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むくむくヤチモチ

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僕と団長がセフレになってから1週間とちょっとがたった。いや、身体を重ねた日をセフレになった日と数えればちょうど1週間。んー、どっち?
まあ、それはいいとしてあれから1週間、団長をずっと観察していたんだけど毎日、僕以外のセフレ、つまりユングが団長を誘ってるのを見た。

今までもそういう場面は何回も見てきた。というか、ユングは僕に意図的に見せつけるように誘ってる節がある。
この間までは恋人のラブラブを見せつけられているように見えてムクムクと嫉妬心が芽生えていた。セフレだとわかった今、それが無くなったかと言われるとむしろその嫉妬心は強くなった。ユングが団長にどんな風に抱かれているのか自分が抱かれたことで具体的に想像出来てしまったのだ。

ユングが団長に声をかけるのは大体お昼休みだ。団長が誘われている場面なんて見ていなくて、僕はすぐに目を逸らし食堂に行く。
食堂でご飯を頼み、席に着くとすぐさま料理が出てくる。恐らく僕より先に頼んだ人よりも先に料理が届いているのだろう。とても申し訳ない気持ちになる。いつもの事だけど。

こういう時、王子という肩書きにうんざりする。僕が王族だから、その一点のみで皆僕が優先されることに納得しているのだろう。でも、納得したからと言って一切不満が無い訳でもないだろう。
僕は順番通りに料理を出してくれて全くもって構わない。というか、そうして欲しい。周りだって僕のせいで自分の分が遅れるのは嫌だろう。
でも、王族のメンツがあるからそういうわけにはいかないのだろう。こんなことにまでメンツなんていうものが着いて回るなんて心底ウンザリだ。

それに、、、

「あれ?グナーデ王子。なんでむくれた上に少し落ち込んだ顔色してるんだ?」

「そんな顔してない!」

「いやいや、してるだろー。」

アルムが話しかけて来る。
アルムは僕の近衛騎士、シュティレの弟だ。

「むくれてないもん。」

「いやいや、むくれてないもん!はずるいだろ~。お前の周り、お前のむくれた顔見て騒いでるし。」

「そんな言い方してない!」

僕の言葉を真似するがそんな大袈裟に言ってないし、腕だって組んでない。
強いて言うなら少し顔を横に向けただけだ。

「まあ、むくれてる理由はアレだろ?あれ。」

そう言って、さっき程から食堂にいる団長とユングを指さした。二人は一緒に食べている。

「ちーがーうーもーん」

コソコソと団長に向けていた指をへし折ってやった。

「いったぁ。何するんだよ!」

「ぶはっ、ざまぁみろー!」

本気で痛そうに大きめのリアクションをするアルムを見てつい吹き出してしまう。
アルムは僕に気兼ねなく話し掛けてくれる数少ない友人だ。アルムのおかげで落ち込んでいた気持ちも少し上向きになった。
僕達はお昼休みの時間が終わるまでじゃれあっていた。
食堂にいる結構な数の人がそんな様子を見守っていて、団長も僕の方をじっと見ていたなんてそんなことには気づかずに。








僕はユングを見て自分から誘わないと団長は抱いてくれないんじゃないかって気づいた。ユングから団長を誘ってるのは見た事あるが、逆は見たことない。じゃあ、自分から動かないとまた抱いてもらえる機会なんてもしかしたら無いかもしれない。セフレも自然解消なんてこと、あるかもしれない。
僕はその日、午後の訓練が終わった後団長を待ち伏せした。執務室から団長が出てくる。

「だっ、団長!」

「…グナーデ、か。」

「はい。あの…えっと………んっと…………今日は、夜………空いてますか?」

「……あ、ああ。空いている。」

「あっ、あの……もう1週間経ちましたが、その、次は、どうしますか?」

ああああ、僕のいくじないし!なんで、ユングみたいに上手に誘えないの!!!恥ずかしくて少し!少しだけだけど、涙出てるし。顔が熱い。

「ああ、そうだな。じゃあ、今日は何処でするか?」

ドラッヘンは気がそぞろな感じで返答をした。
今日!?本当に今日!?いきなり。いや僕から今日空いてるか聞いたんだけどね!?
今日はユングの誘い断った日だったのかな?
でも、だったら今日はそんな気分じゃないんじゃないのかな……なんか心ここに在らず、みたいな感じだし。

団長から思いもよらず、OKを貰えてしまって内心興奮状態だったグナーデはその場面を見ていた人影がいて、その人が静かに走り去っていったことには一切気づかなかった。

でも、この感じなら僕の部屋に誘っても来て貰えるかもしれない……こんなことを考えていたのだから。

「僕の部屋…とか、どうですか?…………そのここから近いですし、パパっと済ませられてすぐ帰れますよ!」

部屋に呼びたい一心でメリットっぽいメリットを並べ立てようとする。

「分かった。じゃあ、このまま行くか。」

「はい!じゃあ、案内します!」

そうして、僕と団長は僕の部屋に向かうことになった。

実は僕とメルツェスは王妃であるプラハお母様の子供ではない。父上、ゲリヒト王の妾の子供だ。母はもう死んでしまっているが。
別にドロドロの血みどろな恋愛劇みたいなことが起こったわけではなく、ただ単にプラハお母様が従姉妹であるアルベルタ母上を助けたかったが為に父上にお願いして妾という立場を与えた様なものだ。
妾といっても基本的にプラハお母様が面倒をみてたし、僕達が産まれたのもこの国での母上の立場を向上させるためという部分が多かったみたいだし。
まあ、そんなわけで僕とメルツェスは妾の子で、父上が認知してくれないと王族という身分でなかったわけだ。きっと、認知されてなかったらもっと危険な身の上になっていただろう。
王族の血を引いているのに警護が薄いのだ。誘拐なんてされ放題だったかもしれない。

しかし、妾の子を認知するなんて…みたいな輩は何処にも居るわけで僕とメルツェスの生活している部屋は王族の居住区画からは少し離れている。

そのおかげでこの時間帯ならシュティレ以外の誰にも見られずに自分の部屋に到達出来る道があって、それを上手く活用してるのだが。







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