17 / 26
第十七話
しおりを挟む
「何を知ってる?」
僕は再度、ルールーににじり寄る。
「ちょっ、だから、近い近い近い。俺、ファイアさんにそういう気、起こすつもり一切ないからやめてぇ!」
「は?」
「……話すからちょっと落ち着けって」
肩を押されて、後ろに下がる。距離を開けられてしまった。
流石は冒険者ランクAの剣士か。力が強い。
「昨日ファイアさんと飲んだ帰りに見たんだ。ファイアさんのど……」
「ラックとナリヤを?」
ルールーはじっと僕の顔を見たあと、こくりと頷く。
ここまで知られてしまったらもう、ルールーの前で取り繕っても仕方がない。
「それと、昨日怪我してたって話のおっさん……ホンドンって名前だっけ? そいつもいた」
「ホンドンさんが……?」
「ああ、てか、やっぱり知り合いか?」
僕は頷いた。
ラックとナリヤがホンドンさんと一緒にいた?
なんで?
「ってことは、昨日のあのちっこいガキ、リフだっけか? 本当は他の奴に絡まれないようにしてたとか?」
「……ん? うーん」
二人は外に出る為にホンドンさんの力を借りた?
いや、でも何のために?
「ファイアさん、俺の話聞いてねぇな……」
「ルールー」
「はいはい、なんでしょうか?」
あれ? なんか不機嫌?
まあ、いいや。
「ラックとナリヤは街の外に向かってたの?」
「ああ、そうだな。ホンドンも含めて三人だったけど。荷馬車に何かを沢山積んでたみたいだったな。布が被せてあって中身は見えなかった」
「ホンドンさんも、一緒に……?」
「三人組でコソコソしながら門に向かってる怪しい奴らがいるなーって感じだったな。猫だからしょうがないけど、ローブ被ってて顔見にくかったし」
ホンドンさんと荷馬車に荷物を積んで外に向かった。どこに?
猫獣人村?
その三人で何らかの目的を持ってどこかに向かうとしたら猫獣人村しかないんじゃないか?
目的は分からない。
でも、嫌な予感がする。
なんで三人は僕に何も言わずに行動した?
なんでこんな急に?
何を届けに向かったんだ?
「まだ、盗賊も捕まえられていないのに」
とにかくルールーの言っていることが本当か、確認しに行かないと。
行き先を門からホンドンさんの家に変更し、向かうことにする。
しかし、その前に僕のポツリとこぼした言葉にルールーが反応した。
「ファイアさん、盗賊のこと知ってんだな。なんで知ってんの?」
「……邪魔なんだけど」
さっきは近い近い言ってきたくせに今度はルールーの方から距離を詰めてくる。
ルールーを押しのけようとするが、その手は捕まえられた。
「誰に聞いた?」
「そんなの誰でもいいでしょ」
「いや、そうなんだけど。あまりにもファイアさんが噂と違うからもしかしてホンドンの怪我を治したのもファイアさんなのかって思ったんだよ」
なにか詮索されてるなとは感じていたけど、そんなことだったのか。警戒して損した。
でも、なんでそんなことを知りたがるんだ?
ルールーがこっちを敵視していないことは分かった。
しかし、彼は何を考えているかあまり読めない。
さっきも僕が理解できないこと話していたし。
それに加えて僕の過去を知っているような……そんなたまに出てくる言葉が怖い。
とにかく長々と会話しすぎだが、あまりに近づきたくはない相手だ。
「それが何?」
「いやー、グレイの奴やらかしてんなーって思って。まあ、俺も気づくのに二週間もかかってるわけだから人のこと言えねぇけど」
「グレイ? 気づく?」
「そう、グレイ。昨日ファイアさんのことボコってた奴」
「……グレイが僕に気づくわけないじゃん」
あっ……。
ついつい、声に出してしまった。まあ、でもルールーが僕とグレイの接点を知ってるわけもないし、まあいいか。
しかし、ルールーは急に黙った。
なにごとかと思い、顔を見上げれば大きく目を見開いていた。
「……えっ、グレイのこと、覚えてんの?」
「…………」
僕は目を逸らした。
なんでこの獣人は僕のことをこんなに知ってるんだ!
「マジかよッ! ファイアさんはグレイに気づいてるのに、グレイはファイアさんに気づいてないとか。グレイ酷すぎるッ!!!」
そう言って、ルールーは「グレイヤバッ」とゲラゲラ笑いだした。
僕は再度、ルールーににじり寄る。
「ちょっ、だから、近い近い近い。俺、ファイアさんにそういう気、起こすつもり一切ないからやめてぇ!」
「は?」
「……話すからちょっと落ち着けって」
肩を押されて、後ろに下がる。距離を開けられてしまった。
流石は冒険者ランクAの剣士か。力が強い。
「昨日ファイアさんと飲んだ帰りに見たんだ。ファイアさんのど……」
「ラックとナリヤを?」
ルールーはじっと僕の顔を見たあと、こくりと頷く。
ここまで知られてしまったらもう、ルールーの前で取り繕っても仕方がない。
「それと、昨日怪我してたって話のおっさん……ホンドンって名前だっけ? そいつもいた」
「ホンドンさんが……?」
「ああ、てか、やっぱり知り合いか?」
僕は頷いた。
ラックとナリヤがホンドンさんと一緒にいた?
なんで?
「ってことは、昨日のあのちっこいガキ、リフだっけか? 本当は他の奴に絡まれないようにしてたとか?」
「……ん? うーん」
二人は外に出る為にホンドンさんの力を借りた?
いや、でも何のために?
「ファイアさん、俺の話聞いてねぇな……」
「ルールー」
「はいはい、なんでしょうか?」
あれ? なんか不機嫌?
まあ、いいや。
「ラックとナリヤは街の外に向かってたの?」
「ああ、そうだな。ホンドンも含めて三人だったけど。荷馬車に何かを沢山積んでたみたいだったな。布が被せてあって中身は見えなかった」
「ホンドンさんも、一緒に……?」
「三人組でコソコソしながら門に向かってる怪しい奴らがいるなーって感じだったな。猫だからしょうがないけど、ローブ被ってて顔見にくかったし」
ホンドンさんと荷馬車に荷物を積んで外に向かった。どこに?
猫獣人村?
その三人で何らかの目的を持ってどこかに向かうとしたら猫獣人村しかないんじゃないか?
目的は分からない。
でも、嫌な予感がする。
なんで三人は僕に何も言わずに行動した?
なんでこんな急に?
何を届けに向かったんだ?
「まだ、盗賊も捕まえられていないのに」
とにかくルールーの言っていることが本当か、確認しに行かないと。
行き先を門からホンドンさんの家に変更し、向かうことにする。
しかし、その前に僕のポツリとこぼした言葉にルールーが反応した。
「ファイアさん、盗賊のこと知ってんだな。なんで知ってんの?」
「……邪魔なんだけど」
さっきは近い近い言ってきたくせに今度はルールーの方から距離を詰めてくる。
ルールーを押しのけようとするが、その手は捕まえられた。
「誰に聞いた?」
「そんなの誰でもいいでしょ」
「いや、そうなんだけど。あまりにもファイアさんが噂と違うからもしかしてホンドンの怪我を治したのもファイアさんなのかって思ったんだよ」
なにか詮索されてるなとは感じていたけど、そんなことだったのか。警戒して損した。
でも、なんでそんなことを知りたがるんだ?
ルールーがこっちを敵視していないことは分かった。
しかし、彼は何を考えているかあまり読めない。
さっきも僕が理解できないこと話していたし。
それに加えて僕の過去を知っているような……そんなたまに出てくる言葉が怖い。
とにかく長々と会話しすぎだが、あまりに近づきたくはない相手だ。
「それが何?」
「いやー、グレイの奴やらかしてんなーって思って。まあ、俺も気づくのに二週間もかかってるわけだから人のこと言えねぇけど」
「グレイ? 気づく?」
「そう、グレイ。昨日ファイアさんのことボコってた奴」
「……グレイが僕に気づくわけないじゃん」
あっ……。
ついつい、声に出してしまった。まあ、でもルールーが僕とグレイの接点を知ってるわけもないし、まあいいか。
しかし、ルールーは急に黙った。
なにごとかと思い、顔を見上げれば大きく目を見開いていた。
「……えっ、グレイのこと、覚えてんの?」
「…………」
僕は目を逸らした。
なんでこの獣人は僕のことをこんなに知ってるんだ!
「マジかよッ! ファイアさんはグレイに気づいてるのに、グレイはファイアさんに気づいてないとか。グレイ酷すぎるッ!!!」
そう言って、ルールーは「グレイヤバッ」とゲラゲラ笑いだした。
19
お気に入りに追加
436
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――
ロ
BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」
と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。
「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。
※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)
嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです
俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜
琴音
BL
俺はなんでも適当にこなせる器用貧乏なために、逆に何にも打ち込めず二十歳になった。成人後五年、その間に番も見つけられずとうとう父上静かにぶちギレ。ならばと城にいても楽しくないし?番はほっとくと適当にの未来しかない。そんな時に勝手に見合いをぶち込まれ、逃げた。が、間抜けな俺は騎獣から落ちたようで自分から城に帰還状態。
ならば兄弟は優秀、俺次男!未開の地と化した領地を復活させてみようじゃないか!やる気になったはいいが………
ゆるゆる〜の未来の大陸南の猫族の小国のお話です。全く別の話でエリオスが領地開発に奮闘します。世界も先に進み状況の変化も。番も探しつつ……
世界はドナシアン王国建国より百年以上過ぎ、大陸はイアサント王国がまったりと支配する世界になっている。どの国もこの大陸の気質に合った獣人らしい生き方が出来る優しい世界で北から南の行き来も楽に出来る。農民すら才覚さえあれば商人にもなれるのだ。
気候は温暖で最南以外は砂漠もなく、過ごしやすく農家には適している。そして、この百年で獣人でも魅力を持つようになる。エリオス世代は魔力があるのが当たり前に過ごしている。
そんな世界に住むエリオスはどうやって領地を自分好みに開拓出来るのか。
※この物語だけで楽しめるようになっています。よろしくお願いします。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
うちの妻はかわいい~ノンケのガチムチ褐色が食われる話~
うめまつ
BL
黒髪黒目、褐色の肌に端正な顔立ちと鍛えられた体つき。女にもモテるが、それより男にもモテる主人公ムスタファ。掘られるのが嫌で必死に体を鍛えたのに、今度は抱いてくれと男に狙われ安眠できない。しかも息をひそめているだけで尻を狙うやつらは減ってはいない。守りきったと安心した頃に最強最悪の男に襲われる。
※すいません、プロローグを挿入しました。
※第9回BL小説に参加です。
※お気に入り、栞、感想ありがとうございます。励みになります。
※別作品『うちの妻はかわいい』第4章おまけのスピンオフ。ガチムチ受けです。そちらも独立してるのでよかったらご覧ください。
※本作は前作と独立させてるので初見でも楽しめるかと思います。
※エロければいいと思って書きましたが、作者の好みで前座が長いです。ノン気の抵抗を書きたかったのでかなりじれじれです。
異世界召喚に巻き込まれ転移中に魔法陣から押し出され、ボッチで泣いてたらイケメン幼馴染が追いかけてきた件<改定版>
緒沢 利乃
BL
僕、桜川凛は高校の卒業式の日に、教室に突然現れた魔法陣のせいで同級生の数人と一緒に異世界に転移することになった。しかも、転移の途中に同級生の誰かに魔法陣から押し出されてしまう。
えーっ、そんな、僕どうなっちゃうの?
目覚めると森らしきところに一人ボッチでした。
小柄でやせ型で学校でも地味で目立たない特技なしの僕。
冒険者初心者でも楽勝の小型魔獣でさえ倒すこともできず泣きながら逃げ回り、それでもなんとか異世界で生き延びれるよう四苦八苦しながら頑張っていたら……。
幼稚園のときからの幼馴染、橘悠真が現れた。
あれ? 一緒に異世界転移したけれど、悠真は召喚された場所にみんなといたはずでしょ? なんで、ここにいるの?
小学校高学年から言葉も交わさず、視線も合わさず、完全に避けられていたのに、急に優しくされて、守ってくれて……ちょっとドキドキしちゃう。
えっ、どこ触ってるの? いや、大丈夫だから、撫でないで、ギュッとしないで、チュッてしちゃダメー!
※R18は予告なしで入ります。
この作品は別名義で掲載していましたが、今回「緒沢利乃」名義で改定しました。
どうぞ、よろしくお願いします。
※更新は不定期です。
美形×平凡のBLゲームに転生した平凡騎士の俺?!
元森
BL
「嘘…俺、平凡受け…?!」
ある日、ソーシード王国の騎士であるアレク・シールド 28歳は、前世の記憶を思い出す。それはここがBLゲーム『ナイトオブナイト』で美形×平凡しか存在しない世界であること―――。そして自分は主人公の友人であるモブであるということを。そしてゲームのマスコットキャラクター:セーブたんが出てきて『キミを最強の受けにする』と言い出して―――?!
隠し攻略キャラ(俺様ヤンデレ美形攻め)×気高い平凡騎士受けのハチャメチャ転生騎士ライフ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる