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将軍との因縁・重罪
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夜更けに、アル様は屋敷の庭を歩く。
そこそこ程度に整えられた庭は、貴族が住んでそうなほど整備されている。
いや、実際に暮らしているのは王子様なんだけどね?
「あの……昨日は部屋に籠もられて、何をしていたのでしょうか?」
私が問うと、アル様は封筒を一枚取り出した。
「手紙を少々、したためていたんだよ」
「手紙……よろしければ私が出してきましょうか? 私もちょうど、母に近況を伝えようと手紙を書いたところで」
「ああ、いや。これはちょっと機密情報が書かれている代物でね。出来れば自分で提出したいんだ」
第三王子である彼には、それなりに一般人であるレイアが知ってはならない情報があるのだろう。
「さすがに夜は冷えるね」
「はい。季節の変わり始め、ですものね」
空を眺めれば、星々の灯りは弱い。
王都周辺は地上が明るく、星々の灯りが弱くなるのだとか。
田舎出身である私には不思議なリクツだけど。
「……僕にはなんの力もない。この国を変えられるほどの影響力もない。だけど、君がいると、何かを変えられる。そんな気がする」
「私は、ただ騎士になりたくて……」
「そうだね。ただ、君を見ていると、頑張れば何かを覆せるような気がするんだ」
なぜ、唐突にそんなことを言うのだろう。
私は視線を上に挙げて考えて見るけれども想像がつかない。
「本当に、妃と共に暮らしてもいいのかもしれないな」
「なにか、仰いましたか?」
「なんでもない。忘れて欲しい」
「? はい」
よく分からないけれども。
さて、と王子が言った瞬間だった。
黒い外套を着た男たちが屋敷の庭に入り込んできた。
「な、何者……!?」
私がクラレントの柄に手を伸ばす。
そして、一人。
一人だけ、外灯には身を包まず、見覚えのある槍を持っている。
その男は――
「テュール将軍……!」
「レイア・マルテル……! キサマのような女がここにいてはならぬのじゃ……!」
そこそこ程度に整えられた庭は、貴族が住んでそうなほど整備されている。
いや、実際に暮らしているのは王子様なんだけどね?
「あの……昨日は部屋に籠もられて、何をしていたのでしょうか?」
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「手紙を少々、したためていたんだよ」
「手紙……よろしければ私が出してきましょうか? 私もちょうど、母に近況を伝えようと手紙を書いたところで」
「ああ、いや。これはちょっと機密情報が書かれている代物でね。出来れば自分で提出したいんだ」
第三王子である彼には、それなりに一般人であるレイアが知ってはならない情報があるのだろう。
「さすがに夜は冷えるね」
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「そうだね。ただ、君を見ていると、頑張れば何かを覆せるような気がするんだ」
なぜ、唐突にそんなことを言うのだろう。
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「? はい」
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「な、何者……!?」
私がクラレントの柄に手を伸ばす。
そして、一人。
一人だけ、外灯には身を包まず、見覚えのある槍を持っている。
その男は――
「テュール将軍……!」
「レイア・マルテル……! キサマのような女がここにいてはならぬのじゃ……!」
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