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第七話

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 嫌いじゃねぇ、嫌いじゃない、嫌いじゃない? 嫌いじゃねぇ?

 ハルサックは、何を言っているんだろう?

 僕の中で、沢山の疑問が生まれた。

 僕のことを散々辱めて、そして謝りもせずに一週間前も顔を見せない。そんなことをするのに、嫌いじゃないって何? 意味不明すぎる。

「うーん、だからやっぱり、ハルサックは僕のこと嫌いなんだよね?」
「だ!か!らッ! 嫌いじゃねぇよ!」

 再度、沈黙が落ちる。
 そんな中、ふつふつとウィードの腹の中には怒りが溜まっていくような感覚があった。

 意味がわからない。
 意味がわからない。
 意味がわからない。

 じゃあなんで僕に酷いことするの?

 嫌いだって言ってくれたら素直に受け入れられるのに、なんでそれを拒むの?

 なんで僕のことを追いかけてきて、こうやって追い詰めるの?

 なんでーー
 なんでーーーー
 なんでーーーーーーッ!

「嫌いじゃないッ、ならッ! なんなのさ……」

 ウィードの瞳からは涙がこぼれた。ゴシゴシとそれを拭くが、止まらない。呼吸も荒くなる。

「ウィード!?」

 ハルサックは驚いて、近寄ろうとしてくるが、ウィードは走ってジンの背中の後ろに隠れた。

 それを見たハルサックは、足を止めた。視線は、鋭くジンを見つめている。

「ウィードさん……? だ、大丈夫ですか?」

 ジンの声は震える。
 自分の背中で泣いているウィードを気にかけないわけにはいかない。しかし、ハルサックの眼光による圧力は伊達じゃなく、とてつもない緊張感に苛まれる。

「は……い……。ご迷惑かけて、申し訳ありません……」

 ウィードは少し泣いて落ち着いてきた。

「いえ、全然! あの、今回の依頼、行くのやめときますか?」
「いいえ、行きます」

 即答した。
 実は依頼は、受けた当日にこなさないといけないものではない。
 だから今日にこだわって、村に行く必要もない。

 しかし、依頼を出した村は一刻も早く、魔物を退治して欲しいと思っているだろう。そこには、彼らの生活がかかっている。

 それを、僕の私的な事情で遅らせるわけにはいかない。
 僕は涙を拭いて、ジンの背中から顔を出した。

「ということだから、ハルサックはどっか行ってくれないかな!!!」

 威嚇するようになるべく声を大きく張り上げた。

「というかそもそもハルサックがいなくなったから、ジンさんと組むことになったんだけど?」

 なるべく強く。
 突き放すように。

 僕の考えが甘かった。今さっき、彼と会うまで僕は、このまま自然消滅で彼との関係性は終わるんだろうなーとか思っていた。しかし、彼は僕にまた干渉してきた。

 また、今日のように邪魔されたら困る。
 きっと、彼を傷つけないようになんて考えてたのがいけなかったんだ。

 だから僕は毒を吐く。

「ジンさんも迷惑してるし早くどっか行ってよ!」
「嫌だ……」

 ハルサックは、酷く傷ついた表情をしていた。しかし、彼はそれでも首を横に振る。

 ウィードはため息をついた。

「ハルサックのワガママにはもう付き合いきれない。ジンさん! あの人のことは無視して先行きましょう?」

 ジンの手を取って、進行方向へと引っ張った。ジンは、ウィードとハルサックに視線を交互に移した。

「え、えっ? いいんですか?」
「いいんです」

 ウィードは振り返らずに、ジンの手を力強く引き付けた。

「わっ……かりました」

 ウィードとジンは、再び村の方向へと歩き出した。
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