相方に冒険者パーティー解消したいと言ったらブチ切れられた

人生1919回血迷った人

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第二話

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 ハルサックの家。
 ウィードは合鍵を使い、リビングのソファに座ってハルサックのことを待っていた。

「もう無理だ」

 今朝のハルサックのことを思い出す。
 僕と二人でパーティーを組んでいるはずなのに、当たり前のように関係ない人を連れてきて、僕を置いていく。

 たしかにパーティーメンバーとしか依頼が受けられないなんて規則はない。
 でも、それなら何で僕を今でも相方として隣に置いているんだ?


 ハルサックは強い。
 彼と一緒に依頼を受けたい冒険者なんて山ほど居る。
 だから、彼が拒まなければ今のような状態になるのも分かる。

 でも、それなら僕とパーティー組んでなくても良いよね?
 なんなら僕って、邪魔者だよね?

 ハルサックが僕と依頼を受けなくなって、僕のことを遠巻きに馬鹿にする人たちも増えてきた。

「もう疲れた……」

 昔、家のことで悩んでいたとき、僕に冒険者になるという選択肢を与えてくれたのはハルサックだった。
 彼は、家から僕を連れ出して、世界はとても広いのだと教えてくれた。

 だから僕は、そんな彼を感謝しているし、それ以上の感情を彼に抱いている。

 それでももう、彼の傍に居たくない。
 親愛なのか、友愛なのか、恋愛なのか。自分の気持ちさえ分からない。
 けれどもう、遠くでひっそりと彼のことを見ていたい。

 そう思うくらいには、今の中途半端な状態は自分にとってストレスだった。






 ドス、ドス、ドス、ドス。

 廊下から、二つの足音が聞こえて、ウィードは目を覚ました。

「あれ? いつの間にか寝てた……」

 手を組んで、身体を上に伸ばすと、あくびが漏れる。


 段々と足音は大きくなり、そしてリビングの扉が開いた。

「ウィード!?」
「おかえりなふぁい」

 ハルサックは扉を開いた状態で固まった。
 そんな彼を見ながらも、あくびが止まらず、ウィードからは気の抜けた声が出た。

「な、何でここに!って、随分昔に合鍵渡したっけか?」
「うん、その時の使わせてもらった。いきなりごめん」
「いや? 全然? むしろもっと使って欲しいというか、なんというか……」

 ハルサックは視線を泳がせ、頬をポリポリとかいた。
 そんなハルサックの後ろからロットが出てくる。

「ニヤニヤニタニタ気持ち悪ッ!!!」

 彼は口に手を当て、とてつもなく臭い匂いを嗅いだかのような顔をした。

「ねぇ! ウィードさんもそう思いません?」

 ロットが顔を近づけてくる。
 ウィードはそれになんと答えたらいいか分からず、首を軽くかしげた。

「あははっ、ウィードさん優しい」

 そう言ってロットが笑っていると、ハルサックが二人の間を割って入った。

「近づきすぎだ」
「えっ……?」

 僕は驚いて固まってしまった。
 もしかしてハルサックは、ロットのことが……いやまさか。

 そんなことを思っていると、ロットは手をヒラヒラとさせ、扉の方に歩き出した。

「へいへーい。じゃあ、俺がおじゃま虫みたいなんで帰りますわ」
「おうおう、帰れ帰れ」

 シッシッと、ハルサックも手を払う。
 そんなロットの背中を視線で追っていると、彼は急に立ち止まった。

「あっ、そうだ!」

 ロットはくるりとウィードの方を向くと、こちらに近づいて耳打ちをした。

「こんなクズ男、早く捨てちゃってください」

 それだけ言うと彼は、ハルサックにどやされながら帰って行った。
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