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第四話
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僕に声をかけてきたのはさっきの少年、リフ君の母親であるザレアさん。
「ファイアさんッ! ……やっとっ、見つけっ……ましたっ!」
随分と探し回ってくれていたみたいで息切れが激しい。
「ザレアさん。僕のことを頼ってくれると信じていました。まずは息を整えて……」
「息子が飛び出してッ、どこかに行ってッ! 夫もッ!」
「落ち着いてください。リフ君は無事ですよ。なので、先にホンドンさんの怪我を治しに行きましょう」
ザレアさんが落ち着くまで、手を握り背中をさする。そして、リフ君が冒険者ギルドに来たこと、グレイ達に保護されたので安全であることを伝えた。
「リフくんのを叩いてしまい、本当にすみませんでした」
「頭を上げてください。ファイアさんが助けて下さらなかったらリフはもっと酷い目にあっていたと思います。感謝の気持ちはあっても、責めるつもりは少しもありません」
「そう言って貰えると助かります」
ザレアさんが落ち着いたところを見計らって先に謝罪だけは済ませておく。
本当は本人に謝りたいけど、グレイ達が連れて行っちゃったしそれに、ザレアさんにも謝っておきたかった。
自己満足だけど。
「それでは、ホンドンさんのところに向かいましょう。ザレアさん、案内を頼みます」
「はい、ファイアさん。よろしくお願いします」
「治癒魔術は得意ですから任せてください」
僕たちは街の外に向かうために、門の方に速足で歩き出した。
ザレアさんにホンドンさんの怪我の状態を聞いてみたけど、酷い怪我であることしか分からなかった。
命に関わる怪我なのかどうかも判断が付けられなかったようだ。
それに、怪我の様子を見る前にリフ君が走り出してしまったらしい。
ホンドンさんに自分の怪我はいいからリフ君を追いかけろと言われ、軽い止血だけはしてザレアさんは追いかけた。しかし、途中で見失ってしまった。
街には着いたものの、どうしたらいいか分からず困っていると、何かあれば頼って欲しいという僕の言葉を思い出したらしい。
その時、街の外に向かう為に大通りを歩いている冒険者の話が聞こえた。耳を傾けてみれば、ついさっき僕が冒険者ギルドを出ていったという話。
だったらと、近くを探してみれば僕を見つけられたということらしい。
急いで歩き、門に到着した。
そういえば、普通に着いてきてるけどーー
「ラックは家に戻ってて」
「ッ!? なんでですか!」
「ナリヤがきっと寂しがってるから。風邪ひいてる時は特に寂しいっていうじゃん?」
ナリヤとは、ラックと同じように僕と行動を一緒にしている十六歳の猫獣人だ。今は風邪を引いて寝込んでいる。
「で、ですが!」
「お兄ちゃんが面倒見てあげなきゃ」
「血は繋がってません」
「けど、ちゃんと家族だと思ってるんでしょ?」
「そうですけど……うーん、分かりました。けど、絶対無茶はしないでくださいね!」
「はーーい」
「はぁ、それと。早くご自身の怪我も治されてください」
あっ、そうだ。忘れてた。
「ファイアさんッ! ……やっとっ、見つけっ……ましたっ!」
随分と探し回ってくれていたみたいで息切れが激しい。
「ザレアさん。僕のことを頼ってくれると信じていました。まずは息を整えて……」
「息子が飛び出してッ、どこかに行ってッ! 夫もッ!」
「落ち着いてください。リフ君は無事ですよ。なので、先にホンドンさんの怪我を治しに行きましょう」
ザレアさんが落ち着くまで、手を握り背中をさする。そして、リフ君が冒険者ギルドに来たこと、グレイ達に保護されたので安全であることを伝えた。
「リフくんのを叩いてしまい、本当にすみませんでした」
「頭を上げてください。ファイアさんが助けて下さらなかったらリフはもっと酷い目にあっていたと思います。感謝の気持ちはあっても、責めるつもりは少しもありません」
「そう言って貰えると助かります」
ザレアさんが落ち着いたところを見計らって先に謝罪だけは済ませておく。
本当は本人に謝りたいけど、グレイ達が連れて行っちゃったしそれに、ザレアさんにも謝っておきたかった。
自己満足だけど。
「それでは、ホンドンさんのところに向かいましょう。ザレアさん、案内を頼みます」
「はい、ファイアさん。よろしくお願いします」
「治癒魔術は得意ですから任せてください」
僕たちは街の外に向かうために、門の方に速足で歩き出した。
ザレアさんにホンドンさんの怪我の状態を聞いてみたけど、酷い怪我であることしか分からなかった。
命に関わる怪我なのかどうかも判断が付けられなかったようだ。
それに、怪我の様子を見る前にリフ君が走り出してしまったらしい。
ホンドンさんに自分の怪我はいいからリフ君を追いかけろと言われ、軽い止血だけはしてザレアさんは追いかけた。しかし、途中で見失ってしまった。
街には着いたものの、どうしたらいいか分からず困っていると、何かあれば頼って欲しいという僕の言葉を思い出したらしい。
その時、街の外に向かう為に大通りを歩いている冒険者の話が聞こえた。耳を傾けてみれば、ついさっき僕が冒険者ギルドを出ていったという話。
だったらと、近くを探してみれば僕を見つけられたということらしい。
急いで歩き、門に到着した。
そういえば、普通に着いてきてるけどーー
「ラックは家に戻ってて」
「ッ!? なんでですか!」
「ナリヤがきっと寂しがってるから。風邪ひいてる時は特に寂しいっていうじゃん?」
ナリヤとは、ラックと同じように僕と行動を一緒にしている十六歳の猫獣人だ。今は風邪を引いて寝込んでいる。
「で、ですが!」
「お兄ちゃんが面倒見てあげなきゃ」
「血は繋がってません」
「けど、ちゃんと家族だと思ってるんでしょ?」
「そうですけど……うーん、分かりました。けど、絶対無茶はしないでくださいね!」
「はーーい」
「はぁ、それと。早くご自身の怪我も治されてください」
あっ、そうだ。忘れてた。
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