猫獣人を守る為なら僕は、悪役になったって構わない

人生1919回血迷った人

文字の大きさ
上 下
16 / 26

第十六話

しおりを挟む
 朝起きて、家中を探し回った。

「どこにもいない……」

 それどころか、いつも遠出する時に使う二人の装備一式もなくなっていた。

 どこにいったんだ?

 僕はいてもたってもいられず、家を飛び出した。

 早朝。まだ人通りはほとんどない。
 とにかく街中を走り回る。

 まだ、街にいて欲しい! お願い!

 店はまだ開店しておらず、辺境伯領一の街とはいえ、辺境の街だ。それほど時間はかからず、この街に二人がいないことは分かってしまった。
 まだ、宿や知り合いの家にいるといった線も残ってはいるが、可能性は低いだろう。
 というか、元々この街にいる可能性はほとんどなかった。
 ただ、街の外にいるならもう探しようはない。だから、まだ街中にいる可能性をおった。

 でも、街中に居ないからといって諦めるつもりはない。

 僕は、外に向かうことにした。

 街の門へ、最短距離の道を使う。あともう少しで門に辿り着く。そんな時に後ろから僕を呼ぶ声が聞こえた。

「ファイアさん! 耳!」

 立ち止まり、振り返れば、昨日居酒屋で一緒になったルールーだった。

「耳?」
「耳、猫耳のままになってる」

 僕は咄嗟に耳を手で隠した。
 それを見て、ルールーは笑った。

「誰かに話したりしねぇって。とにかく隠しな」
「……分かった」
「朝早いとはいえ何人かには見られてるよなー。噂にならないといいけど」

 なんでルールーが僕の心配をしてるんだ? 驚きもしないし。

 ルールーって一体何者なんだ。

〈虚像改変〉

 とにかくまずは、幻影魔術を使って猫耳を狼耳に変える。

「うお~、幻術? すげぇ~、しかも感触も本物ッ」
「ひゃあっ! ……んっ……やめっ……なん、で触って……」

 物珍しさからか、ルールーは耳を触ってきた。大半の獣人にとって耳は音を拾う繊細な感覚器、つまり敏感な部分だ。
 それにラックによれば、僕は耳を片方しか持っていないからか、人よりも感覚が敏感になっているらしい。
 触られれば、身体から力が抜けてしまう。

「あっ、ごめん、つい好奇心……が……」

 地面に座り込んだ僕を見たルールーが顔を真っ赤にした。
 ん? おかしくないか? 恥ずかしいのは僕の方なんだけど?
 いや、ルールーがおかしいのは最初からか。僕の耳を見ても驚かないし。

「とにかく、僕急いでるから」

 と言って立ち上がり、ルールーに近づく。

「いやっ、近いっ近いっ」

 なるべく睨みつけるように視線を鋭くし、ルールーを壁に押しやる。そして、彼の脇横を通って壁に手をつける。

 身長は僕の方が小さいので、見上げる形になってしまっているが、イメージは「ほら、そこで跳んでみろよっ」とカモに脅しをかけるチンピラ冒険者だ。

「僕の耳のこと話したら、分かるよね?」

 ルールーはこくこくと無言で頷いた。よかった。成功したみたいだ。

 ルールーは開放された後、ふーっと息を吐き出し、顔を手で覆っていた。

 何やってるんだろ?
 怖かったのかな?
 少し申し訳ないけど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。

「耳のこと、教えてくれてありがとう! じゃあ僕行くから」

 ルールーのことも、僕の耳がどのくらいの獣人に見られたのか、ということも気になるけど全部後回しだ。

「ちょっと待って」

 走り出そうとすると、服を掴まれた。

「俺の話が終わってない」
「今、ルールーの話聞いてる時間ないんだけど?」
「ファイアさん、今、自分の奴隷探してんじゃねぇの?」

 どうやら彼は、ラックとナリヤについて何か知っているようだ。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!

BL
 16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。    僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。    目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!  しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?  バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!  でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?  嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。 ◎体格差、年の差カップル ※てんぱる様の表紙をお借りしました。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

きっと、君は知らない

mahiro
BL
前世、というのだろうか。 俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。 大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。 皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。 あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。 次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。 次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。 それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?

貴方だけは愛しません

玲凛
BL
王太子を愛し過ぎたが為に、罪を犯した侯爵家の次男アリステアは処刑された……最愛の人に憎まれ蔑まれて……そうしてアリステアは死んだ筈だったが、気がつくと何故か六歳の姿に戻っていた。そんな不可思議な現象を味わったアリステアだったが、これはやり直すチャンスだと思い決意する……もう二度とあの人を愛したりしないと。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

処理中です...