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第二章、〘飛び交う依頼〙

ギア15、おーい、依頼場所、おっばけやーしきぃー。

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「皆さんに突然ですが、問題に答えて頂きます。私たちのチーム名、さぁ、一体なんだったでしょうか?そう、実は言っていなかったのです。そう、私たちは…おっと?何か騒がしい…なッ?!ナオタさんこれちょっとどういう…?!あ、皆さん!!今回も楽しみに!!!」

「…やです。」「ダメです。」「…イヤです。」「諦めてください。」
[ディンゴ!]
 「逃げのエヴォッ!!」「…あーもう、ナグラ!」
[コガネグモ!]
「拘束のダヌア。」「ギャーーッ!!??」
何故開始早々この様な状況になっているのか、それは数分前に遡る。

[数分前]
「遊園地で不審者?」「えぇ。怪人であるジャアクカルマに変身する為のアイテム、ジャアクトランスバックル。それらしき物を持った人物がいたとの報告が。」
ある日、ナルヤ達の元に一通の報告が届く。その内容は敵陣営デスブレイドの生み出した怪人、ジャアクカルマの可能性がある者が遊園地に出没したというものだった。
「なるほどな。だいたい分かった。」
「あ、ナグラ。おは。」
そこにナグラが寝室からお目覚めになりリビングに姿を見せる。ナルヤは手のひらをナグラに見せるように挙手して挨拶をする。
「おはよう。それでだ、その依頼は具体的にどこだ?」
「遊園地の何処か…ってことですか?まぁ、それは…」
「「……」」

「お化け屋敷ですが…」

[今]
「なんでお化け屋敷なんだよどうせ見間違いだろ?!ってかあのバックルをよくもまぁ暗い中視認できたな?!ふざけ「とりあえず身体だけでなく口も拘束しといてください。」「あぁ。」
ナオタは朝から近所迷惑にならないようダヌアに指示をする。ダヌアは自身の蜘蛛の糸を再度生成し、ぐるぐるとナルヤの口に巻きつける。ナルヤはそれでも負けじと何かを訴えようとしたが、その時には口は塞がれていてモゴモゴと何を言っているのか二人は解読不可能であった。
「んーッ!?んんーーッ!!??」
「とりあえず、このお化け屋敷のある遊園地、[仮崎スパークランド]へ行きましょう。」
ナグラは繭状態のナルヤを担ぎあげ、静かに頷く。

「んーッ!!!」

[仮崎スパークランド]
子供とその親が溢れたこの微笑ましい施設は、[皆で一緒に、GLEATな笑顔を届ける!]というキャッチコピーで経営している比較的小規模な遊園地である。ジェットコースターの音と共に叫び声が聞こえ、メリーゴーランドの軽やかなリズムと共に笑顔を見せる親子。どこを見ても幸せにありふれていた遊園地だった。
「…ここだけを見ると楽しいなホント。」
「父さん、僕たちが見るべき所はそっちじゃなくて…」
ナオタはため息をつくナルヤの視界に入り、笑顔で彼の顔を両手で左に向かせるとそこには、
[呪われた廃病院 消えた友人を探せ]
「…絶対怖いですやん。ってか廃病院って記憶に新しい気が…」
「おい、何をモタモタしている。さっさと行くぞ。」
「いやなんでお前ら平気なん?!廃病院ぞ?!消えた友人ぞ?!絶対友人死んでますやん呪われてますやん?!というかお化け屋敷ってお化けが確定で出てこそお化け屋敷だから嫌なんだよボケ共ッ!!!」
「はいはいはい。詳しいことは向こうの廃病院で話を聞きますよー。」
「廃病院より刑務所の方がマシだァァァァーーッ!!!!!」
2人はジタバタ抵抗するナルヤを押し出し、その光景を見た大勢の遊園地の客は冷酷な目で3人を見つめていた。

[お化け屋敷内]
「だ、誰かいますかぁー……?」
「まぁ、…いるだろ。」「うーんブラックさぁん、怖いこと言わないでぇ??」
マイナスはブラックの言葉に少し高めのトーンで返答する。エヌは自分の父の情けない所を見て思わず少し吹笑いしそうになるがなんとか堪える。
「つーかさぁ、なんでこうさぁ、なんでこうお化け屋敷周らないといけないわけ?ってかエヌなんか笑ってね?」
「…あーいえ、気の所為ですね。…まぁ仕方ないじゃないですか。そもそも依頼にある通り、ターゲットはお化け屋敷内で神出鬼没的な感じで現れているらしいですし。」
3人はお化け屋敷内でジャアクトランスバックルを持つ人物がいたという報告があることはもちろん知っていたが、その人物が出現した所が、お化け屋敷内の何処のスポットなのかが明確に分かってなかった。だからこそ、お化け屋敷観光がてら探さないといけなかった。
「じゃあレーダーで探索は?」
「電波障害に強くなるようにメンテナンス中です。」
「じゃあディンゴギアとか?」
「敵が警戒するだろ。」
「あーじゃあ…んー…お化け屋敷の運営停止とか!そうすれば他人への被害が…」
「まだ半信半疑の存在である俺たちが言ったところで、止めてくれるとでも?」
マイナスはお化け屋敷を探索したくないが為、反撃ののろしを何度も掲げるがことごとく一瞬で鎮火されてしまう。もう諦めるしかない。でも、何かあるのではないか?なにか、この状況を打開できる手立てが。
「そ、それじゃ「ようこそ……呪われた廃病院へ……」
突然の女性の声に場が固まり、マイナスは目を点にして声の聴こえた方向を向くと、そこには血塗れのナースが。
「皆様はここで何をしに…「おォォォォおおあああああ!!!!!?????」

[数分後、楽屋内にて]
「あー!貴方達がそのギアヒーローズ!!」
「はい、そうです!」
「んえ?ギアヒーローズ・・・・・・・?」
「…あー…言うのを忘れていたな。俺たちはギアヒーローズというチーム名で活動をしている。デスブレイド側は俺たちをそう呼んでいる。俺たちが奴らをデスブレイドと呼ぶようにな…まぁ、このことは早めに言おうと思ったが…」「フツーに忘れたと。」「…すまん。」
ギアヒーローズという言葉を聞き、マイナスは「お前さぁ…」と、意外とおバカなブラックをジト目で見つめる。ブラックは顔を俯かせて小声で謝る。
「本当にいたんだ…ギアヒーローズ!あ、私は須藤スドウ 春菜ハルナって言うの!ねぇ!何か掛け声とかないの!?」
「…へ?掛け声?」
マイナスはハルナと名乗る彼女の問いかけに少し首を傾げる。
「ほら!戦隊みたいな!『 赤きお寿司は魂の味!スシタロレッド!!』みたいな!!」
ハルナのその言葉にマイナスは目付きを変え、「え?!」と彼女に詰め寄る。
「お姉さん[御寿司屋戦隊]知ってんの?!」
「え?!君も知ってるの?!」 
「「オスシヤセンタイ…?」」
御寿司屋戦隊という未知の言葉を聞き、ブラックとエヌは唖然とする。
「え、知らない?御寿司屋戦隊。」
「今やってる特撮シリーズだよ?」
「へ、へぇ…」
エヌは2人のなんとも言えない表情に困惑する。「そんなの知ってて当たり前だろ」というオーラが滲み出ていた。
「え、じゃあ君さ![仮面戦士ライジンズ]とか知ってる!?」
「えー知ってます知ってます!!絶賛リアタイで見てます絶賛はされてないと思いますけど!!!」
「いや私が絶賛するよ!!!ホントに!!??推しの戦士は!!??」
「断ッ然[ホーリーデビル]!!!」
「ホーリーデビルいいよね!!!でも私はやっぱり[ヤーガ]かな!!!」
「分かる!!!ヤーガのあのシンプルな肉弾戦とかマジで強者っていうか…「一旦そこまでだ。」
脳がキャパオーバーしそうになったブラックは頭を抱えて2人を止める。その横でエヌは体育座りでうずくまって「ウウウウ…」唸りを上げていた。
「言葉で死にそうになったのは初めてだ…頼む。少し。休ませてくれ。」「ウウウウ…」
「「あ、はーい。」」

[十数分後]
「…それでだ、掛け声か…そんなもんは無いな。決めゼリフはあるが…」「作ろうッッ!!!!」「…父さんは特撮の話になると本当にうるさ…凄いですね。」
ハルナは休憩時間が過ぎた為楽屋を後にした。しかし、楽屋を後にする前にマイナスと連絡先を交換した為、彼は仲間を見つけた喜びで未だにハイテンションだった。
「そうだなぁ…こういう順で掛け声やるのはどう?決めゼリフはまぁタイミングを見計らって言えば良いわけだし!この掛け声には入れなくて良い的な!?」「落ち着け。」「うす。」
エヌはため息をつくが、考え事をしている時の手つきをして少し考え込む。
「…でも、これいいですね……例えば、こういうのとか。」「お、流石俺の未来の息子やなお目が高い。」
「いえ、それほどでも…あ、これとかもいいですね!僕、これがいいです!」「おーいいね!!俺もそれが似合うと思ってた!!」「じゃあ、ブラックはこれとか?」「だよな?!やっぱそれだよな!!!」「助けてくれ。」
ブラックはエヌという仲間を失い、思わず助けを求めてしまう。構わず2人は掛け声を提案し合い楽屋は盛り上がっていた。

[またまた数分後]
「…ッおーし!各々決まったなー!」「ですね!」「…ハァ……俺も歳か……(17歳)」
そしてエヌが、にこやかな顔でマイナスに振り向き、
「ではお化け屋敷探索、再開しましょう!」
「…」
「…マイナス、気持ちは分からなくもない。だが…」
「人生、楽しいまま終わらせてくださいよぉ…」
流石のマイナスも諦めムードに陥っていたので、3人は素直に楽屋を後にした。ただ1人、長いため息をつきながら。
[お化け屋敷内]
「…んで、確かここのお化け屋敷は、行方不明の友達を探せ!っていう設定だったよな。」
「ってことは、お化け屋敷のクリア条件は…」
「十中八九、その友達を探すことだろう。」
不審者を探すがてら、3人はお化け屋敷を探索する。
「にしても不気味やなぁ…ぁあうぁ!?…って、ただの猿の仮面じゃねぇかぁ…」
マイナスはビビり散らかし、2人の未来の息子に醜態を晒す。そこにエヌが、ある物に気がつく。
「2人とも!これって…」
「なんだ?まさか、依頼に進展がありそうなものか?」
「いえ…これは…!!」
「ん?なになにー?」
2人の間を掻い潜るようにマイナスは進み、そこを見つめると…

[タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ]

…と書かれた紙と死体があった。
「…オンギャァァァァアアアアアアアア????!!!!」
「ア゙ア゙ア゙「おー、これマネキンですよ。完成度高い…」ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙「流石本場のお化け屋敷だ。力の入れようが違うな。」ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙「「…うるッさいッッ!!!」」ア゙あ、はい。」
その時2人は確信した。この後、我が父は暴走するのだろうと。そして、2人はゆっくりと耳を閉じた。

[ダイジェスト]

廃病院004号室にて
「おぐァァァァァァ!!!???」
「窓を叩く患者の怨霊か、流石の完成度だ。」

廃病院066号室にて
「はぁぁぐぉあああ!!!???」
「友達の死体が三枚目の御札を…意志を引き継ぐってことですか…」

廃病院144号室にて
「ぬぉっはァァァァ!!!???」
「御札4枚目、ゲットだな。我が友の命、無駄にはしない。」「ですね!さぁ、先を急ぎましょう!!」

廃病院出口にて
「ぬぅぉぉおお追ってきチャアァァァァアアア!!!???」
「走れー!…お?」「我が友達が抑えてくれているだと…なんて良い話なんだ…」

[ダイジェスト終了]
「ハァ…ハァ…お、終わっ……た……うp…」
「マイナス、エチケット袋だ。」「サンキューブラッ…クっpおrrrrrrr」
「うわぁ……」
無事?屋敷内を探索し終わった3人は遊園地のレストランにて、昼飯を取りつつ現状をまとめるために会議を開く。
「…っあーメロンソーダで生き返るゥ!クリームメロンソーダじゃなくてメロンソーダ単品が良いのよなぁ。」
「…っふぅ、烏龍茶が美味しい…それでですね、ただいまの現状をまとめますと…」
「まず、依頼人はあのハルナという女。それも特撮ファンだ。そして、お化け屋敷内を探索しても不審者はいなかった。…と言ったところか。」
「うーん、あまり良い進展とは言えませんね…何か良い証拠とかはないでしょうか…」
全員がその場で考え込んでいた時、メロンソーダを飲み切ったマイナスがマスタフォンを見て少し違和感を持つ。
「…俺さ、さっきまでこのチームの名前がギアヒーローズなの、知らなかったやん。」
「ん?それがどうしました?」
「…ギアヒーローズなんて言うワード、依頼書にも説明欄にも乗ってないのよ。」
エヌは「あー、表記ミスしてるってことか」と軽く解釈するが、ブラックはマイナスの言ったことに「まさか…」と目付きを変える。
「…あのお姉さん、なんでさっきギアヒーローズを認知していたんだ?」
「え…?!」

『あー!貴方達がそのギアヒーローズ!!』
『はい、そうです!』
『んえ?ギアヒーローズ?』
『 あー…言うのを忘れていたな。俺たちはギアヒー…

3人は先程の会話を思い返す。確かにこれまで、前に依頼を頼んでいた漁師の方は、ギアヒーローズなんて言う単語を知らなそうであった。更にはあの小さな女の子も、ギアヒーローズなんて知らない風であったことをマイナスは覚えていた。そしてギアヒーローズというワードは、デスブレイド側も認知しているワードなのであれば…
「…これで、誰が犯人か分かったな。しかし、何故あの女…」
「自分で自分の首を絞めていますよね…一体、何が目的なのでしょう…」
「…なーんか、やな感じするような……」

次回ギア16、再来・花の双剣士

おまけ
「…そろそろあの人達気がついたかな…私がその不審者だって…あわよくばあのマイナスっていう人…実はただ単に私が純粋に本物のヒーローに会いたかっただけってことに気がついたかな!?人を襲うだなんてそんなぁ!私は欲望を満たしたかっただけだし!こんな禍々しい歯車いらないし!でも…もしかしたら私がなんらかの原因で暴走して…エヴォ様にお姫様抱っこしてくれたり!!??キャー!!想像したら興奮してきた!!あーでもほんとにしてくれるかなァ…一体どうな…」

「…ごめんなさい。」


「……え…?」

[ジャアク!パラポネラノヴァ!]
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