39 / 70
二部・工房の方針
聖女とは?
しおりを挟む
アイザックの手下たちを自警団に突き出した。
ゴロツキ共はハンナに任せて、ソフィーはシャロンと共に小さなパブにやってきた。
シャロンは少しずつ水を飲む。
「どういうことか、お話しします」
シャロンは息を呑んで、何があったのか、何の目的があってソフィーに近づいて来たのか、一つ一つ説明を始めた。
☆
「お前は聖女ソフィーに近づき、青白い光を放つ謎の杖を奪い去るのじゃ」
「わしの雇い主は近づくことができぬ。お前が一人でアイリスドリスの花を奪う段取りも整えるのじゃ」
「お前の母親は、不死の病を患っている。それを治すには、アイリスドリスの花で作られた薬でしか治せぬからのう」
「アイリスドリスの花と、謎の杖。それさえあれば、わしは無限にも等しい富を得られる!」
「出し抜こうとしてもムダじゃ。聖女と言えども、お前のようなコソ泥にアイリスドリスの花を渡すわけがない。しかし、盗むことに成功すれば、わしが薬師を紹介しよう」
☆
「……それがアイザックがあたしに言ったことです」
なるほど、と腑に落ちた。
母親が病。だからこそ、彼女はポーションや杖を求めていたわけか。
「……あの、それはそうと聖女、というのは」
「え? ソフィー様は全ての植物に生命を与える、植物の聖女様ですよね?」
「ただの錬金術師なんだけど」
聖女とはなんだ。
身に覚えのない二つ名にソフィーはどう反応すればいいか分からない。
誰がそんなことを言い出したのだ。
「元々、あたしはスリや窃盗を繰り返しては換金していたんです。病に伏した母のためとはいえ、仕事がなくて……」
「勤め先はなかったの?」
「はい。どこも……門前払いでした。ソフィーさんのように雇ってくれるところはどこにもなかった」
それはソフィーも既に経験済みだ。
ソフィーとて仕事がなくてダーレンの娼館に頼るしかなかった。
「……ごめんなさい。あたし、自警団に自主します」
「いいえ。あなたは大切な従業員の一人よ」
ちょっとした軽食が運ばれてくる。
サラダに、パンなどが並んでいた。
「あなたがスリを辞めて、反省して。それで一生懸命ウチで働いてくれることを約束してくれるなら、わたしが責任を持ってあなたのお母さんを治療するわ」
とんと胸を張るようにソフィーが叩くと、シャロンは涙をぽろぽろ流した。
「シャロンは悪い子なのにですかっ! お母さんを治すために悪いことをしてきたのにですかっ!? 店の商品に手を出そうとしたのにですかっ!」
「あなたは工房の商品を守ってくれたじゃない」
「あ……」
「だから、あなたは立派なわたしの従業員。わたしのところで働いて。ね?」
「は、はいっ……! あ、あたし、盗みとか今後どう謝罪してばいいのか分からないですけどっ! ソフィーさんのために頑張りますっ!」
くぅと小さなお腹の音と共にシャロンはサラダやパンを掻き込むように食べた。
ゴロツキ共はハンナに任せて、ソフィーはシャロンと共に小さなパブにやってきた。
シャロンは少しずつ水を飲む。
「どういうことか、お話しします」
シャロンは息を呑んで、何があったのか、何の目的があってソフィーに近づいて来たのか、一つ一つ説明を始めた。
☆
「お前は聖女ソフィーに近づき、青白い光を放つ謎の杖を奪い去るのじゃ」
「わしの雇い主は近づくことができぬ。お前が一人でアイリスドリスの花を奪う段取りも整えるのじゃ」
「お前の母親は、不死の病を患っている。それを治すには、アイリスドリスの花で作られた薬でしか治せぬからのう」
「アイリスドリスの花と、謎の杖。それさえあれば、わしは無限にも等しい富を得られる!」
「出し抜こうとしてもムダじゃ。聖女と言えども、お前のようなコソ泥にアイリスドリスの花を渡すわけがない。しかし、盗むことに成功すれば、わしが薬師を紹介しよう」
☆
「……それがアイザックがあたしに言ったことです」
なるほど、と腑に落ちた。
母親が病。だからこそ、彼女はポーションや杖を求めていたわけか。
「……あの、それはそうと聖女、というのは」
「え? ソフィー様は全ての植物に生命を与える、植物の聖女様ですよね?」
「ただの錬金術師なんだけど」
聖女とはなんだ。
身に覚えのない二つ名にソフィーはどう反応すればいいか分からない。
誰がそんなことを言い出したのだ。
「元々、あたしはスリや窃盗を繰り返しては換金していたんです。病に伏した母のためとはいえ、仕事がなくて……」
「勤め先はなかったの?」
「はい。どこも……門前払いでした。ソフィーさんのように雇ってくれるところはどこにもなかった」
それはソフィーも既に経験済みだ。
ソフィーとて仕事がなくてダーレンの娼館に頼るしかなかった。
「……ごめんなさい。あたし、自警団に自主します」
「いいえ。あなたは大切な従業員の一人よ」
ちょっとした軽食が運ばれてくる。
サラダに、パンなどが並んでいた。
「あなたがスリを辞めて、反省して。それで一生懸命ウチで働いてくれることを約束してくれるなら、わたしが責任を持ってあなたのお母さんを治療するわ」
とんと胸を張るようにソフィーが叩くと、シャロンは涙をぽろぽろ流した。
「シャロンは悪い子なのにですかっ! お母さんを治すために悪いことをしてきたのにですかっ!? 店の商品に手を出そうとしたのにですかっ!」
「あなたは工房の商品を守ってくれたじゃない」
「あ……」
「だから、あなたは立派なわたしの従業員。わたしのところで働いて。ね?」
「は、はいっ……! あ、あたし、盗みとか今後どう謝罪してばいいのか分からないですけどっ! ソフィーさんのために頑張りますっ!」
くぅと小さなお腹の音と共にシャロンはサラダやパンを掻き込むように食べた。
5
お気に入りに追加
546
あなたにおすすめの小説
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
異世界悪霊譚 ~無能な兄に殺され悪霊になってしまったけど、『吸収』で魔力とスキルを集めていたら世界が畏怖しているようです~
テツみン
ファンタジー
**救国編完結!**
『鑑定——』
エリオット・ラングレー
種族 悪霊
HP 測定不能
MP 測定不能
スキル 「鑑定」、「無限収納」、「全属性魔法」、「思念伝達」、「幻影」、「念動力」……他、多数
アビリティ 「吸収」、「咆哮」、「誘眠」、「脱兎」、「猪突」、「貪食」……他、多数
次々と襲ってくる悪霊を『吸収』し、魔力とスキルを獲得した結果、エリオットは各国が恐れるほどの強大なチカラを持つ存在となっていた!
だけど、ステータス表をよーーーーっく見てほしい! そう、種族のところを!
彼も悪霊――つまり「死んでいた」のだ!
これは、無念の死を遂げたエリオット少年が悪霊となり、復讐を果たす――つもりが、なぜか王国の大惨事に巻き込まれ、救国の英雄となる話………悪霊なんだけどね。
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた
向原 行人
恋愛
精霊の加護を受け、普通の人には見る事も感じる事も出来ない精霊と、会話が出来る少女リディア。
聖女として各地の精霊石に精霊の力を込め、国を災いから守っているのに、突然第四王女によって追放されてしまう。
暫くは精霊の力も残っているけれど、時間が経って精霊石から力が無くなれば魔物が出て来るし、魔導具も動かなくなるけど……本当に大丈夫!?
一先ず、この国に居るとマズそうだから、元聖女っていうのは隠して、別の国で趣味を活かして生活していこうかな。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。
偽物の女神と陥れられ国を追われることになった聖女が、ざまぁのために虎視眈々と策略を練りながら、辺境の地でゆったり楽しく領地開拓ライフ!!
銀灰
ファンタジー
生まれたときからこの身に宿した聖女の力をもって、私はこの国を守り続けてきた。
人々は、私を女神の代理と呼ぶ。
だが――ふとした拍子に転落する様は、ただの人間と何も変わらないようだ。
ある日、私は悪女ルイーンの陰謀に陥れられ、偽物の女神という烙印を押されて国を追いやられることとなった。
……まあ、いいんだがな。
私が困ることではないのだから。
しかしせっかくだ、辺境の地を切り開いて、のんびりゆったりとするか。
今まで、そういった機会もなかったしな。
……だが、そうだな。
陥れられたこの借りは、返すことにするか。
女神などと呼ばれてはいるが、私も一人の人間だ。
企みの一つも、考えてみたりするさ。
さて、どうなるか――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる