16 / 70
借金令嬢
ソフィーの借金返済計画 借金残り僅か?
しおりを挟む
夜。工房に一人の男が尋ねて来た。
「よお嬢ちゃん。稼いでいるかい」
「も、もちろんよ」
例の娼館の男だ。
こんな夜中になにをしに来たのか。
「借金はどうだ? 返済の話?」
「もう回収なの? それなら」
ソフィーが今日貰ったギルドの薬草買い取り表を手渡そうと取り出した時だった。
男の背中に、誰かが剣を向けている。
「ダーレン! ソフィーさんに何をしに来た!」
「おいおい。これはどういうことだい?」
「ダーレン……! カネの亡者とは思っていたが、ソフィーさんにまで手を挙げるなら、容赦はしないッ!」
工房の灯りで照らされ、その男の正体が分かった。
ロジェだ。ロジェが男の背に剣を向けている。
「ろ、ロジェ! いきなり何をしているの……!?」
「ソフィーさん。もう大丈夫だ」
「だ、大丈夫じゃないのだけど」
「なんだって!?」
なんだって、じゃない。
今、大丈夫じゃないのは、ロジェの方だ。
「青年。俺ァ何もお嬢ちゃん相手に、悪さしようとしていたワケじゃねえ」
「なんだと? じゃあ、何しに来たって言うんだ!?」
「借金だよ」
「借金だと!? よりにもよってお前にか!?」
「ああ。そうだ。まあ、今返されたら、困るんだがなー」
「どういう意味だ?」
「利息分の儲けがないからな」
ロジェはしばらく考えているように停止していたが、剣を収めた。
まだ睨み付けているようで、ロジェは工房内に入ってくると、ソフィーの身を守るように、目の前に立つ。
「あの……ロジェさん。本当に借金を背負っていて」
「この男ダーレンは、違法まがいなことを繰り返している男だ。借金のカタに、娘を連れて行くこともある」
娼館の男……ダーレンは否定することなく笑う。
「ちゃんと契約の上で進めていることだ。青年」
「…………」
「それに。俺のことを知っているなら、俺がなんと呼ばれているか。知っているか? ん?」
「ダーレンはゲスだが、クズではない」
「そういうこと、だ」
ダーレンはソフィーから金を受け取ると一枚一枚数えていく。
「折角、工房のショバ代を与えた。初期費用の分までたんまりな。そんで借金に利息を乗せて儲けようとしたら、もう完済一歩手前まで来てやがる」
「ええっと、そんなに稼いだかしら……?」
「嬢ちゃん。今度契約書の見方を教えてやるぜ」
ダーレンはソフィーに書類を返すと、ひらひらと手を振る。
「今度、ウチにポーション仕入れたら嬢ちゃんの借金生活はもうお終いだ。早くにおさらば出来て良かったな」
また、下卑た笑い声を、周囲に憚らず残しながら去って行った。
「よお嬢ちゃん。稼いでいるかい」
「も、もちろんよ」
例の娼館の男だ。
こんな夜中になにをしに来たのか。
「借金はどうだ? 返済の話?」
「もう回収なの? それなら」
ソフィーが今日貰ったギルドの薬草買い取り表を手渡そうと取り出した時だった。
男の背中に、誰かが剣を向けている。
「ダーレン! ソフィーさんに何をしに来た!」
「おいおい。これはどういうことだい?」
「ダーレン……! カネの亡者とは思っていたが、ソフィーさんにまで手を挙げるなら、容赦はしないッ!」
工房の灯りで照らされ、その男の正体が分かった。
ロジェだ。ロジェが男の背に剣を向けている。
「ろ、ロジェ! いきなり何をしているの……!?」
「ソフィーさん。もう大丈夫だ」
「だ、大丈夫じゃないのだけど」
「なんだって!?」
なんだって、じゃない。
今、大丈夫じゃないのは、ロジェの方だ。
「青年。俺ァ何もお嬢ちゃん相手に、悪さしようとしていたワケじゃねえ」
「なんだと? じゃあ、何しに来たって言うんだ!?」
「借金だよ」
「借金だと!? よりにもよってお前にか!?」
「ああ。そうだ。まあ、今返されたら、困るんだがなー」
「どういう意味だ?」
「利息分の儲けがないからな」
ロジェはしばらく考えているように停止していたが、剣を収めた。
まだ睨み付けているようで、ロジェは工房内に入ってくると、ソフィーの身を守るように、目の前に立つ。
「あの……ロジェさん。本当に借金を背負っていて」
「この男ダーレンは、違法まがいなことを繰り返している男だ。借金のカタに、娘を連れて行くこともある」
娼館の男……ダーレンは否定することなく笑う。
「ちゃんと契約の上で進めていることだ。青年」
「…………」
「それに。俺のことを知っているなら、俺がなんと呼ばれているか。知っているか? ん?」
「ダーレンはゲスだが、クズではない」
「そういうこと、だ」
ダーレンはソフィーから金を受け取ると一枚一枚数えていく。
「折角、工房のショバ代を与えた。初期費用の分までたんまりな。そんで借金に利息を乗せて儲けようとしたら、もう完済一歩手前まで来てやがる」
「ええっと、そんなに稼いだかしら……?」
「嬢ちゃん。今度契約書の見方を教えてやるぜ」
ダーレンはソフィーに書類を返すと、ひらひらと手を振る。
「今度、ウチにポーション仕入れたら嬢ちゃんの借金生活はもうお終いだ。早くにおさらば出来て良かったな」
また、下卑た笑い声を、周囲に憚らず残しながら去って行った。
7
お気に入りに追加
543
あなたにおすすめの小説
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
転生おばさんは有能な侍女
吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした
え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀?
転生おばさんは忙しい
そして、新しい恋の予感……
てへ
豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!
美形王子様が私を離してくれません!?虐げられた伯爵令嬢が前世の知識を使ってみんなを幸せにしようとしたら、溺愛の沼に嵌りました
葵 遥菜
恋愛
道端で急に前世を思い出した私はアイリーン・グレン。
前世は両親を亡くして児童養護施設で育った。だから、今世はたとえ伯爵家の本邸から距離のある「離れ」に住んでいても、両親が揃っていて、綺麗なお姉様もいてとっても幸せ!
だけど……そのぬりかべ、もとい厚化粧はなんですか? せっかくの美貌が台無しです。前世美容部員の名にかけて、そのぬりかべ、破壊させていただきます!
「女の子たちが幸せに笑ってくれるのが私の一番の幸せなの!」
ーーすると、家族が円満になっちゃった!? 美形王子様が迫ってきた!?
私はただ、この世界のすべての女性を幸せにしたかっただけなのにーー!
※約六万字で完結するので、長編というより中編です。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】経費削減でリストラされた社畜聖女は、隣国でスローライフを送る〜隣国で祈ったら国王に溺愛され幸せを掴んだ上に国自体が明るくなりました〜
よどら文鳥
恋愛
「聖女イデアよ、もう祈らなくとも良くなった」
ブラークメリル王国の新米国王ロブリーは、節約と経費削減に力を入れる国王である。
どこの国でも、聖女が作る結界の加護によって危険なモンスターから国を守ってきた。
国として大事な機能も経費削減のために不要だと決断したのである。
そのとばっちりを受けたのが聖女イデア。
国のために、毎日限界まで聖なる力を放出してきた。
本来は何人もの聖女がひとつの国の結界を作るのに、たった一人で国全体を守っていたほどだ。
しかも、食事だけで生きていくのが精一杯なくらい少ない給料で。
だがその生活もロブリーの政策のためにリストラされ、社畜生活は解放される。
と、思っていたら、今度はイデア自身が他国から高値で取引されていたことを知り、渋々その国へ御者アメリと共に移動する。
目的のホワイトラブリー王国へ到着し、クラフト国王に聖女だと話すが、意図が通じず戸惑いを隠せないイデアとアメリ。
しかし、実はそもそもの取引が……。
幸いにも、ホワイトラブリー王国での生活が認められ、イデアはこの国で聖なる力を発揮していく。
今までの過労が嘘だったかのように、楽しく無理なく力を発揮できていて仕事に誇りを持ち始めるイデア。
しかも、周りにも聖なる力の影響は凄まじかったようで、ホワイトラブリー王国は激的な変化が起こる。
一方、聖女のいなくなったブラークメリル王国では、結界もなくなった上、無茶苦茶な経費削減政策が次々と起こって……?
※政策などに関してはご都合主義な部分があります。
異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ
トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!?
自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。
果たして雅は独りで生きていけるのか!?
実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
錬金術師の成り上がり!? 家族と絶縁したら、天才伯爵令息に溺愛されました
悠十
恋愛
旧題:『ハーレム主人公』とサヨナラしました
家族にとって『どうでも良い子』。それが、レナだった。
いつしか家族からの愛情を諦めたレナの心の支えは、幼馴染の男の子だった。しかし、彼の周りには女の子が侍るようになった。
そして彼は言った。
「みんな好きだよ」
特別が欲しいレナは、彼から離れることを選択した。
だけど、彼が何故か追って来て……
「なんで俺から離れるんだ⁉」
「私にハーレムは無理!」
初恋くらい、奇麗に終わらせたいんだけどな⁉
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎関連作品
『野良錬金術師ネモの異世界転生放浪録(旧題:野良錬金術師は頭のネジを投げ捨てた!)』
『野良錬金術師ネモの異世界学園騒動録』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎お知らせ
2022/01/13
いつも閲覧いただき、ありがとうございます。
今回、『ハーレム主人公とサヨナラしました』の書籍化のお話しを頂き、現在調整中です。
また、その調整の中で、改題を検討中です。
改題をする事になりましたら、旧題も載せておきますが、少し混乱をさせてしまうかもしれません。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
2022/01/20
現在書籍化の話が進んでいるため、該当部分を1月27日を目途に引き下げることになりました。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
2022/01/27
書籍化調整にあたり、改題をいたしました。
また、設定の一部変更がありましたことをお知らせいたします。
イヴァン(男爵令息→伯爵令息)
書籍化予定の該当部分の小説を引き下げをいたしました。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
2022/02/28
書籍の販売が開始されました。
お手に取ってご覧いただけましたら幸いです。
【完結】王女だった私が逃げ出して神子になった話
あおくん
恋愛
親の顔も知らず、なんの目的で隔離され虐げられているのかわからないまま一生を終えるのかと思われたその時、王妃様が私を助けてくれた。
優しく接してくれた王妃様。そんな王妃様に一生を捧げようと誓った私は、突然王妃様の息子ルーク王子を殺そうとした罪で処刑を言い渡される。
死んだかと思われたその時、二度目の人生を迎えることになった私は、王妃に殺されたこと、そして殺される理由を知った。
助けてくれた筈の王妃様に憎まれていた私。
二度目の人生ではそうはいかない。王妃の手に陥る前に絶対に逃げ出して、そして自由に生き抜いてみせると心に決める。
だけど私は再び王城に戻ることになり、そして王妃と戦うかの決断を迫られた。
恋愛要素低いかもしれませんが、恋愛と言わせてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる