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2部・行方不明者の謎
行方不明の冒険者
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ソフィーは工房での仕事をハンナとシャロンに任せて、冒険者ギルドまで訪れた。
いつもの薬草採取の仕事を受けるためである。
カゴを背負い、もうすでに手慣れたものだ。
「すみませんが、薬草採取には出ないでいただけますか?」
ギルドの受付嬢が首を横に振る。
ソフィーはなにやら深刻そうな彼女の顔に、どうにも腑に落ちない。
「あー、なら。依頼以外で取りに行くわ」
「そうではなく、魔物が出るようなエリア、人目に付きにくいエリアには行かないで貰えますか?」
「どういうことですか?」
掲示板をチラリと見ると、貼られていた紙がごっそり全てなくなっている。
そして、一枚だけ貼られている紙には、注意書きと思わしき紙に、デカデカと「外出自粛!」と書かれていた。
受付嬢はため息を零した。
「最近、行方不明になる冒険者が増えているのです」
「なにか、原因が?」
「分かっていません。ただ、魔物の数が増えていますし、しばらくはソロ活動は控えていただきたく……」
ぺこぺこと頭を下げられても、受付嬢は何も悪くない。
しかし、これでは当分、薬草採取の依頼を受けられそうにない。
「どうしようかしら……」
今まで、依頼を受けるついでに、ポーションの材料も持ち帰ってきた。
しかし、それが出来ないとなると、街中で栽培するしかない。
その栽培する土地がないのだ。
困ったソフィーに、同じくギルド内の椅子で座っているロジェが頭を掻いていた。
「弱ったな。仕事が出来そうにない」
「ロジェ。あなたもソロだったわね」
「ああ、ソフィー。来たんだ。そうなんだよ、仕事が受けられないから、どうしていこうかなって」
ロジェは「どうしたものか」と、口でこそ仕事が急になくなった風を装っているが、それほど困っているようには見えない。
「俺の仲間……騎士の仲間のことなんだが、最近、妙な噂を聞いていてね」
「妙な噂?」
「ああ。闇の魔法使いだ」
闇。
魔法の中でも特にタチの悪い精霊との契約を行うものだ。
「闇の魔法使いが、人間に実験を行っているって噂だ」
「それは……怖いわね」
「今回の行方不明者との関係とか、あったりなかったりするのかな?」
「……そうね。少しわたしの方でも調べてみようかしら」
このまま、仕事がなくなるのは困る。
いつもの薬草採取の仕事を受けるためである。
カゴを背負い、もうすでに手慣れたものだ。
「すみませんが、薬草採取には出ないでいただけますか?」
ギルドの受付嬢が首を横に振る。
ソフィーはなにやら深刻そうな彼女の顔に、どうにも腑に落ちない。
「あー、なら。依頼以外で取りに行くわ」
「そうではなく、魔物が出るようなエリア、人目に付きにくいエリアには行かないで貰えますか?」
「どういうことですか?」
掲示板をチラリと見ると、貼られていた紙がごっそり全てなくなっている。
そして、一枚だけ貼られている紙には、注意書きと思わしき紙に、デカデカと「外出自粛!」と書かれていた。
受付嬢はため息を零した。
「最近、行方不明になる冒険者が増えているのです」
「なにか、原因が?」
「分かっていません。ただ、魔物の数が増えていますし、しばらくはソロ活動は控えていただきたく……」
ぺこぺこと頭を下げられても、受付嬢は何も悪くない。
しかし、これでは当分、薬草採取の依頼を受けられそうにない。
「どうしようかしら……」
今まで、依頼を受けるついでに、ポーションの材料も持ち帰ってきた。
しかし、それが出来ないとなると、街中で栽培するしかない。
その栽培する土地がないのだ。
困ったソフィーに、同じくギルド内の椅子で座っているロジェが頭を掻いていた。
「弱ったな。仕事が出来そうにない」
「ロジェ。あなたもソロだったわね」
「ああ、ソフィー。来たんだ。そうなんだよ、仕事が受けられないから、どうしていこうかなって」
ロジェは「どうしたものか」と、口でこそ仕事が急になくなった風を装っているが、それほど困っているようには見えない。
「俺の仲間……騎士の仲間のことなんだが、最近、妙な噂を聞いていてね」
「妙な噂?」
「ああ。闇の魔法使いだ」
闇。
魔法の中でも特にタチの悪い精霊との契約を行うものだ。
「闇の魔法使いが、人間に実験を行っているって噂だ」
「それは……怖いわね」
「今回の行方不明者との関係とか、あったりなかったりするのかな?」
「……そうね。少しわたしの方でも調べてみようかしら」
このまま、仕事がなくなるのは困る。
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