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レイア・マルテルとクラレント

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 私は腰に差した剣……クラレントの柄をギュッと握り込む。
 きっと、私はこれから大変な戦いをしていくことになるだろう。
 だから、母から貰った剣を握りしめ、勇気を分け与えて貰う。

「では俺はこれで失礼する。後ほど騎士団のものと同じ試験がある。心して掛かるがよい」

 ハールは背を向けて去って行く。
 呼び出しは以上……のようだけど。
 アル様は少し疲れた表情を笑顔で隠した。

「とりあえず、今日は君の能力を測る模擬戦を経て、騎士団から認めて貰うことだけど……」

 当然、騎士団から認めて貰うということは即ち、騎士団の現団長であるテュール将軍に認めて貰うということ。
 ううん……厳しそうだ……。

「それはそうとして。君のその剣……クラレントだね?」
「えっ!? あ、はい……そうなのですが……」

 クラレント。
 母から譲って貰ったその剣の名をどうしてアル様が……。

「クラレントは、我が国に伝わる宝剣だ」

 私はその言葉にドキッと反応してしまった。
 その一瞬、母に対して良からぬ疑いがよぎったからだ。

「クラレントはある時を境に、国庫から失われたと聞いたが……まさか、君が持っていたとは」
「あ、あの……これはお母さんから譲っていただいたもので、その……」

 返します。そう伝えようとした私を、アル様は首を横に振る。

「いいや、いいさ。君が持っているということは何か、理由があるハズだ」

 理由、なんて言われても。

「それに、クラレントは紛失して、父上……国王陛下自ら、捜索を禁じた。きっと、そこには何か、理由がある。だから、まだ君が持っていると良い」

 お言葉に甘えていいの?
 国の物なら、返さないのも問題な気がするけど……。
 とりあえず、クラレントをしっかりと腰にさして、アル様と共に演習場へ向かう。
 演習場は物々しい雰囲気で包まれていた。

「レイア・マルテル! このワシがキサマを騎士団から! 殿下から引き離してくれる!」

 槍を構えたテュール将軍が待ち構えていた。
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