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第九話
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少し歩き、人が来なさそうで尚且つ開けた場所を見つける。
ウィードはそこでハルサックの手をパッと離した。
「それで? なんなの?」
少し距離を空けて、対峙する。
彼は、ウィードから顔を背けてだんまりだ。
なんなの?
さっきまであれだけ僕のこと邪魔してきたくせに、説明もなしなの?
そもそも、自分はあれだけ色んな人と依頼受けておいて僕はダメって何?
僕のこと放置してたくせにこんな時だけ出てきて何がしたいの?
僕の中に、怒りなのか寂しさなのか、無性に気持ち悪い感情が湧き上がる。
それを吐き出すように、大きなため息をついた。
「何もないなら僕行くけど?」
先程歩いてきた道を指さした。
僕は彼に変わって欲しいわけじゃない。ただ、自分の自由が欲しいだけだ。
だから彼が邪魔してこないならそれで良い。
「いや、待ってくれ」
ハルサックがウィードの進行方向を塞いだ。そして、やっと口を開いたかと思えば、
「ウィード、お前、ジンのパーティーに入ろうとか思ってないだろうな?」
なんてことを言う。
僕は一度「あーーー」と考え込み、そして、彼の言葉の意図をある程度推察することができた。
「あはっ、あははははっ!」
ウィードは腹を抱えて笑った。
面白くない。
面白くない。
面白くない。
あー、結局君もそうなのか。
僕のこと嫌いじゃないのに、僕に執着して、こんなところまで追いかけてきてーー
ここまで来れば、僕にもなんとなく分かってきた。
ハルサックには、悪気がないのだろう。僕が嫌がっていたことにも気づいていないのかもしれない。
だって彼には、幼稚なところがあり、人の気持ちもわからないところがあるから。
昔は、彼のそんなところも好きだった。いやそれは、今もそんなに変わらないかもしれない。
しかし今は、それ以上に失望の色が濃かった。
ウィードは一通り笑うと、そのまま笑みを顔に張りつけた。
「ねぇ、ハルサック。僕のことおもちゃにして楽しい?」
ハルサックの腕を取って、約一週間前の彼がロットにしていたように腕を絡ませた。
「は?」
ハルサックは、心底意味がわからないといったような呆けた顔をした。
あー、こんなこと言いたいわけじゃないのに。
僕にだって悪いところはある。この状況の全てがハルサックに責任があるとも思っていない。
僕の中の良心は、僕にそう訴えかける。
しかしそれでも、彼の思考がある程度読めてしまった今、僕の行動は感情的にならざるを得なかった。
「おも……ちゃ? いやいやいや、ウィードのことをおもちゃとか思ったことねぇよ?」
「へぇ、そうなんだ」
空返事だった。
ああ、好きだ。
気持ち悪い。
嫌いだ。
でも、好きだ。
それでもやっぱり、嫌いだ。
ああ、…………恨めしい。
「じゃあ、何? おもちゃでも、嫌いでもないなら、なんなのさ?」
「それは……それは……」
ハルサックは、右へ左へ視線を動かす。しかも、そんなデカい図体を持ちながら、手を震わせた。
そして、拳を握りしめた。
「ウィード! お前のことが好ーーッ」
「好きだなんて言わないよね?」
ウィードは、ハルサックの言葉に声を被せた。
だって、さっきの推察通り、ハルサックがもし僕に好きだとか言ったら、虫唾が走るから。
ウィードはそこでハルサックの手をパッと離した。
「それで? なんなの?」
少し距離を空けて、対峙する。
彼は、ウィードから顔を背けてだんまりだ。
なんなの?
さっきまであれだけ僕のこと邪魔してきたくせに、説明もなしなの?
そもそも、自分はあれだけ色んな人と依頼受けておいて僕はダメって何?
僕のこと放置してたくせにこんな時だけ出てきて何がしたいの?
僕の中に、怒りなのか寂しさなのか、無性に気持ち悪い感情が湧き上がる。
それを吐き出すように、大きなため息をついた。
「何もないなら僕行くけど?」
先程歩いてきた道を指さした。
僕は彼に変わって欲しいわけじゃない。ただ、自分の自由が欲しいだけだ。
だから彼が邪魔してこないならそれで良い。
「いや、待ってくれ」
ハルサックがウィードの進行方向を塞いだ。そして、やっと口を開いたかと思えば、
「ウィード、お前、ジンのパーティーに入ろうとか思ってないだろうな?」
なんてことを言う。
僕は一度「あーーー」と考え込み、そして、彼の言葉の意図をある程度推察することができた。
「あはっ、あははははっ!」
ウィードは腹を抱えて笑った。
面白くない。
面白くない。
面白くない。
あー、結局君もそうなのか。
僕のこと嫌いじゃないのに、僕に執着して、こんなところまで追いかけてきてーー
ここまで来れば、僕にもなんとなく分かってきた。
ハルサックには、悪気がないのだろう。僕が嫌がっていたことにも気づいていないのかもしれない。
だって彼には、幼稚なところがあり、人の気持ちもわからないところがあるから。
昔は、彼のそんなところも好きだった。いやそれは、今もそんなに変わらないかもしれない。
しかし今は、それ以上に失望の色が濃かった。
ウィードは一通り笑うと、そのまま笑みを顔に張りつけた。
「ねぇ、ハルサック。僕のことおもちゃにして楽しい?」
ハルサックの腕を取って、約一週間前の彼がロットにしていたように腕を絡ませた。
「は?」
ハルサックは、心底意味がわからないといったような呆けた顔をした。
あー、こんなこと言いたいわけじゃないのに。
僕にだって悪いところはある。この状況の全てがハルサックに責任があるとも思っていない。
僕の中の良心は、僕にそう訴えかける。
しかしそれでも、彼の思考がある程度読めてしまった今、僕の行動は感情的にならざるを得なかった。
「おも……ちゃ? いやいやいや、ウィードのことをおもちゃとか思ったことねぇよ?」
「へぇ、そうなんだ」
空返事だった。
ああ、好きだ。
気持ち悪い。
嫌いだ。
でも、好きだ。
それでもやっぱり、嫌いだ。
ああ、…………恨めしい。
「じゃあ、何? おもちゃでも、嫌いでもないなら、なんなのさ?」
「それは……それは……」
ハルサックは、右へ左へ視線を動かす。しかも、そんなデカい図体を持ちながら、手を震わせた。
そして、拳を握りしめた。
「ウィード! お前のことが好ーーッ」
「好きだなんて言わないよね?」
ウィードは、ハルサックの言葉に声を被せた。
だって、さっきの推察通り、ハルサックがもし僕に好きだとか言ったら、虫唾が走るから。
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