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二部・工房の方針
行動の裏側に
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「行ってきますっ!」
シャロンは今日もポーションを運んでいる。
彼女はいつも通り元気だ。
しかし、ソフィーにはどうして気になってしまう。
働く彼女の顔にチラつく、後ろめたい感情のような何かを。
彼女が外に出た瞬間に、何か人影が落ちてきた!
「おはようございます、お嬢様」
「は、ハンナ!?」
天井から飛び降りてきたのはハンナであった。
「なんで天井から降りてきたの……!」
「なんとなくです」
なんとなくで人は天井に張り付いたりしない。
「それでハンナ。お父様はなんて言っていたの?」
「……伯爵はどうでも良いではありませんか。もう帰らないのでしょう?」
「そうだけど、おかしいと思って」
「気のせいです」
「気のせいって……王子も失脚したのに、何も言ってこないのはどうしても」
「気のせいです」
「わ、分かったから」
有無を言わさぬ勢いに、ソフィーはたじろいだ。
それよりも気になるのはそちらではない。
「ハンナ……少し話を聞いてくれる?」
☆
「なるほど……少しおかしい、と」
ソフィーは昨日の侵入の件やポーションを求めていたことまで含めて、シャロンの様子を伝えた。
「なぜ彼女は杖について聞いてきたのでしょうか?」
「……それが分からないの」
「手っ取り早く聞いてみるのがいいですね」
ハンナはくるくるとペンを回しながら帳簿を書き始める。
相変わらず、表情や行動から何も感じ取れないメイドだった。
「……それにしても遅いわね」
「お嬢様。シャロンはどちらに?」
「今日は駅馬車までポーションを運んで貰っているの。隣町のギルドにも少しポーションを売り始めたから」
「なるほど。ここから駅までそこまで時間はかからない……ですか」
ハンナは無言で扉を開けた。
「ではお嬢様。迎えに行ってきます」
「ちょ、ちょっと遅れているだけかもしれないわ」
「そのちょっとが気になるのです」
ハンナは無表情に、それでいて、足下にナイフの鞘を括り付けた。
「ならわたしもついて行くわ」
「ダメです」
「なぜ?」
「もしお嬢様に――危険が及べば?」
「わたしはシャロンの雇用主よ。彼女が危険な目に遭うのなら、わたしの責任よ」
「……平民になられて、強くなられましたね」
ソフィーはハンナと一緒に駅に出向く。
シャロンは今日もポーションを運んでいる。
彼女はいつも通り元気だ。
しかし、ソフィーにはどうして気になってしまう。
働く彼女の顔にチラつく、後ろめたい感情のような何かを。
彼女が外に出た瞬間に、何か人影が落ちてきた!
「おはようございます、お嬢様」
「は、ハンナ!?」
天井から飛び降りてきたのはハンナであった。
「なんで天井から降りてきたの……!」
「なんとなくです」
なんとなくで人は天井に張り付いたりしない。
「それでハンナ。お父様はなんて言っていたの?」
「……伯爵はどうでも良いではありませんか。もう帰らないのでしょう?」
「そうだけど、おかしいと思って」
「気のせいです」
「気のせいって……王子も失脚したのに、何も言ってこないのはどうしても」
「気のせいです」
「わ、分かったから」
有無を言わさぬ勢いに、ソフィーはたじろいだ。
それよりも気になるのはそちらではない。
「ハンナ……少し話を聞いてくれる?」
☆
「なるほど……少しおかしい、と」
ソフィーは昨日の侵入の件やポーションを求めていたことまで含めて、シャロンの様子を伝えた。
「なぜ彼女は杖について聞いてきたのでしょうか?」
「……それが分からないの」
「手っ取り早く聞いてみるのがいいですね」
ハンナはくるくるとペンを回しながら帳簿を書き始める。
相変わらず、表情や行動から何も感じ取れないメイドだった。
「……それにしても遅いわね」
「お嬢様。シャロンはどちらに?」
「今日は駅馬車までポーションを運んで貰っているの。隣町のギルドにも少しポーションを売り始めたから」
「なるほど。ここから駅までそこまで時間はかからない……ですか」
ハンナは無言で扉を開けた。
「ではお嬢様。迎えに行ってきます」
「ちょ、ちょっと遅れているだけかもしれないわ」
「そのちょっとが気になるのです」
ハンナは無表情に、それでいて、足下にナイフの鞘を括り付けた。
「ならわたしもついて行くわ」
「ダメです」
「なぜ?」
「もしお嬢様に――危険が及べば?」
「わたしはシャロンの雇用主よ。彼女が危険な目に遭うのなら、わたしの責任よ」
「……平民になられて、強くなられましたね」
ソフィーはハンナと一緒に駅に出向く。
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