3 / 25
第三話※
しおりを挟む
「ウィード、いきなり来てどうしたんだ?」
ハルサックはロットが帰ったことを確認して、扉を閉じると、机を挟んでウィードと対面になるように座った。
「あっ、えっと、今日はどうだった?」
ウィードはハルサックから目を逸らす。
今日の目的は、パーティーを解消したいことを伝えることだが、いざ話すとなると言葉に出来ない。
「そんなことを聞きに来たのか? まあいいか。ロットと依頼を受けるのは今日が初めてだったし、そんなに連携は取れなかったなあ。やっぱりお前が一番相性が良いんだよなあ」
ハルサックは「なー、相棒ッ!」と机越しに肩をバシバシと叩いてくる。
『じゃあ、なんで僕とは依頼受けないの?』
そんな言葉が頭に浮かぶ。
やっぱり駄目なのかな?
遠くから君を見ていたいなんて本当は強がりなんだ。
本当は君の隣にいたい。ずっとずっと君の相棒でいたい。
だから君が、僕のことが必要だと言葉にしてくれることに縋っていた。
でも本当は、僕のこといらないって思ってるんじゃないの?
「ハルサック」
「ん? なんだ?」
君から離れる覚悟なんて出来ていない。
それでも、これ以上醜い感情に自分が飲み込まれてしまう前に、彼から離れなくてはいけない。
渇いた口内に唾液はない。
喉を鳴らし、空気を嚥下した。
「パーティーを解消しよう」
沈黙が落ちる。
ウィードは目をつむり、黙ってハルサックの反応を待っていた。
「はっ? え? どういうことだよ?」
「どういうも何も言葉の通りだけど?」
頬を引きつらせて笑う。
ああ、こんな突き放すような言い方するつもりじゃなかったのに。
君を攻めたいわけじゃないのに。
こうやってつよがっていないと、声が震えそう。
「いやいや、意味分かんねえ! どうしてそうなんの? 先に言うことあるんじゃねえの?」
「先……?」
「理由だ、理由。何か嫌だと思ったことがあったから、解消したいとか言い出したんだろう?」
ハルサックは立ち上がり、机から乗り出して顔を近づけてくる。
「ハルサック、怒ってる……?」
「怒ってるに決まってるだろう? 俺は認めないからな」
地を這うような声が耳元で聞こえた。
怖い。
ウィードはハルサックから距離を取ろうと移動して、ソファの後ろから顔だけを出す。
しかし、ハルサックはソファから立ち上がり、ウィードを壁際まで追いつめた。
「なんで逃げる?」
壁と腕で八方ふさがりになったウィードを威圧するように、鼻先数ミリのところまで顔を近づけた。
「ウィード、なんでお前は自分の気持ちを話してくれないんだ? 俺の嫌なところがあるんだろう? なあ?」
「……ない」
上手く声が出せない。
何故だか喉が詰まるような感覚がある。
「本当か?」
ウィードは首を縦に動かした。
本当に……本当に、君のせいじゃない。
君の自由を奪う権利は僕にはないし、君の気持ちが僕から離れてしまったのも君のせいじゃない。
人の気持ちはどうすることもできない。
仕方のないことなんだ。
「じゃあ、パーティーを解消する必要もないよな。だって、理由がないからな」
ハルサックからの威圧感がなくなった。
彼はニコニコと僕に笑いかけてくる。
ああ、嫌だ。
自分の息が詰まるのが分かる。
この笑顔を見ているのが辛い。
彼の笑顔を純粋に信じられなくなっている自分が気持ち悪い。
この笑顔が作り物じゃないって、どうして昔の自分は疑わずにいられたんだろう?
首を横に振る僕に、彼は再度威圧を強めた。
顔は、鼻先が接触するほどに近づけられた。
「お前、それ本気で言ってるの?」
「……うん」
顎を指で固定され、頭を動かすことが出来ない。
瞳を覗かれる。
そして、視線があった。
人を視線だけで殺せそうな目つきだ。
実際僕は、彼の殺気だけで失神した魔物達を見てきた。だからこそ、今の状況は到底笑えない。
しかし、ここで目を逸らしたら負けだ。
自分の正気を必死に保つ。
すると、彼の眉間にしわが寄った。
と、同時に後ろの壁がダンッと叩かれた。
ウィードの肩はビクリとはねた。
その瞬間ーー
「んんっ!?!?」
後頭部を手で押され、ハルサックと唇が触れあった。
口内に彼の舌が侵入する。
「んんんッッ、んはっ!」
「お前がその気なら、俺、我慢すんのやめるわ」
手首をものすごい力でつかまれ、寝室に連れて行かれた。
ベッドの上に投げるように、手を離された。
「え? な、なに?」
ウィードは混乱しながらも、起き上がる。
しかし、すぐさまハルサックもベッドに乗ってきて、ウィードの手をテキトーな布で拘束した。
「えっ? や、いやだ!」
「うっせー、暴れんな。ああクソッ、こんなことするつもりじゃなかったのに」
ハルサックは頭をガシガシと掻きむしった。
「ああ、イライラがおさまんねえー。つか、ここまで来て止まれるわけなくね?」
早口でまくし立てるように独り言が呟かれる。
そして、ウィードは上下どちらも脱がされた。
露わになったウィードの下半身をハルサックはじっと見つめる。
「み、見るなッ」
ウィードの声は震えていた。顔も熱い。
何でこんなことになったのか、今何が起こっているのか、頭を混乱している。
しかし、自分が今恥ずかしいことをされていることははっきり分かった。
「ウィード、お前、ここまで来てもまださっきの意見変えねーの?」
ピチャピチャといったような水音が足下の方から聞こえる。
強制的に立てられたウィードの膝が左右に開かれる。
「な、何やってるの?」
「何でも良いだろ? 俺は意見変えねーのかって聞いてんだけど?」
「……う、うん。変えない」
「そーかよっ」
その瞬間、ウィードのアナルに何かが押し込まれた。
それは、細く長いーーハルサックの指だった。
ハルサックはロットが帰ったことを確認して、扉を閉じると、机を挟んでウィードと対面になるように座った。
「あっ、えっと、今日はどうだった?」
ウィードはハルサックから目を逸らす。
今日の目的は、パーティーを解消したいことを伝えることだが、いざ話すとなると言葉に出来ない。
「そんなことを聞きに来たのか? まあいいか。ロットと依頼を受けるのは今日が初めてだったし、そんなに連携は取れなかったなあ。やっぱりお前が一番相性が良いんだよなあ」
ハルサックは「なー、相棒ッ!」と机越しに肩をバシバシと叩いてくる。
『じゃあ、なんで僕とは依頼受けないの?』
そんな言葉が頭に浮かぶ。
やっぱり駄目なのかな?
遠くから君を見ていたいなんて本当は強がりなんだ。
本当は君の隣にいたい。ずっとずっと君の相棒でいたい。
だから君が、僕のことが必要だと言葉にしてくれることに縋っていた。
でも本当は、僕のこといらないって思ってるんじゃないの?
「ハルサック」
「ん? なんだ?」
君から離れる覚悟なんて出来ていない。
それでも、これ以上醜い感情に自分が飲み込まれてしまう前に、彼から離れなくてはいけない。
渇いた口内に唾液はない。
喉を鳴らし、空気を嚥下した。
「パーティーを解消しよう」
沈黙が落ちる。
ウィードは目をつむり、黙ってハルサックの反応を待っていた。
「はっ? え? どういうことだよ?」
「どういうも何も言葉の通りだけど?」
頬を引きつらせて笑う。
ああ、こんな突き放すような言い方するつもりじゃなかったのに。
君を攻めたいわけじゃないのに。
こうやってつよがっていないと、声が震えそう。
「いやいや、意味分かんねえ! どうしてそうなんの? 先に言うことあるんじゃねえの?」
「先……?」
「理由だ、理由。何か嫌だと思ったことがあったから、解消したいとか言い出したんだろう?」
ハルサックは立ち上がり、机から乗り出して顔を近づけてくる。
「ハルサック、怒ってる……?」
「怒ってるに決まってるだろう? 俺は認めないからな」
地を這うような声が耳元で聞こえた。
怖い。
ウィードはハルサックから距離を取ろうと移動して、ソファの後ろから顔だけを出す。
しかし、ハルサックはソファから立ち上がり、ウィードを壁際まで追いつめた。
「なんで逃げる?」
壁と腕で八方ふさがりになったウィードを威圧するように、鼻先数ミリのところまで顔を近づけた。
「ウィード、なんでお前は自分の気持ちを話してくれないんだ? 俺の嫌なところがあるんだろう? なあ?」
「……ない」
上手く声が出せない。
何故だか喉が詰まるような感覚がある。
「本当か?」
ウィードは首を縦に動かした。
本当に……本当に、君のせいじゃない。
君の自由を奪う権利は僕にはないし、君の気持ちが僕から離れてしまったのも君のせいじゃない。
人の気持ちはどうすることもできない。
仕方のないことなんだ。
「じゃあ、パーティーを解消する必要もないよな。だって、理由がないからな」
ハルサックからの威圧感がなくなった。
彼はニコニコと僕に笑いかけてくる。
ああ、嫌だ。
自分の息が詰まるのが分かる。
この笑顔を見ているのが辛い。
彼の笑顔を純粋に信じられなくなっている自分が気持ち悪い。
この笑顔が作り物じゃないって、どうして昔の自分は疑わずにいられたんだろう?
首を横に振る僕に、彼は再度威圧を強めた。
顔は、鼻先が接触するほどに近づけられた。
「お前、それ本気で言ってるの?」
「……うん」
顎を指で固定され、頭を動かすことが出来ない。
瞳を覗かれる。
そして、視線があった。
人を視線だけで殺せそうな目つきだ。
実際僕は、彼の殺気だけで失神した魔物達を見てきた。だからこそ、今の状況は到底笑えない。
しかし、ここで目を逸らしたら負けだ。
自分の正気を必死に保つ。
すると、彼の眉間にしわが寄った。
と、同時に後ろの壁がダンッと叩かれた。
ウィードの肩はビクリとはねた。
その瞬間ーー
「んんっ!?!?」
後頭部を手で押され、ハルサックと唇が触れあった。
口内に彼の舌が侵入する。
「んんんッッ、んはっ!」
「お前がその気なら、俺、我慢すんのやめるわ」
手首をものすごい力でつかまれ、寝室に連れて行かれた。
ベッドの上に投げるように、手を離された。
「え? な、なに?」
ウィードは混乱しながらも、起き上がる。
しかし、すぐさまハルサックもベッドに乗ってきて、ウィードの手をテキトーな布で拘束した。
「えっ? や、いやだ!」
「うっせー、暴れんな。ああクソッ、こんなことするつもりじゃなかったのに」
ハルサックは頭をガシガシと掻きむしった。
「ああ、イライラがおさまんねえー。つか、ここまで来て止まれるわけなくね?」
早口でまくし立てるように独り言が呟かれる。
そして、ウィードは上下どちらも脱がされた。
露わになったウィードの下半身をハルサックはじっと見つめる。
「み、見るなッ」
ウィードの声は震えていた。顔も熱い。
何でこんなことになったのか、今何が起こっているのか、頭を混乱している。
しかし、自分が今恥ずかしいことをされていることははっきり分かった。
「ウィード、お前、ここまで来てもまださっきの意見変えねーの?」
ピチャピチャといったような水音が足下の方から聞こえる。
強制的に立てられたウィードの膝が左右に開かれる。
「な、何やってるの?」
「何でも良いだろ? 俺は意見変えねーのかって聞いてんだけど?」
「……う、うん。変えない」
「そーかよっ」
その瞬間、ウィードのアナルに何かが押し込まれた。
それは、細く長いーーハルサックの指だった。
64
お気に入りに追加
1,068
あなたにおすすめの小説
ラストダンスは僕と
中屋沙鳥
BL
ブランシャール公爵令息エティエンヌは三男坊の気楽さから、領地で植物の品種改良をして生きるつもりだった。しかし、第二王子パトリックに気に入られて婚約者候補になってしまう。側近候補と一緒にそれなりに仲良く学院に通っていたが、ある日聖女候補の男爵令嬢アンヌが転入してきて……/王子×公爵令息/異世界転生を匂わせていますが、作品中では明らかになりません。完結しました。
シャルルは死んだ
ふじの
BL
地方都市で理髪店を営むジルには、秘密がある。実はかつてはシャルルという名前で、傲慢な貴族だったのだ。しかし婚約者であった第二王子のファビアン殿下に嫌われていると知り、身を引いて王都を四年前に去っていた。そんなある日、店の買い出しで出かけた先でファビアン殿下と再会し──。
既成事実さえあれば大丈夫
ふじの
BL
名家出身のオメガであるサミュエルは、第三王子に婚約を一方的に破棄された。名家とはいえ貧乏な家のためにも新しく誰かと番う必要がある。だがサミュエルは行き遅れなので、もはや選んでいる立場ではない。そうだ、既成事実さえあればどこかに嫁げるだろう。そう考えたサミュエルは、ヒート誘発薬を持って夜会に乗り込んだ。そこで出会った美丈夫のアルファ、ハリムと意気投合したが───。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
僕の策略は婚約者に通じるか
藍
BL
侯爵令息✕伯爵令息。大好きな婚約者が「我慢、無駄、仮面」と話しているところを聞いてしまった。ああそれなら僕はいなくならねば。婚約は解消してもらって彼を自由にしてあげないと。すべてを忘れて逃げようと画策する話。
フリードリヒ・リーネント✕ユストゥス・バルテン
※他サイト投稿済です
※攻視点があります
かくして王子様は彼の手を取った
亜桜黄身
BL
麗しい顔が近づく。それが挨拶の距離感ではないと気づいたのは唇同士が触れたあとだった。
「男を簡単に捨ててしまえるだなどと、ゆめゆめ思わないように」
──
目が覚めたら異世界転生してた外見美少女中身男前の受けが、計算高い腹黒婚約者の攻めに婚約破棄を申し出てすったもんだする話。
腹黒で策士で計算高い攻めなのに受けが鈍感越えて予想外の方面に突っ走るから受けの行動だけが読み切れず頭掻きむしるやつです。
受けが同性に性的な意味で襲われる描写があります。
名もなき花は愛されて
朝顔
BL
シリルは伯爵家の次男。
太陽みたいに眩しくて美しい姉を持ち、その影に隠れるようにひっそりと生きてきた。
姉は結婚相手として自分と同じく完璧な男、公爵のアイロスを選んだがあっさりとフラれてしまう。
火がついた姉はアイロスに近づいて女の好みや弱味を探るようにシリルに命令してきた。
断りきれずに引き受けることになり、シリルは公爵のお友達になるべく近づくのだが、バラのような美貌と棘を持つアイロスの魅力にいつしか捕らわれてしまう。
そして、アイロスにはどうやら想う人がいるらしく……
全三話完結済+番外編
18禁シーンは予告なしで入ります。
ムーンライトノベルズでも同時投稿
1/30 番外編追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる