相方に冒険者パーティー解消したいと言ったらブチ切れられた

人生1919回血迷った人

文字の大きさ
上 下
3 / 25

第三話※

しおりを挟む
「ウィード、いきなり来てどうしたんだ?」

 ハルサックはロットが帰ったことを確認して、扉を閉じると、机を挟んでウィードと対面になるように座った。

「あっ、えっと、今日はどうだった?」

 ウィードはハルサックから目を逸らす。
 今日の目的は、パーティーを解消したいことを伝えることだが、いざ話すとなると言葉に出来ない。

「そんなことを聞きに来たのか? まあいいか。ロットと依頼を受けるのは今日が初めてだったし、そんなに連携は取れなかったなあ。やっぱりお前が一番相性が良いんだよなあ」

 ハルサックは「なー、相棒ッ!」と机越しに肩をバシバシと叩いてくる。

『じゃあ、なんで僕とは依頼受けないの?』

 そんな言葉が頭に浮かぶ。
 やっぱり駄目なのかな?
 遠くから君を見ていたいなんて本当は強がりなんだ。
 本当は君の隣にいたい。ずっとずっと君の相棒でいたい。
 だから君が、僕のことが必要だと言葉にしてくれることに縋っていた。

 でも本当は、僕のこといらないって思ってるんじゃないの?

「ハルサック」
「ん? なんだ?」

 君から離れる覚悟なんて出来ていない。
 それでも、これ以上醜い感情に自分が飲み込まれてしまう前に、彼から離れなくてはいけない。

 渇いた口内に唾液はない。
 喉を鳴らし、空気を嚥下した。

「パーティーを解消しよう」

 沈黙が落ちる。

 ウィードは目をつむり、黙ってハルサックの反応を待っていた。

「はっ? え? どういうことだよ?」
「どういうも何も言葉の通りだけど?」

 頬を引きつらせて笑う。

 ああ、こんな突き放すような言い方するつもりじゃなかったのに。
 君を攻めたいわけじゃないのに。

 こうやってつよがっていないと、声が震えそう。

「いやいや、意味分かんねえ! どうしてそうなんの? 先に言うことあるんじゃねえの?」
「先……?」
「理由だ、理由。何か嫌だと思ったことがあったから、解消したいとか言い出したんだろう?」

 ハルサックは立ち上がり、机から乗り出して顔を近づけてくる。

「ハルサック、怒ってる……?」
「怒ってるに決まってるだろう? 俺は認めないからな」

 地を這うような声が耳元で聞こえた。

 怖い。
 ウィードはハルサックから距離を取ろうと移動して、ソファの後ろから顔だけを出す。
 しかし、ハルサックはソファから立ち上がり、ウィードを壁際まで追いつめた。

「なんで逃げる?」

 壁と腕で八方ふさがりになったウィードを威圧するように、鼻先数ミリのところまで顔を近づけた。

「ウィード、なんでお前は自分の気持ちを話してくれないんだ? 俺の嫌なところがあるんだろう? なあ?」
「……ない」

 上手く声が出せない。
 何故だか喉が詰まるような感覚がある。

「本当か?」

 ウィードは首を縦に動かした。

 本当に……本当に、君のせいじゃない。
 君の自由を奪う権利は僕にはないし、君の気持ちが僕から離れてしまったのも君のせいじゃない。
 人の気持ちはどうすることもできない。
 仕方のないことなんだ。

「じゃあ、パーティーを解消する必要もないよな。だって、理由がないからな」

 ハルサックからの威圧感がなくなった。
 彼はニコニコと僕に笑いかけてくる。

 ああ、嫌だ。
 自分の息が詰まるのが分かる。
 この笑顔を見ているのが辛い。
 彼の笑顔を純粋に信じられなくなっている自分が気持ち悪い。

 この笑顔が作り物じゃないって、どうして昔の自分は疑わずにいられたんだろう?

 首を横に振る僕に、彼は再度威圧を強めた。
 顔は、鼻先が接触するほどに近づけられた。

「お前、それ本気で言ってるの?」
「……うん」

 顎を指で固定され、頭を動かすことが出来ない。
 瞳を覗かれる。
 そして、視線があった。

 人を視線だけで殺せそうな目つきだ。
 実際僕は、彼の殺気だけで失神した魔物達を見てきた。だからこそ、今の状況は到底笑えない。

 しかし、ここで目を逸らしたら負けだ。
 自分の正気を必死に保つ。

 すると、彼の眉間にしわが寄った。
 と、同時に後ろの壁がダンッと叩かれた。

 ウィードの肩はビクリとはねた。

 その瞬間ーー

「んんっ!?!?」

 後頭部を手で押され、ハルサックと唇が触れあった。
 口内に彼の舌が侵入する。

「んんんッッ、んはっ!」
「お前がその気なら、俺、我慢すんのやめるわ」

 手首をものすごい力でつかまれ、寝室に連れて行かれた。
 ベッドの上に投げるように、手を離された。

「え? な、なに?」

 ウィードは混乱しながらも、起き上がる。
 しかし、すぐさまハルサックもベッドに乗ってきて、ウィードの手をテキトーな布で拘束した。

「えっ? や、いやだ!」
「うっせー、暴れんな。ああクソッ、こんなことするつもりじゃなかったのに」

 ハルサックは頭をガシガシと掻きむしった。

「ああ、イライラがおさまんねえー。つか、ここまで来て止まれるわけなくね?」

 早口でまくし立てるように独り言が呟かれる。
 そして、ウィードは上下どちらも脱がされた。

 露わになったウィードの下半身をハルサックはじっと見つめる。

「み、見るなッ」

 ウィードの声は震えていた。顔も熱い。
 何でこんなことになったのか、今何が起こっているのか、頭を混乱している。
 しかし、自分が今恥ずかしいことをされていることははっきり分かった。

「ウィード、お前、ここまで来てもまださっきの意見変えねーの?」

 ピチャピチャといったような水音が足下の方から聞こえる。
 強制的に立てられたウィードの膝が左右に開かれる。

「な、何やってるの?」
「何でも良いだろ? 俺は意見変えねーのかって聞いてんだけど?」
「……う、うん。変えない」
「そーかよっ」

 その瞬間、ウィードのアナルに何かが押し込まれた。
 それは、細く長いーーハルサックの指だった。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

いくら気に入っているとしても、人はモノに恋心を抱かない

もにゃじろう
BL
一度オナホ認定されてしまった俺が、恋人に昇進できる可能性はあるか、その答えはノーだ。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

シャルルは死んだ

ふじの
BL
地方都市で理髪店を営むジルには、秘密がある。実はかつてはシャルルという名前で、傲慢な貴族だったのだ。しかし婚約者であった第二王子のファビアン殿下に嫌われていると知り、身を引いて王都を四年前に去っていた。そんなある日、店の買い出しで出かけた先でファビアン殿下と再会し──。

悪役のはずだった二人の十年間

海野璃音
BL
 第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。  破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。  ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

【BL】SNSで出会ったイケメンに捕まるまで

久遠院 純
BL
タイトル通りの内容です。 自称平凡モブ顔の主人公が、イケメンに捕まるまでのお話。 他サイトでも公開しています。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

追放系治癒術師は今日も無能

リラックス@ピロー
BL
「エディ、お前もうパーティ抜けろ」ある夜、幼馴染でパーティを組むイーノックは唐突にそう言った。剣術に優れているわけでも、秀でた魔術が使える訳でもない。治癒術師を名乗っているが、それも実力が伴わない半人前。完全にパーティのお荷物。そんな俺では共に旅が出来るわけも無く。 追放されたその日から、俺の生活は一変した。しかし一人街に降りた先で出会ったのは、かつて俺とイーノックがパーティを組むきっかけとなった冒険者、グレアムだった。

処理中です...