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王妃とスリーアラウンドに選ばれるということの意味

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 その黒髪の青年は、私たちの到着を待っているかのように腕を組んでいた。
 三十代という話だけど、とても若く見える。
 アル様は真っ先にその人に頭を下げる。

「ハール・グロス様。お待たせして申し訳ございません」

 対して、ハール・グロスは静かに答えた。

「殿下。所詮、オレは下町出身の騎士。頭を下げないでください」
「いえ。王の懐刀とまで呼ばれたあなたに失礼がないようにと」
「あくまで俺は騎士団ではただの団員の一員に過ぎません」

 アル様から視線を私に移すハール。
 どうにも、こうにも、その黒い眼光だけで人を射殺せそうで、なんだか怖い。

「貴公がレイア・マルテルか」
「は、はい! えっと、スリーアラウンドで、妃ですッ!」
「どちらも“候補”である。忘れるな」
「うう……はい……」
「まだ、この国も。騎士も。貴公の存在を認めたわけではない」
「わ、分かっています……たぶん」
「たぶん?」
「重々承知しておりますッ! はいッ!」

 こ、怖い……。

「ハール殿。どうか、彼女を責めないでください。全てはこの僕、アルヴィースの独断によるもの」
「殿下。しかし、彼女は殿下の提案に承諾した。であれば、俺は見届けなければいけない」

 腕を組んで、キッと睨み付けてくるハール。
 しかし、そこに敵意のようなものは感じられない……。
 ムシロ、この状況を望んでいるかのような……?
 なんだろう……なぜ、ハール殿は私に対して、このような感情を向けてくるのだろう。

「レイア・マルテル。貴公がこの国の、伝統を潰せるか否か。俺は個人的に注目している」
「えっと、それは国王陛下の言葉……なのでしょうか……?」
「俺は陛下の伝言役(メッセンジャー)を命令されているが、これは俺の気持ちだ。あくまで陛下は此度の一件をどうすべきか悩まれておられる」

 つまり、国王陛下は私のようなどこの馬の骨か分からない女をどうすべきか悩んでいて。
 この人は……私に期待をしている?

「ゆえに。しばらく貴公には色々と試練を受けてもらう」
「は、はい……! よろしくお願いしますッ!」
「そう肩に力を入れずとも良い。オレはただ、貴公がどんな結果に辿り着くか。それを見定めるだけだ」

 ギッと睨み付けてくる視線に、どうにも私は戸惑う。
 怖いけど、なんだか……私にすごく注目してくれている……そんな気がする。

「貴公が逃げ出すか、鋼のように凝り固まった頭を持つ、この国が変わるまで……な」
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