人に聞いてください」

 ジンはそれを言った瞬間、テーブルお金を置き、立ち上がった。

「おいおいおい、どこに行くつもりだ!? まだ話は終わってない!」

 ハルサックの方を見たジンは、本気で立ち去る気はなかったようで、ため息をついて、椅子に再び腰かけた。
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